心理療法vs現実〜どちらが癒されるか〜

この40代からの心理学メルマガで、田村が担当するときは、心が
老いていく、とはどういうことなのかに触れてきました。
今回は、ちょっと別の話題に触れてみたいと思います。
それは、癒しとはどういうことなのかというところです。


僕もこんな風にメルマガを編集したり、皆さんのお話を聞かせてい
ただいたりする前は、カウンセラーに話を聞いてもらったこともあ
りましたし、心理学を勉強もしていました。勉強は今でもしている
わけですが、日々、気づくことがある中で、特に大きかったものは
といえば、
「心理療法は、現実に勝てない」
ということです。
なぜ、僕がこう思ったのかというのは、それはもちろん、僕の実体
験に基づいています。
僕は、父とは昔から折り合いが悪く、仲が良いとは決していえませ
んでした。
僕の父は、一攫千金を狙う、人生の中で自分の全てをチップにして、
大博打を打ちまくる生き方をしてきた人でした。
そのチップには、僕たち家族も含まれています。
ですから、その博打に負けたときは、大抵、僕たち家族も悲惨な目
に合いました。
まあ、実際、分の悪いほうへ賭けたがる父でしたから、勝った例も
ありません。
ですから、僕は、そんな父が大嫌いだったし、その父を擁護する母
も嫌いでしたし、また、その父と母が溺愛していた弟も嫌いでした。
そんな生き方をしているわけですから、父も当然のごとくつけを払
うことになるわけです。
母に長年囲っていた愛人のことがばれ、また、いっしょに仕事をし
ていた弟とも折り合いが会わなくなり、一家離散となって、莫大な
借金を抱えて今日に至ります。
母は父の仕事の手伝いを、弟は父の仕事の後継ぎとして、3人は一
番、つながりのあった3人だったといえます。
そのつながりが千切れていく何年かの様子を、僕は一番気の合う妹
と二人、ため息をつきながら見守る以外ありませんでした。
「結局、本音で何もはなさないからだよ」
「いやいや、お父さんがもっとお母さんを大事にしていれば。。。」
「でも、ちいにいちゃん(弟のこと)のいいたいこともわかる」
「お母さんだって、多分、お父さんのことをわかってやってなかった」
こんな会話で妹と、奥さんと、3人で延々話あったことは1回や2
回ではなかったわけです。
なぜこんなことになったのか?
僕はどうしてもそれが知りたかったのです。
今にして思えば、弟に嫉妬していただけだったんだと思います。
役に立っていないと感じてしまっている自分の存在が、いやなだけ
だったんだとも思えます。
でも、その当時の僕は、父と母と弟をまた、仲のいい家族としたい
と思っていました。
だから、僕は心理学を勉強したり、自分にできることを探す意味で
も、カウンセラーに話を聞いてもらったりもしました。
でも、カウンセラーがしてくれたセラピーのほとんどは、僕には何
の効果もありませんでした。
いろいろ言われましたよ、ほんとに。
お父さんを許せとか(笑)。
そう!
それが一番できなかったんですよ。
どれほどいやだったか。
心理療法も受けました。
ワークショップでセラピーも何度か受けました。
でも、自分のことを言われているようにぜんぜん感じなかったし、
父を見る目が変わったようにもぜんぜん感じませんでした。
やっぱり、「やつはろくでなしだ」と父のことを見ているのでした。
でも、ある日、父の仕事場へ行かなければいけない用事があって、
いやいや出かけていったときのこと。
以前は弟がしていた仕事をしている父の、小さく丸まった背中を見
て、思い出していました。
「そういえば、がきのころはこの背中にあこがれてたっけなぁ。」
そのとき、帰り際に、僕が、「親父、体を大事にな」と声をかけた
とき、父が、「ありがとうな」と小さくひとこと言った言葉で、僕
は父を許せてしまったんです。
そんな、父の小さな一言が、僕の心の中のわだかまりを全部流して
しまいました。
心理療法で、
「お父さんがあなたにありがとうと言ってます。聞いてあげてくだ
さい」とか、
「お父さんとお母さんが、あなたを愛したいと思っていますよ」
とか言われても、ぜんぜん効果がなかったのに、今まで言わなかっ
た「体を大事にな」だけで、そして、「ありがとな」の言葉だけ
で、父と心がつながったような気がして、心があたたかったんです。
そういえば。
毎日泣いてばかりで、愚痴っぽくていいかげんうんざりしてくる母
が、僕の娘たちをかわいがる姿を見て、少しかわいく見えたりなん
てこともありました。
僕たちのカウンセリングの先生が、
「心理学は人を癒さない」
と言ったのはこういうことなんだと気づいた出来事です。
だから、僕は、
「現実に勝る癒しは無い」
と思っています。
心理学や心理療法は、単なるきっかけにしかなりませんし、ただそ
れだけでは、僕たち人間の人生は変わりません。
なぜなら、僕たち、そして皆さんの人生は、そんな学問や手法で変
えられるほどちっぽけなものではないからです。
癒しは、実は、いつでもみんなの足元に転がっています。
それが見えないのは、僕たちのハートが閉じてしまっていて、自分
の中の感情だけしか見えなくなっているだけでしかありません。
ちょっとハートを開いて、今、ここにあるものを受け入れ、認める
だけで、癒しはすぐにやってきます。
深呼吸して、あるがままを見てみてください。
ひょっとすると、あなたが思っているほど、周りの状況が同じまま
ということはないかもしれません。
僕の父が、知らないうちに、やくざものから、普通のおじいちゃん
になってしまっていたように。
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