ステップバックと無用の用 〜心の奥にある静かな力とつながるために〜

こんにちは。
カウンセリングサービスの山田耕治です。
いつも「ビジネス心理学」をお読みいただき、ありがとうございます。

先日、今年のノーベル化学賞を受賞された、日本の研究者、北川進・京都大学特別教授のお話に触れ、私なりの気づきがありました。

北川先生は、気体を吸収・分離できる新素材「MOF(金属有機構造体)」の開発で世界的な評価を受けられました。

記念講演では、MOF誕生のきっかけが「実験の待ち時間に交わした雑談だった」と語られました。
そして、その講演の中で紹介された言葉が、中国の思想家・荘子の「無用の用」でした。

一見、役に立たないものこそが、実は大きな価値を持つ。

この言葉に触れたとき、僭越ながら、前回「恋と仕事の心理学」のブログで書いた「ステップバック(後退)」という考え方と、深くつながるものを感じたのです。

■ どちらも、鍵になるのは「余白」

北川先生のお話も、ステップバックという考え方も、
共通しているのは
「余白をつくること」だと思いました。

そして改めて、
この余白には、やはりとても大切な意味がある。

そう感じたからこそ、
今回あらためて、この「ビジネス心理学」で
余白というテーマを、書いてみたいと思ったのです。

■ 心の奥は、余白ができると静かに動き出す

私たちの心の中には、

言葉になっていない気持ち
まだ形を持たない願い
ふとした直観のようなもの

が、静かに息づいています。

心理学ではそれを「潜在意識」と呼ぶこともありますが、
私はあえて
「心の奥で働いている静かな力」
と呼びたくなります。

忙しさの中では、その力は動けません。

前に突っ込みすぎているとき
課題に癒着しているとき
頭がいっぱいになっているときほど

その静かな声は、私たちに届きにくくなります。

けれどーー
ほんの少し余白が生まれると、
心の奥のその力は、やさしく動き出します。

■ ステップバックは、心の呼吸を取り戻す動作

ステップバックとは、単なる後退ではありません。

いったん立ち止まり、
呼吸をゆるめ、
心に空間を取り戻す動作です。

呼吸が戻ると、
心の奥の静かな力が、ふっと働き始めます。

視界が少し広がる
新しい選択肢が浮かぶ
「なんとかなるかもしれない」という感覚が戻ってくる

その変化は、
まるで心の奥から、そっと差し出される
一本の手のようです。

カウンセリングでは、
こうした瞬間に、
人の表情や姿勢がふわっと変わる場面をよく目にします。

■ 「無駄な時間だった」と感じる、やさしさ

「今日は生産性がなかった」
「タイパが悪かった…」
「意味のない時間だった」

そんなふうに自分を責めてしまう人は、
実はとても真面目で、やさしい人です。

けれど、
「何もしていないように見える時間」にも、
心の奥では、さまざまな動きが起こっています。

気持ちが静かになる
思考がほどけていく
本当の願いが浮かび上がる

それは、余白の時間だからこそ起こること。

だから、私たちが自分に与えたその余白は、
決して無駄ではありません。

むしろ、未来につながる準備が、
静かに進んでいる時間なのです。

これこそが、
北川先生のいう「無用の用」が
心にも当てはまる部分なのだと思います。

■ 読者のみなさんへの、小さなワーク

余白が心にもたらす変化を、
頭ではなく、身体で感じていただくための
簡単なワークをご紹介します。

【ステップバック・ワーク】
ー課題との間に「余白」をつくる体験ー

(1) 今、少し気になっている課題を
ひとつ思い浮かべてみてください。
仕事でも、恋でも、生活のことでも構いません。

(2) その課題が、あなたの目の前にあると
イメージしてみましょう。

(3) その課題の「すぐ前」に立っている
自分を感じてみます。
肩や胸が、少しキュッとするかもしれません。

(4) そこで、片足をそっと後ろに一歩下げてみます。

(5) 次に、もう片方の足も、後ろへ一歩引いてみます。

その瞬間、
あなたと課題との間に、
ふわっと空間(余白)が広がるのを
感じられるでしょうか。

■ 余白の中で、心は何を感じているでしょう?

呼吸が少し深くなる
圧迫感が弱まる
「どうしよう」という思いがゆるむ
新しい視点が顔を出す

どんな感覚でも大丈夫です。

大切なのは、
余白が生まれたことを意識すること。

すると、意図せずとも、
心の奥の静かな力が、自然に動き出すのです。

これが、ステップバックの本質です。

※(4)で最初に片足を下げるとき、
少し大げさなくらい大きく下げてみると、
次の流れが自然につくりやすくなります。

こんなことを考えてから、私、
体育館以外でも、ときどき
このステップバックを練習するようになってしまいました。
(笑)
※周囲には、どうぞお気をつけくださいね。

■ 仕事も、恋も

恋がうまくいかないときほど、
心は硬くなり、視野は狭くなります。

仕事も、焦っているときほど、
本質が見えにくくなります。

そんなときこそ、
無理に前へ進もうとせず、
まずは少し、余白をつくってみてください。

ステップバックする。
無用に見えることを大切にする。
立ち止まる勇気が、少し必要かもしれません。

でも、やってみると、
心の奥の静かな力が、
あなたの味方をしてくれる瞬間が、きっと訪れます。

その力こそが、
恋を深め、仕事を整え、
人生の流れを、再び動かしていくのだと思います。

■ まとめ:余白は、心の奥と再びつながる場所

ステップバックは、後退ではありません。
無用の用は、ムダではありません。

どちらも、
心が本来の力を取り戻すための入口です。

タイパに追われがちな今だからこそ、
どうか、自分に余白を許してあげてください。

その余白は、
あなたの心の奥にある静かな力と
もう一度つながるための、
とても大切なスペースなのです。

カウンセリングもまた、
心に余白をつくる場です。
私と、バスケットボール仕込みの
「本格ステップバック・ワーク」、
一緒にやってみませんか。
(笑)

ご連絡をお待ちしています。

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この記事を書いたカウンセラー

About Author

1967年広島県呉市出身。早稲田大学法学部卒。大学生を筆頭に三人息子の父親。臨月の子を亡す喪失、燃え尽きにて18年勤めた会社を退職し、2010年カウンセラーに。現在は サラリーマンとのWワーカー。 共に心理を学んできた元妻とは子育てPJのため当面同居も、離婚を選択、それぞれに人生100年時代の次なる旅路へ。