年齢を積み重ねていくこと〜人生のステージを切り替える

人間、40代も半ばを過ぎると、折に触れて年齢を感じることが起こってき
ます。
僕の場合、最近それをつくづく感じるのは、先ず、老眼鏡が必要になったこ
とです。小さい文字が見えなくなってきました。
先日、どうも老眼になってきたのでは?と眼鏡屋さんに出かけてみたところ
「老眼が入ってますね」とあっさりと言われてしまいました。
若い頃、年配の上司に見てもらうべく作る書類は、大きさがA3型1枚と決
められていたこともあって、山盛りの言いたいことをどう全て書き込むかに
苦労し、結局は活字を小さくして行間を詰めて、内容を詰め込むという方法
をとっていました。


その書類を手にした上司は、こちらの情熱を汲んでくれるのですが、「もう
少し字を大きくできないか?」とよく小言を言っていました。
当時の僕は、A3型1枚に書けと言われて、生真面目にA3型にまとめよう
としていたのですが、老眼が入った今になって思えば、上司に対して随分と
酷なことをしていたものだなぁと思います。最近は、僕が「もう少し、字を
大きくしてくれないか?」と言っています。
余談ですが、その後、先輩から要点のみA3型にまとめて、詳細はそれに対
応する添付資料という形でA3型に付ければいいんだと言うことを教わりま
した。「あっ、A3型1枚でなくてもいいんだぁ」とその時にはコペルニク
ス的展開を感じたものです。
また最近は、昼ご飯を食べると、睡眠時間を取っていても眠気が襲ってくる
ようになりました。実は最初の頃、無呼吸か何かで睡眠時間が足りないのか
なぁと心配していたのですが、どうやら単に体力が低下してきただけのよう
です。そういえば、お年寄りの方々は、よく昼寝をされるなぁと子供の頃不
思議に思っていました。それが、自分の身にも起こり始めているということ
なのでしょう。
そのほか、自分自身の年齢を感じることは多々ありますが、年齢を重ねられ
た方々がよく陥る一つの大きな罠が、「頑なさ」です。
「頑なさ」は、言い換えると「自分のやり方やルールを通す」という事です。
「こうあるべき」「こうするべき」という自分の観念を押し通そうとしたり、
「自分の成功してきた方法が唯一正しい」と自分のやり方を押し通そうとす
る姿勢です。
若い頃から頑固な人もいますが、多くの人が若い頃は柔軟な姿勢を持ってお
り、色々な人の意見を聞き入れたり、問題ある状況を打開するために自ら考
え方を変えていったり出来ます。
しかしながら、年齢を積み重ねていくにつれて、その柔軟な姿勢は硬直を始
め、徐々に頑なになっていきます。
この頑なさは、その大部分が「怖れ」から出てきています。
人間は、年を取ると、若い頃にやっていたような頑張りもきかなくなり、体
力や知力の衰えを感じ始めます。「若い頃はもっとできたのに、今は出来な
くなってしまった」と自分の価値の低下を感じ、それをカバーするように自
分が成功したやり方に執着して何とか周囲から価値を認めてもらおうとした
り、あるいは人に迷惑を掛けないために、「こうあるべきだ」という観念で
自分自身を縛り付け、自分自身を縛り付けている度合いだけ、また同じよう
に他人を縛り付けようとします。
これらは、「自分の価値を低下させたくない」という怖れや、「人に迷惑を
掛ける人間になりたくない」という怖れがその根本にあります。
しかし、そこにこだわってしまうと、実は自分のことしか考えていない形に
なって、相手を理解しようとせず、問題が生じてきます。相手にとって何が
一番いいか、という見方が出来なくなってしまうのですね。正にこのことが
「罠」なのです。
この「罠」は、若い世代との競争とも考えられます。
若い世代と競争し、勝つことによって自分の価値を周りが認め、ひいては自
分自身が自分の価値を認められる、と心のどこかで感じているのですね。こ
こで重要なのは、自分自身が自分の価値を認めていない事にあります。
さて、では歳をとると自分の価値は本当に下がっていくのでしょうか?
確かに年齢を重ねていくと、体力は落ち、記憶力も落ちていきます。これは、
生物として仕方がないことです。しかしながら、その人の価値というのは、
年齢で低下する部分だけではありません。年齢を積み重ねているからこそ増
えていく価値というものもあります。例えば、豊富な人生経験、仕事上の経
験を積んでいることが挙げられます。座学では学べない多くの経験を持って
いることになります。そのほか、様々な角度から見ると、それ以外の価値も
沢山見いだせるでしょう。
年齢を感じてきたら、今までとは違った角度から自分自身の価値を認めるこ
と、すなわち、考え方を変えていく事も必要なのかも知れません。決して楽
な事ではないかも知れません。自分自身が無くなってしまうような感覚にな
るかも知れません。
でも、人生のステージの切り替わりと認識していただければと思います。
今までと同じステージではなく、次のステージに切り替わっていくのだと、
そして、その来るべき次のステージには、それにふさわしい自分がいること
を信じる事です。
そうすることによって、怖れから頑なさを持つという「罠」に陥ることなく、
自然体で心地よく人生を楽しんでいける事と思います。
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この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。