ハードワークを超えるには

終電まで働くのは当たり前。休日も「たまってる仕事を片付けなきゃいけないから」と仕事をする。
友達と遊んだり、家族と触れ合ったり、旅行したり……というプライベートの予定をなかなか立てられない。
仕事がちゃんと終わるかわからないから。

休みの日は、くたびれ果てているせいか、家にいることが多い。
DVDを観たり、ゲームしたり、寝ていたり……。
そんな生活を続けているうちに、友達と疎遠になり、家族との距離が開いてしまった。

ときどき「自分から仕事を取ったら、何が残るんだろう」との思いがよぎることもあるけれど、次の瞬間には「いやいや、この程度じゃ甘い」と仕事モードに戻る。
 

このような状態にいるとき、周りから「ハードワークしてるよね。もう少しゆっくりしたら?」と言われることは少なくありません。
けれど本人は「ぜんぜんだよ。この程度じゃまだまだ」と思っています。手を抜いてラクをしたら、自分を甘やかしてダメにしてしまうような感覚を持っていることもあります。

自分ではハードワークをやめることができません。
倒れる、病気になる、うつ状態になるなど体に不調が現れて、ようやく休めるケースも決して少なくありません。
自分で休むことができないために、結果として病気を引き起こしてしまうこともあるのです。

なぜ、これほどまでにハードワークをしてしまうのでしょうか。

例えば、次のような心理が働いていることがあります。
役に立つ人間であることを証明しなくてはいけない。
使えないと思われてしまったら、ここにいられなくなってしまう。
そして、自分の価値や存在意義をハードワークを通じて証明しようとするのです。

その根底にあるのは、「自分には価値がない」という無価値観です。
ハードワークを続けて仕事の比重が高くなるほど、「仕事のできない自分には価値がない」「仕事を取ったら自分には何も残らない」という傾向に拍車がかかります。
その結果、ハードワークをやめられないということが起こります。

また、「自分は悪い人間だから罰せられるべき」という思いからハードワークをしていることもあります。
「忙しくて嫌になる」「本当はこんなに仕事したくないのに」と言いながら、自分で抱え込んで仕事量を増やしてしまったりと、ハードワークしなくてはならない環境を招いてしまうのです。
それはまるで、自分を罰するために大変な環境に身を置いているかのようです。

「自分には価値がない」「自分は悪い人間だ」という思いを埋め合わせるためのハードワークは、一生懸命やっているにもかかわらず報われないということが起こりがちです。自分を幸せにするという発想が、なぜか抜けてしまうのです。

そればかりではなく、うまくできなかったことばかりが気になって自分を責めたり、落ち込んだりすることも多いのです。
また、「あの人は間違っている」と相手のやり方や間違いを批判したくもなります。
けれど、人の間違いを批判する分だけ、自分が周りから批判されないように常に自分を監視するようにもなります。
相手に向けたはずの批判が、そのまま自分に返ってきてしまうのです。
 

もちろん、ハードワークが必要な時期もあります。
ハードワークを通じて、自分にできることを学び、身につけていくような時期です。
けれどそのときでも、自分を消耗させるような働き方ではなくて、自分の想いを100%投じるような働き方をするといいんです。

働く動機が「頑張らないと価値がないから」「やらないと、周りから批判されるから」だと、どうしても消耗していってしまいます。そうではなく、「これを自分がやることで、誰かを幸せにしたいから」という想いで取り組むのです。

頑張らないと価値がない、自分がここにいていいと思えない、人から何を言われるかわからない——。
これらは、「恐れ」がベースとなった動機です。

恐れをベースに何かをしても、残念ながら、そこからは恐れや防衛しか生み出しません。

ハードワークをしている動機を、愛の視点から思い出してみるのです。

自分はこれを与えたい、だからこれをやってるんだ。
自分はこれが好き、これをしていると楽しい。もっとみんなに知ってほしい。だからこれをやってるんだ。
自分はこれに価値があると思っている。世の中に広まるといいのにと思う。だからこれをやってるんだ。
自分はこんな世の中になったらいいと思っている。だからこれをやってるんだ。

家族の笑顔を見るために、頑張って働いているんだ。
同僚や部下、上司が力を発揮できるように、自分はサポートしたいんだ。
チームのみんなが自分の仕事に意義を見出せるように、サポートしたいんだ。

ハードワークをしている動機の中に、こんな思いもあるはずです。
それらの思いをどんどん膨らませながら、目の前のことに取り組んでいくのです。
 

そのためには、自分自身にもやさしくしていくこともとても大事です。
自分にやさしくできていなかったら、自分に余裕がなかったら、周りにいい影響を与えることはなかなかできません。

だから、自分にやさしくするんです。
おいしいものを食べる。
どこかに出かけてリラックスする。
リフレッシュできる場所に行く。
休息をとる。
「よくやってるよ」と自分の頑張りを認める。
「今日も頑張ったね」「これまでも十分やってきたね」と自分にやさしい言葉をかける。

自分にやさしくしてあげることなら、なんでもかまいません。
どんどん、自分にしてあげてください。

また、人を批判したくなったときこそ、相手を許すこと。
心の中で「Aさんを許します」と言ってみます。
人を許した分だけ、心に平和がやってきます。自分自身を責める気持ちが少なくなっていくのです。

また、自分が知らず知らずのうちに抱えている罪悪感や無価値観にカウンセリングを通じて気づき、誤解を解いていくのもいいでしょう。
罪悪感や無価値観は、子どもの頃に自分でも気づかない間に抱え込んでしまった誤解から生じていることも少なくないからです。
「まさかそんな罪悪感を持っていたなんて、自分ではまったく気づかなかった」
そんなことも、たくさんあるからです。
気づくことで、それらの思いを手放していくことができます。

恐れではなく、愛を動機に目の前の対象に力を注ぐ。
するとそこに、その人ならではの味が生まれていきます。
その人だからこそ、生み出すことができる何かが形になっていくのです。
それが創造性です。

もし今、仕事は嫌いじゃないはずなのに、朝起きるのが憂鬱だったり、仕事のことを考えるとどこか気が重いという状態だとしたら——。
ハードワークを超えた先に進んでみませんか?

仕事を通じてたくさんのワクワクや喜びを感じられたり、自分ならではの創造性を発揮できたりするはずです。

そのときにはきっと、今よりも仕事が好きだと感じられるでしょう。
今よりも楽に仕事に取り組みながら、かかわった仕事を通じて、喜びや楽しさや充実感などたくさんの実りを受け取ることができるでしょう。
周りの人たちの幸せにも、今よりさらに貢献できるでしょう。

ハードワークを超えた先にあるものとは、自分もみんなも幸せにすることができる世界といえるのかもしれません。

この記事を書いたカウンセラー