ひとりぼっちの家族

ひとりぼっち解消運動

こんにちは 平です。

彼女の両親は仲が悪く、彼女が子どものころから夫婦ゲンカが絶えませんでした。

彼女が中学に上がった頃には両親はケンカはしなくなっていましたが、その代わり、会話のない冷め切った夫婦になっていたのです。

両親の関係が険悪だと、どうしても喜びや楽しみという感情が家庭の中に持ち込まれなくなります。

そのためか、彼女は家庭や家族とは大事なものだという思いをもてずに育ちました。

しかし、パートナーをもちたい、結婚をしたいという願望はだれよりも強く、早く大人になって、大好きな人と結婚し、明るく楽しい結婚生活を送りたいと思っていました。

ところが、彼女と縁のある男性は、すでに結婚していたとか、だいぶ年下で、つきあうには楽しいけれど、結婚はほど遠い‥‥といった人ばかり。

そこで、自分の恋愛についてのご相談で私どもにお見えになったのです。

心理分析をしていく中で、彼女の家族は両親をはじめ、「みんながひとりぼっちなんだ」というのが出てきました。

その中で、彼女の心のなかに作られていたのが、喜びを分かち合うということに対する罪悪感や後ろめたさでした。

彼女はもともと明るい性格で、友だちも多く、学校ではよく笑っているタイプでした。

しかし、仲の悪い両親のいる家に帰ったら、明るくしている自分を隠しておかなければならねばならなかったのです。

一方、自分にはこんなに暗い家族がいるということは、まわりの人には内緒にしておかなければなりませんでした。

それは、いつのまにか彼女の恋愛のパターンにもなっていて、友だちにも言えず、隠しておかなければならない恋愛が多くなっていたようなのです。

彼女は心のどこかで、彼氏と大手を振って街を歩いたり、まわりの人たちに彼氏を胸を張って紹介したりということが「ありえない」と感じていたことに気づきました。

その彼女が私どものセミナーに来てくれたので、あるご夫婦を紹介し、後日、彼女はそのお宅に遊びに行くことになりました。

そこにあったのは、かつて彼女が見たことのなかった笑いあう家族でした。

「ほんとに、この人、ダメダメちゃんの主人なの」と笑いながら話す奥さま、「そんなこと言って、おまえもじゃん」とニコニコしているご主人がそこにはいました。

「私もこういうものが欲しい」と彼女は一瞬にして思い、その場で泣き出してしまいました。

「自分のすべてを知ってもらい、すべてを受け止めてもらう」という感覚は彼女にはまったくありませんでした。

ずっと、「見せていいことと、隠しておかなければならないことがある」、「こんなことを知られてしまったら、きっと私は嫌われる」と思って生きてきたのです。

しかし、自分の中に、「私のすべてを知ってもらいたい、すべてを受け止めてもらいたい」という思いがあることに彼女は気づきました。

そして、そのご夫婦に自分のことを話しはじめたのです。

自分のこと、家族のこと、いやなことも隠さずに話してみたところ、そのご夫婦な彼女を心から受け入れ、共鳴しながら聞いてくれたのです。

そんなことは、彼女の家ではまったくありえないことでした。

そして、この日が彼女にとっての転機となったのです。

いま、彼女は自分の家で、“ひとりぼっち解消運動”を始めているようです。

今度は自分が聞く立場になって、おとうさんやおかあさんと話をしているそうです。

「もう、ひとりぼっちはいやなのよ。だから、みんなの話を聞いてあげたいの」

まもなく彼女には、素敵な彼氏ができそうな気がします。

では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。