40代の生き方 〜父からの宿題〜 

私は現在、38歳。今年の11月には、39歳になります。
40代を目前にして、「いったいどんなふうに生きていったらいいんだろう?」とときどき考えます。


一番身近に見た40代の人といえば、両親ですが、今日は、父のことについて書きたいと思います。
私の父が亡くなったのは父が48歳、私が19歳のときでした。
ですから、父の40代は、私が11歳〜18歳の8年間だったことになります。
子供の頃の私から見ると、父はすごい人のように感じられました。家族のために、夜遅くまで一生懸命に働いてくれる、まじめな人。
でも、今、38歳の私から、父の40代を見ると、子供の頃には見えなかったいろんなことに気づきます。
子供は父親から、社会や仕事との関わり方を学ぶといわれています。
私の仕事観も、父からの影響を受けているなぁと思うところがあります。
私の父は、中学を出てすぐに、祖母の親戚がやっていたミシン店に就職しました。手先が器用だった父は、ミシンの修理を学び、その技術をもとに、ミシンの会社に転職。その頃に、結婚し、私たちが生まれます。
ミシンの仕事は、父に向いていたようで、会社から海外に研修に行かせてもらったこともありました。
そして、ちょうど40代に入る頃に、独立し、自宅でミシン店をはじめます。
夜遅くまで働き、お客さんからも信頼されていた・・・子供の私から見ると、父はミシン一筋、仕事に自信を持っていて、すごいなぁと見えました。
父がハードワークをしているのを見ていたせいか、私にとっては、仕事=ハードワークでした。今となっては考えられないことですが、大学を卒業して就職した会社では、ハードワークに憧れ、夜遅くまで残業したり、休みの日も会社に行っていたものです(^^;
でも、今から思えば、その頃から少しずつ、父は行き詰まっていたのかもしれません。
私が中3の時、交通事故を起こし、3ヵ月の免停になりました。車がないと仕事にならない父は、ずいぶん不便な思いをしていたようです。胃潰瘍になったのもこの頃でした。
その後突然、「ミシン店をやめて、健康食品の店をやりたい」と言い出し、家族の猛反対にあいます。
そして、それをあきらめた頃に、ガンが発覚。2年の闘病の末に、亡くなりました。
今から考えると。40代に父に起きたできごとは、全部、父からの(もちろん、父自身に対するものでもあったんでしょうが)SOSだったんじゃないかな、という気がします。父も、そして私を含めた家族も、何度もあった警告を見過ごしたり、気づかないふりをしていたのかもしれません。
40代の父は、自分の店を構えたものの、やってもやっても楽にならない仕事に嫌気がさしていたんじゃないかと思います。
16歳から始めて25年。多少、形態の変化はあっても、同じことを続けていると煮詰まってくるのも当然だと思います。
「このままやっていても先が見えたなぁ」と思った父は、別の仕事(健康食品の店)を始めようとしたりして、色々もがいても結局叶わず・・・
大学に入ったばかりの頃、病院でどんどん弱っていく父を見ながら、「私には、この父の状態をどうしてあげることもできないなぁ」と思っていました。
「父にどうにもできないことが、私にどうにかできるはずがない」そんな感じがしたのを覚えています。
そこから先に道があるなんて、ぜんぜん思えませんでした。
でも、今になって考えると、私がこのときに感じていたのは、父のあきらめの気持ちだったのかもしれません。
そして、私は本当は父と一緒にあきらめるのではなく、もっと違うアプローチができればよかったのに、とも思います。
それが、父からの私への宿題のような気がします。
でも、その後、私も父と同じような道をたどってきました。
心理学では、人が成長する段階には、6つのステージがあるといわれています。
第1段階は「ロマンス」
仕事では、会社に入ったばかりで希望や夢にあふれている頃です。上司や先輩からかわいがられ、「いい会社に入ってよかった!一生懸命がんばって出世するぞ!」と意欲に燃える段階です。
第2段階は「ハートブレイク」
仕事に慣れてくると、自分にできないことがたくさんあることを認めなくてはならなくなります。最初はやさしかった上司から、「こんなこともできないのか?」と厳しく言われ、壁にぶつかって、惨めな気持ちになります。
第3段階は、「がまん」
自分ができないことをカバーするために、先輩や上司とうまくやっていこうと気を遣います。上司の機嫌をとって嫌われないようにしたり、残業や休日出勤をして一生懸命がんばります。
第4段階「期待外れ」
一生懸命にがんばってきたのに、「お給料が少ない」「評価してくれない」と不満をもつ段階です。だったら、自分の好きなようにやっていこう、と影でこっそりさぼったり、少しずつ上司に反抗的な態度をとったりし始めます。
第5段階「パワーストラグル(ケンカ)」
自分なりの考え方や価値観ができてきます。そのため、仕事のやり方について、上司と対立したり、考え方の違いからケンカも起きたりします。
第6段階は「デッドゾーン(あきらめ)」
仕事に慣れてきて、どこかで退屈してしまいます。「やってもムダ」「言ってもムダ」だったら適当にやっておこう、と刺激がない日々を送ることになります。
この成長段階を知ったとき、父や私のたどって来た道をやっと理解することができました。
多くの人は、この第6段階で、止まってしまいます。
私の父もここで死んでしまったんでしょう。まさに、デッドゾーンだったわけですね。
そして、私もここで行き詰ってしまいました。それ以来、私はずっとここから先に行く方法(宿題の答え)を探していたような気がします。
でも、この成長段階には、ちゃんと次のステージがありました。
それは、第7段階、「リーダーシップ」です。
誰かのために犠牲をするのではなく、自分自身が楽しむことで、周りの人にインスピレーションや楽しみを与える。そんなリーダーシップを発揮することが、デッドゾーンを抜け出すカギだったわけです。
宿題の答えを見つけたものの、理屈で答えがわかっても、なかなか現実に、それを生きることはできていません。
でも、私ももうそろそろ40代。父が残してくれた宿題を実践するところにきてしまったようです。
父が教えてくれなかった、見本のない生き方をするのは、とっても怖いし、「それでいいの?」「そんなのでうまくいくの?」という疑問もいっぱい出てきます。
でも、「こんな生き方もあるんだよ」と父に見せてあげられるような、そんな40代を過ごしていきたいと思っています。
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