「喪失」の乗り越え方(2)~「自立」している人ほど悲しめない~

「弱さ」の中に入れることが本当の「強さ」

「喪失」の事実を受け入れた後でも、「大したことはない」、「私は大丈夫」と感情的な痛みを否認しがちです。
特に、「自立」の人は「悲しむ」ことが苦手ですが、悲しみつくすことで自己受容が進み、早く自信を回復できます。

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「喪失」体験と向き合えるようになるのには時間がかかる

「喪失」は、伴侶や恋人との死別や別れ、ペットロス、「空の巣症候群」と呼ばれる子供の自立によるものなど、大きなライフイベントだと、長く心身ともに影響を及ぼしかねません。その衝撃に耐えるのに、心がたどるプロセスには、一定のパターンがあることが知られています。

「喪失」を知った瞬間は、あまりのショックで、一瞬、息が止まったようになり、何が起きたのかわからない、そんな混乱状態を経験します。ここで現実を受け入れられない、否認の状態がしばらく続くことが多いです。心は、ストレスを感じると、まず、そのストレスに対処するためにエネルギーレベルをあげますから、「とりあえず、この問題をどう解決しようか?」と考えて、精力的に行動し始めたりします。

例えば、夫に離婚を切り出されたら、ビックリすると同時に、親戚縁者に相談にまわったり、弁護士を探したり、あるいは、カウンセリングサービスのような心の専門家を訪ねてみる、など、「何ができる?」と解決策を探し始めます。その時は、それまでは色々と悩みながら手詰り感が強くても、途端に、一瞬ですが、逆に元気になったような感じもするかもしれません。

でも、状況には対処していますが、感情的には、この段階では、まだ起こったことを受け入れきれてはいなくて、否認状態だと言ってもいいでしょう。

状況が落ち着き、日常生活の変化にも慣れて、当人としては何とか危機を乗り切ったように思う頃、身体の不調や、全く何もやる気が起きなくなるなど、急ブレーキがかかったように感じることがあります。鈍い疲れが取れない、何をしても楽しくない、そんな状態が続くかもしれません。

状況に対応するために、感情を置き去りにして頑張ってきたのが、限界にきているというサインで、今度は、「喪失」による心のダメージを癒やすことが求められます。「喪失」による痛みの深さによっても違いますが、ここまで、早くても2-3ヶ月、長ければ、5年、10年とかかることも稀ではありません。

実際に、「喪失」の痛みと向き合えるようになるには、現実の状況がある程度落ち着くこと、そして、心の痛みを受け止めてくれる「誰か」とのつながりがあるといいようです。

 

「弱さ」の中に入れるのが本当の「強さ」

現代では、みんな忙しいですし、「自立」していて、理性的に考え、感情をコントロールできることが社会的に評価されやすいので、どうしても感情を切り離して日常生活を送りがちです。

明るく、ポジティブであることが「いい」ことで、悩み、落ち込むのは「弱い」証拠だと思っていませんか?

特に、人に甘えるのが苦手で、「依存」することが嫌いな、「自立」の強いタイプの方は、自分が「傷ついている」ということを認めてしまうと、「弱くて助けを必要としている」、もしくは「負けている」というセルフイメージを受け入れなければならないように感じて、すごく嫌な気分になるかもしれません。

「自立」している人にとっては、「助けてもらう」ことも屈辱のように感じてしまいます。当人は無自覚ですが、すべての人間関係において、どちらが上で、どちらが下か、といった競争をしていて、自分の痛みを人に見られるととても惨めな気持ちになるのです。

ところが、この惨めさを引き受けられてはじめて、「助けてもらう」ことも、人とつながり、「愛されている」と感じることもできるわけで、「喪失」による孤独感や無力感、無意味感を癒やすためには。自分の痛みを誰かに見てもらい、わかってもらうことがとても大切です。

「弱さ」の中に入れることが本当の「強さ」と私たちは言いますが、それは、自分の孤独や無力感、無意味感を感じる勇気を持つこと、でもあります。これは、「自分でやる」ことに価値を置く「自立」の人の価値観とはまるで逆のことなので、抵抗感が強いでしょう。あなたも、つい、「私は、大丈夫」と言って、人の愛情や思いやりを遠ざけていないでしょうか。

 

「自分」の感情も数に入れてこそ本当の自己受容

感情は、「安心だ」と思えたときに、ようやく緩み、感じられます。迷子の子供が、交番で家族の迎えを待っているときは眉間に皺を寄せながら大人しくしているけれど、お母さんの顔を見たとたんに、顔をくしゃくしゃにして泣き、怒る情景を見ます、ね。家に帰れるとわかり、安心できたときに、やっと、感情は上がってくるのです。

人の愛情や思いやりを遠ざけたくなるのは、心が緩み、感情に呑み込まれることを恐れているからです。私たちは、愛を受け取れないときは、他人からの優しさを見て見ないフリをします。

「弱さ」を感じたくなくて、「悲しみ」を感じないために、「優しさ」や「愛」を遠ざけるのです、私たちは。でも、そのことで、一番大切な、人とのつながりも失っているかもしれません。

「喪失」は、大切な人との関係性を失う体験です。それは、とても悲しく、辛い体験であることは間違いないのですが、そこから立ち直るときには、たくさんの助けや優しさを受け取り、多くの人とのつながりを感じられるという贈りものが用意されています。

大切な人を失ったときの悲嘆は、愛した分だけ大きいかもしれません。でも、その悲しみを引き受けて、悲しみ尽くすと、自分の中にあった「愛」の大きさに触れることができて、自信が戻ってきます。

カウンセラーは、そのお手伝いをさせていただきたいと思っています。

>>>『「喪失」の乗り越え方(3)~それは悲しみ?それとも怒り?~』へ続く

この記事を書いたカウンセラー

About Author

みずがき ひろみ

感情や感覚といった女性性をフルに使い、心のブロックを外すカウンセリングが得意。「目からウロコが何枚も落ちる」と見方が変わることに定評がある。 深層心理に眠る「願い」を掘り起こす「癒し」を通して、人生の豊かさを受け取りたい人の、恋愛、ビジネスでの自己実現をパワフルにサポートしている。