自分を攻撃する部下とどう関わるか~リーダーシップを育てる~

プロジェクトを率いるなどリーダーシップをとるポジションにいれば、仲間や部下の苦情や不満の矢面に立つことは珍しくないでしょう。辛い気持ちを受けとめるだけでガス抜きがはかれることもあれば、チームを二分するような議論に発展し、仕事が中断する、もしくは方向性が混乱して収拾に手間取り、コストがかさむといった苦い経験をされた方もおられるのではないでしょうか。今回は、現場の人たちを二分するような対立が持ち上がった時に、リーダーが問題を解決するために知っておくといい「場」の力学を考えます。問題は「構造化」する。ある小学校に新任の教師として採用されたAさんは、しばらくするうちに職員室の微妙な空気に気づきます。どうやら同僚のB先生のクラスばかりが「問題」を起こすとして管理職に「とにかく問題を起こすな」と目の敵のように批判されているのです。B先生は極めて真面目で熱心な教師で、一生懸命に学級運営に取り組んでいるのに、次々と生徒が問題行動をとるので、それが大事にならないうちに芽を摘み抑え込むのに忙しく憔悴していました。Aさんは、B先生が孤軍奮闘しているのを気の毒に思いながらも、問題の本質に踏み込めずに対処的に問題の後始末に追われる様子にイライラしていましたし、それ以上にB先生を「ダメ先生」とし叱責するだけで助けられない管理職に対して腹を立てていて、つい反発してしまうのでした。もっとB先生は、子供たちの気持ちを聞いてあげればいいのに。もっと管理職もB先生の辛さをわかってあげればいいのに、と思うと上役への怒りが出てくるのです。ところが、ある時、Aさんは、偶然にもその学校の経営母体の理事会が学校を「問題」の有無と件数でしか評価せず、校長も副校長も教育論に踏み込んで学校経営について進言できないことを知ります。実は、管理職も「気持ち」を聞いてもらえていなかったのです。

このように「気持ちを聞かない」という問題が、経営陣と管理職との間、管理職と担任の先生との間、そして担任の先生と問題行動を起こす生徒との間に、とまるで入れ子のように何重にも起きることを指して、「問題が構造化している」もしくは、「問題がフラクタル(相似形)になっている」と言います。

因果論ではない。この上の例でいえば、「弱い立場のものの気持ちをきかない」という問題がどうして生じたのかはわかりません。あちこちで同じことをしているね、とは言えますが、鶏が先か、卵が先か、分かりにくいからです。このようなときは、問題の原因を特定することや悪者探しにエネルギーを費やすより、この「場」に「弱い立場のものの気持ちをきかない」という傾向がある、と考えた方が介入しやすく、問題を解決に導きやすいようです。

リーダーやファシリテーターに対する攻撃は、「助け」を求めるサイン。組織が何らかの問題を抱えているとき、大概はそれが公の場で議論される前に、メンバーの個人的な関係性や取引先との関係性などの中で似たような問題が生じていることが多いものです。その段階で、この「場」にある問題として認識できて取り組めればいいのですが、多くの場合は、「個人の問題だよね」と見逃されます。でも、「リーダーやファシリテーターへの攻撃」という状況が起きたときには、似たような問題がすでに組織のあちこちで起きていることが多いので、自分を攻撃する人の個別の問題として片付けるのではなく、「場」にある問題が「助け」を求めていると考えてみるといいでしょう。攻撃されれば、リーダーとはいえ傷つきますが、攻撃する相手が自分の中の何に対して「変わる」ことを求めているのか、その気持ちをよく聞くことでその「場」にある問題の本質に迫ることができます。

再度、上の例を使って言うならば、管理職がAさんの自分たちを見る攻撃的な視線や、批判的な言動を流さずに、その怒りの気持ちをよく聞いてみれば、その感情の下に「もっと子供の気持ちを聞いてあげてほしい」「もっとB先生の言い分を聞いてあげてほしい」という解決策がすでにあることがわかったはずです。

リーダーやファシリテーターが、攻撃する人が自分は何に怒っているのか十分に理解できるように聞く心のオープンさを持てると、「場」が抱える本当の問題とともにその解決策の一端が見えてきます。

リーダーやファシリテーターを攻撃する人の中に眠るリーダーシップを育てる。攻撃的になる人には、その「場」にあるけれど、あまり明らかではない問題に気づいていて、自覚していないですが解決の道を知っていることが多いです。これを自覚できて、十分に表現できるならば組織を新しいステージに引き上げるリーダーになれるのですが、「攻撃」という表現方法しか持たないためにリーダーシップを発揮できずにいます。自分に対して攻撃的な部下に対しては、その人の中に眠るリーダーシップのタネを育てるつもりで関わると、組織はもう一段成長できるのではないでしょうか。

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この記事を書いたカウンセラー

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みずがき ひろみ

感情や感覚といった女性性をフルに使い、心のブロックを外すカウンセリングが得意。「目からウロコが何枚も落ちる」と見方が変わることに定評がある。 深層心理に眠る「願い」を掘り起こす「癒し」を通して、人生の豊かさを受け取りたい人の、恋愛、ビジネスでの自己実現をパワフルにサポートしている。