いつも、忙しくなってしまう方がいます。
仕事は忙しいものだし、それが当たり前だと思っていたけれど、もしかして私だけに仕事を押し付けてる?
どうして私ばかり、忙しくなってしまうのだろう。
みんなずるくない?
仕事をする以上、ある程度忙しかったり、追い込まれたりする感覚はあるものかもしれません。
それでも、私たちには限界があります。
ある程度のゆとりは確保しておきたいものですが、
・なぜか忙しくていっぱいいっぱいなっている。
・職場がかわっても、仕事がかわっても、ずっと忙しいまま。
・周りの人も忙しそうだけど、どうやら私ほどではない気がする。
ご相談される方の中には私ばかりが忙しい、休む暇もない、とお話される方がいます。
では、今の職場だけですか?と聞くと、以前の職場や、前職でも同じように追い込まれるように仕事をされていたりするようです。
もし、仕事に追われることが自分の行動パターンから起きる問題なのだとしたら、どのような問題があるのだろうか、考えてみたいと思います。
【テキパキAさん、のんびりBさん】
以下より例をお伝え致しますが、
必ずこのパターンに陥るわけではないので、参考に読み進めてくださいね。
例えば、
AさんとBさんの2人がいたとします。
10あるお仕事があって、2人で5:5で分けたとします。
Aさんはテキパキと、どんどん仕事を先に進めますが、Bさんは、ちょっとのんびり屋さんだったとします。
お互いに仕事の進め方が違うので、Aさんから見ると、のんびりなBさんはちょっとイライラするかもしれません。
「Bさん、私いま余裕があるから、この仕事は私が進めるね」
と、このあとやるはずのBさんの仕事に手を付け始めます。
この時点で、仕事の比率は6:4になりますね。
すると、別の仕事が1つ舞い込んできました。
新しい仕事はすぐに手を付けないと気がすまないAさん、Bさんには任せていられないわ、とその仕事をすぐに引き受けます。
仕事の比率は、7:4に。
Bさんは、「ありがとう、ごめんねー」と言ってくれたものの、なんかモヤモヤ。
そうこうしていると、次の仕事、その次の仕事、そのまた次の仕事と、合わせて3つほど。
Bさんは、相変わらず自分の仕事を淡々と進めているので、全てAさんが抱え込むことになりました。
仕事の比率は10:4です。
気付けば、Aさんの仕事はギリギリまで追い込まれていて、Bさんの方が早く退社してたりしました。
Aさんは「なんで私ばっかり!」
そう言いたくなるかもしれませんね。
さて、なんだか不公平な仕事の進め方になってしまいましたが、なぜこんなにアンバランスな仕事量になったのでしょうか。
Bさんの仕事がのんびりだったから?
でも、Bさんの方が先に帰っていたりもしましたので、仕事が終わっていないわけでもなさそうです。
心に葛藤などがあると、必要以上に仕事を抱え込んでしまうことがあります。
Aさんが仕事に追われてしまう理由は、何だったのでしょうか。
【過去の心の傷と、競争の心理】
Aさんのように仕事に追われてしまう方の中には、何でも一人で抱え込んでしまう、という事があります。
表向きには、自分でやったほうが早い、などの気持ちがあることもありますが、その行動の裏には、周りに負けたくない、バカにされたくない、情けない自分は許せない、など周囲と自分を比較した「競争」の心理が隠れていることがあるようです。
他者がいるとき、自分と他人を比べて競い、争う。
競争の心理が働くのは、かつて人生のどこかで
・誰かとの争いに負けた
・無力感を感じた
・バカにされ続けた
・自分の情けなさを感じた
・・・など心が傷つく事があったりして
もう、あんな思いはしたくない
情けない自分には戻りたくない
もっと私に力があれば負けないのに!
と思い、競争して前に出ようとします。
ところが、この競争は人の力を借りることに抵抗が出たり、誰かの仕事を自分で抱え込んでしまったり、負けん気の強さで、仕事を奪ってしまうようなこともあります。
では、Bさんはどのような気持ちで先に帰ったのでしょう?
「仕事終わったから、帰ろー♪」かもしれないし、
「本当はもう少し仕事できるけど、Aさん一人でやっちゃうからなぁ」と、ちょっとさみしい気持ちかもしれない。
本当のところは分かりませんが、 もし、Aさんがもう少し余裕を持って仕事をしたいと考えたときは、パートナーであるBさんを信じてお仕事を任せてあげることも必要なようです。
「いやいや、あのまま任せてたら仕事終わらないし!」
「みんな忙しくてとても任せられない」
と、Aさんは思うかもしれませんし、カウンセリングの中でも仕事が忙しくてご相談される方の多くはそのようにお話されます。
【手が空くことが怖いことも】
もしかすると、Aさんにとって本当に怖いのは
「手が空いて暇になること」
かもしれません。
力ない自分に悔しさを感じたからこそ、自分一人の力で頑張ろうと思っていたからこそ、手が空くことは、かつて無力だった自分に戻るようで・・・
それは競争の表舞台から蹴り落とされるような怖さかもしれませんね。
だから、落とされないようにしがみついてしまうのが私たち。
でもそれはしんどいですよね。
【自分自身との競争を手放す】
抜け出す方法もあります。
それは、競争を手放して自分から、周りへ役割を振ってあげること。
先ほどのAさんを例にしますね。
例えば、仕事のペースが違っていたとします。
できれば、お互いの仕事を競争なく分かち合えたら理想ですが、Aさんから見ればBさんはのんびり屋さん。
先に進めないとうまく回らないこともあるかと思います。
Bさんの仕事の一部を引き受けたとき、また次から次へと別の仕事が舞こんできたときに以前は全てAさんが引き受けていましたが、
誰かと比べたりしなくていいので、
Aさんの基準やペースで←これ大事
「Bさん、このお仕事お任せしていいかな?」
と、お願いしてみます。
これまで私がやれば早いとか、先回りして持っていった仕事を、Bさんにおまかせしてゆくのですね。
もちろんBさんは少し忙しくなりますが、Aさんからすぐに振り分けてゆくことで、Bさんに新しい役割が生まれますし、ピン!と張り詰めていたAさんの緊張の(競争の)糸がわずかでも緩められることで、気持ちはかなり楽になると思うのです。
この時はじめて、Aさんの中で起きている「かつての無力の私には戻らない、戻りたくない」という、許せない心の奥の自分自身との競争もまた、一つ手放していくことができるのです。
小さな事でもいいので、自分でもできることを、あえてお任せしてみることを、積み重ねていきます。
また仕事を任せてゆくことは相手への信頼を示すことにもつながりますので、より良い人間関係を作っていくことも期待できますよ。
【まとめ】
常に忙しく、仕事に追われる人は、過去の経験からくる「競争の心理」が働いている可能性があります。
競争の心理とは、他者に負けたくない、バカにされたくないといった恐れから、常に優位に立とうとする心理であり、この心理が働くと、人に仕事を任せられず、全て自分で抱え込んでしまうため、結果的に忙しくなってしまう事があります。
解決策としては、競争の心理を手放して周囲の人に仕事を任せることで、心の余裕を取り戻していくことなのですが、おまかせすることは相手への信頼を示すことにも繋がりますので、新たな関係性を築いてゆくことも期待できますよ。
+
必要以上に張りすぎた弦楽器の弦は、ちょっとの傷で”バツン!”と切れてしまうこともありますが、正しい音程まで緩めると切れにくくなります。
自分にとって必要な仕事の張り具合を見つけてみてくださいね。