比べちゃうのは、“安心したい”から 〜やめたいのにやめられない理由〜

誰かと比べて落ち込む。比べたくないのに、気づけば比べている。
そんな自分を責めたくなることはありませんか?
でも実は、比較は「安心したい」「自分の立ち位置を確かめたい」という心の自然な反応でもあります。
この記事では、比較が生まれる心理的なしくみと、そこから自分を取り戻すヒントを、お届けします。

比べるたび、不安になる。それでも比べてしまう理由。

こんにちは、大門昌代です。
今回は「比較してしまう自分」について、ちょっと違った角度からお話してみようと思います。

「比べるのは良くない」って、よく聞きますよね。
でも、わかっていても止められないのが、この“比較癖”というもの。
比べたくて比べているわけじゃない。
むしろ、比べて落ち込んでしまう自分に、がっかりすることさえあります。
でも実はこの「比較してしまう」という行動、私たちの心が“安心”を求めているときに、無意識にやっているごく自然な反応でもあるのです。

◆ 比べちゃう自分を責めていませんか?

SNSで誰かの充実した日常を見ると、「私は何をやってるんだろう」と急に不安になる。
同年代の人が次々と結婚していくのを見て、「私は遅れてるのかな」と心がザワつく。
友人が評価されているのを見ると、どこか自分が劣って見えてしまう。

こんなふうに、人と比べて気持ちが揺れること、ありませんか?
頭では「人は人、自分は自分」と思いたいのに、心が勝手に“比べるモード”に入ってしまう。
そしてそのたびに、自分にダメ出しをしてしまう。

「また比べてる…」
「自信がないな、私…」
「もっとちゃんとしなきゃ…」

でも実は、比べてしまうのは、あなたが“弱いから”でも“ネガティブ思考だから”でもありません。
そこには、ちゃんと理由があるのです。

◆ 比較は“安心確認”のために起こる

私たちの心は、安心を感じられないとき、自然と外に意識が向きます。

「今、私はこのままで大丈夫かな?」
「置いていかれていないかな?」
「ちゃんと周りに馴染めているかな?」

こういった不安があるとき、人は無意識に「他人の様子」を見て、自分の立ち位置を確認しようとするのです。
この行動は、心理学的には「社会的比較」と呼ばれるもので、決して異常でも特別でもありません。
むしろ、「群れで生きてきた人間」という種の本能的な働きとも言えます。

◆ 群れの中で「浮かないか」を確認する心のレーダー

人間は、何万年も前から“群れ”の中で暮らしてきました。
そのため、「仲間から外れる」「見放される」ことが、命に関わる重大なことだったのです。
その名残りが、私たちの心の奥には今も残っていて、“周りと自分の違い”を過敏に察知しようとします。

だからこそ、誰かより遅れている気がしたり、劣っている気がしたりすると、まるで「居場所がなくなるような焦り」や「見捨てられるような不安」が生まれてしまうのです。

そして、心の中はこんな感じになります。
「私はここにいていい?」
「私は大丈夫?」
「ちゃんと“仲間”でいられてる?」
つまり、比較とは、安心を得たい心の反応なんです。

◆ 比較が止まらないとき、何が起きているのか

でも、実際には—、比べるたびに落ち込み、焦り、自信を失う。
安心どころか、ますます不安になってしまう。
なぜこんな悪循環が起きてしまうのでしょうか?

それは、「比較で安心を得ようとする行動」が、“自分の軸”をどんどん外に押しやってしまうからです。

疲れているとき、成果が出ていないとき、自信がぐらついているとき。
そんなときは、心の中に“自分で自分を支える感覚”が弱くなっています。
そのため、他人と自分を比べることで、「どっちが上か」「どっちが正しいか」を判断し、“とりあえずの安心”を得ようとしてしまうのです。

けれどそれは、一時的なごまかしのようなもの。
自分の内側ではなく、“他人の基準”で自分を測っているうちは、本当の意味での安心感は育っていかないのです。

◆ 比べて落ち込むとき、心が欲しがっているもの

人と比べてザワザワするとき、あなたの心は、何かを欲しがっています。

それはたとえば、

「私は私で大丈夫」という感覚
「自分にも意味がある」と感じたい気持ち
「今の私もちゃんと生きている」という実感

つまり、比べることで確認したいのは、“存在の安心感”なのです。
ここに気づけると、「比べるのは悪いこと」という視点から、
「比べてしまうときほど、自分との対話が必要なんだ」という視点に、自然と切り替わっていきます。

◆ 比較のスイッチが入ったら、自分に聞いてみる

比較はやめられなくてもいい。
でも、そのときの自分を見失わないように、少し立ち止まってみる。
たとえば、こんなふうに問いかけてみてください。

「私は今、どんな安心を求めていたんだろう?」
「誰かに勝ちたいんじゃなくて、“ちゃんとここにいる”と感じたかったのかも」
「この人と比べて焦るってことは、私の中に“こうありたい”という気持ちがあるのかも」

そうやって自分の中に戻ってくる時間を持つことで、
比較に巻き込まれるのではなく、“比較をヒントに、今の自分を理解する”ことができるようになります。

比べてしまう瞬間こそ、心が何かを伝えようとしているサインなのかもしれませんね。

(完)

この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や結婚、浮気や離婚など男女関係、対人関係やビジネス関係、家族関係や子育て、子供の反抗期、子離れ、親離れ問題など幅広いジャンルを得意とし、お客様からの支持が厚い。 女性ならではの視点と優しさ、母としての厳しさと懐の深さのあるカウンセリングが好評である。PHP研究所より3冊出版。