こんな時だから、知っておきたい「危機介入」と「ストレス・マネージメント」のイロハ

3月11日の東北地方太平洋沖地震、福島原子力発電所での度重なるトラブルに、国として必死の「危機対応」と国際レベルでの「危機介入」が行われようとしています。この非常時に、多くの方が、責任ある立場で、大小さまざまな組織やコミュニティにおいて、「危機」への「対応」や「介入」と「ストレス・マネージメント」に取り組んでおられることでしょう。「危機介入」の在り方や「ストレス・マネージメント」の基本的な考え方をまとめてみました。

●「危機介入」は待ったなし!1~6週間で危機状態を解消しよう

組織やコミュニティが危機的な状態になったとき、当然ですが、「介入」は早ければ早いほどいい。ここで目指すのは、あくまでも「危機状態を抜け出す」こと、つまり、それまでその組織が持っていて「機能」を取り戻すことです。これまで通りのオペレーションができるようになることが、最初の目標になります。

「危機介入」では、危機の解消に目標を絞り、可能なかぎりプロセスを単純化します。

そのために一番大事なのは、組織の仲間に信頼してもらうこと、です。

「信頼してもらう」ためには、まず、リーダーが仲間を「信頼する」ことがどうしても必要です。だから、危機状態にある時は、いたずらに責任論を振り回さず、仲間を「支持する」ことに徹しましょう。批判や懲罰を怖れるあまり、委縮して無用なミスをすることを防ぐためにも、「支持的なメッセージ(私はあなたの味方だ)」を送り続けることが望まれます。

そして、「問題は何か?」「対処方法は何か?」「効果が出ているか?」「利用可能な資源な何か?」の4つの問いかけを繰り返します。これを「査定(アセスメント)」と言います。課題を特定して、これまでの解決策がなぜ効果があがらないのか、他に利用できる資源はないのか、やってみては、効果を調べ、ダメならまた違う策を実行に移す。多くの場合、これまでの対処方法でうまくいかないから危機状態に陥っているのですから、どんどん新しいやり方を試す必要があります。

そして、直接的で、的確な指示を出しましょう。

新しいアイディアを、次から次へとスピーディーに実施するためにも、仲間の批判や責任追及は、この段階ではいったん棚上げしたいものです。

●ストレスには、3つの段階がある!

最初は、ショックにどう適応したらいいかわからず、茫然自失状態になり、今度は、それに対応しなくては、ハイテンションになります。心と身体が、ショックにどう適応しようか、必死で探している段階です(警告反応期)。

次に、この異常事態に適応して、「ストレスがあっても、何とかやっていく」という段階がきます(抵抗期)。この時期には、人はこれまで以上の能力を発揮すると言われます。まるで、新しい才能が開花したかのように、厳しい環境下でも、これまで通り、もしくは、それ以上のパフォーマンスを上げることがあります。

しかし、この状況がいたずらに長引いたり、ストレスレベルが上がり続けると、心身の支えが折れたかのように、急速にパフォーマンスが落ちてきます。慢性的な疲労感、だるさ、やる気のなさといった、よく知られるストレスによるネガティブな症状があらわれて、パフォーマンスも、普通以下の状態に落ち込みます(疲はい期)。

●「心の絆」がストレス耐性(抵抗力)を高めます!

「危機」を乗り切るためには、自分や仲間がストレスに対して、ちゃんと適応した上で「抵抗」できているうちに、なるべく通常に近いオペレーションを取り戻すことが大事だと考えられます。

そのためにも「危機介入」は、早ければ早いほどいいし、「いつも通り」を取り戻すまでは、その目的に集中した方がいい。課題中心の解決志向に徹したいところです。

また、ストレス状態に適応して、高いパフォーマンスを維持できる期間をのばしたいわけですが、それにはやっぱり「心の絆」の力が大きいようです。人は、「一人じゃない」と思えると、ストレスを「辛い」と感じにくくなるため、より長く、ストレス状態に適応できると言われます。

危機的な状況で、これまでのやり方がうまく働かず、失敗を怖れずに新しいアイディア、やり方を行動に移し続けなければならない、というのは非常なストレスです。そのストレスに耐え、高いパフォーマンスを維持して、解決策を見つけ、次の段階に進むために無くてはならないのが、「心の絆」。「あなたは私の味方でいてくれる」という信頼感が、危機をチャンスに変える土台になります。

だからこそ、リーダーは、「危機」の時こそ、「心の絆」を作るリーダーでありたいものです。

大きな責任を背負うからこそ、うまくいかなければ、イライラして、「怒り」にのみこまれそうになります。仲間にあたってしまうこともあるかもしれません。そんな時、必死に、厳しいストレス状態に適応しようとしている自分を、心の中で抱きしめながら、「それでも仲間を信頼している」と言えたなら、組織の力もポジティブな方向に引き出せそうです。

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