信頼関係の土台を築く「傾聴」「受容」「共感」

仕事において関わる人との信頼関係は、仕事の成果や楽しさ、やりがいに大きく影響します。

仕事がうまくいかない時は、関わる相手(お客様、取引先の方、上司、同僚、部下など)との信頼関係がうまく築けていない場合も多いのではないでしょうか?

カウンセリングという仕事も、クライアントさんに信頼していただかなければ、成り立ちません。
「この人になら話してもいいかな」と思っていただいて初めていろいろなお話が伺えるのです。

信頼できないカウンセラーに、本音は話せないでしょうし、信頼できない人にどんなアドバイスをされても聞く耳を持てませんよね。

カウンセリングの基本的姿勢として「傾聴」「受容」「共感」というものがありますが、カウンセリングに関わらず、人との信頼関係の土台を築くのに大変役立つ要素だと思うので、今回それをご紹介します。

【傾聴】

傾聴とは「相手の話に耳を傾け、相手の気持ちに沿って話を聴くこと」です。

私たちは自分が忙しかったり、相手との関係性が近くなって慣れてしまうと、相手の声をただ漠然ときくだけの「聞く」をやってしまいます。

相手に関心を寄せて、気持ちに沿って「聴く」のは、言葉で言うほど簡単ではないかもしれませんが、傾聴の第一歩として「相手の話をちゃんと聞こうとする姿勢」を示すのは大事なことだと思います。

例えば、何か作業をしながら話を聞いてもらうのと、作業の手を止め、向かい合って話を聞いてもらうのとでは、後者の方が話をちゃんと聞いてもらえている感じがすると思います。

「作業の手を止め、向かい合う」という姿勢が、「あなたの話をちゃんと聞きますよ」というメッセージになるのです。

人は基本的に「わかってほしい」という欲求があるので、わかってもらうために自分の話を聞いてくれる人かどうかをまず判断します。

作業中に手を止められるなら止める、手を止められない場合は「作業しながら聞いてもいいかしら?」と断りを入れるだけでも相手の話を聞こうとする姿勢は示せるのではないでしょうか。

「話を聞く姿勢」を示せたら、次のステップ「相手に関心を寄せて、相手の気持ちに沿って話を聴く」です。

ここで相手の話を「受容」したり、「共感」したりしながら聴くことで、信頼関係は築かれていくのです。

【受容】

受容とは「相手の言うことを全面的に受け入れること」です。
「相手を否定せずに話を聴くこと」と言ってもいいかもしれません。

私たちは相手の話の内容について、つい良い悪いの判断をしてしまいます。
「それはダメでしょ?」と思うようなことであっても、相手を否定せずに、「なぜそんなことをしてしまったのか?」と相手を理解しようとすることが大事です。

例えば、上司が部下に「お客様を怒らせてしまいました。」と言われたとします。
「お客様を怒らせてどうするんだ!」と部下を叱ってしまえば、その後トラブルが起こっても上司に叱られるのが怖くて報告や相談をしづらくなるのではないでしょうか。

部下を叱る前に「どうしてお客様を怒らせてしまったの?」と理由を尋ねてあげることで、部下が理由を話しやすくなります。

部下の対応に誤りがあれば、そこを正すことは必要ですが、まずは否定せずに部下の話を聞いて受容することが大事なのです。

自分の話を怒らずに聞いてもらえる上司になら、自分に非があったとしても「こんなことをしてしまった」と正直に話せるかもしれません。
正直に話してもらってこそ、上司も適切なアドバイスやトラブル対処もできるというものです。

自分を受容してくれた相手に対しては、「この人の言うことは聞こう」と思えるものなので、部下を受容するということは、上司にとって部下に自分の言うことを聞く耳を持ってもらうことにもつながります。
部下が上司のアドバイスを聞き入れ、トラブル対処がうまくいけば、さらに信頼関係は深まるというわけです。

【共感】

共感とは、文字通り「共に感じる」ということです。
相手が持っている感情とつながり、一緒に笑ったり、泣いたり、喜んだりすることが「共感」です。

また共感とは「相手が持っている思いや考えを理解し、肯定すること」でもあります。

「肯定する」と言っても、自分の価値観と違う相手の価値観に同意することではありません。

人の考えに対して「私もそう思います」は「同意」です。
相手と意見や価値観が合わなかったとしても「あなたがそう思うことは理解できます」というのが「共感」です。

「共感」はしても「同意」までする必要はないのです。

価値観は人それぞれで違うものですが、相手がその違う価値観を持っていることを理解し、認めるのが「共感」なのです。

人は共感されることによって、「わかってもらえた」「認めてもらえた」「受け入れてもらえた」というような安心を感じます。
安心を感じる相手を「敵」とはみなさないので、共感することは「あなたは私の味方」という信頼を得ることになるのです。

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相手の話を傾聴し、受容し共感することが、信頼関係の土台となることを少しはおわかりいただけたでしょうか?

ビジネスシーンだけでなく、プライベートにおける人間関係でも「傾聴」「受容」「共感」を取り入れてみてくださいね。

あなたが関わる全ての方と信頼関係を築いていけるよう祈っています。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

大学卒業後、地元企業に就職し、デザイン・経理・総務・秘書・営業事務等の業務を経験。不惑にしてカウンセラーを目指すために転職。離婚も含めた人生経験をベースに、楽になる物事の受け止め方を提案する。生き方やライフワーク、メンタルヘルス、パートナーシップ全般の問題を得意とする。