やめられない悪い癖

相談者名
joy
私は、1年ほど前から物を盗む癖があり、直すことができません。
それが、何かの物であったりお金であったりしますが、別にお金に困っているわけではありません。
一度事件になったことがあり、やめようと自分でも努力しているつもりなのですが、同じことを繰り返してしまいます。
また罪を犯すことはいやなので何とかしたいと本気で悩んでいます。
親に対する嫌悪感や嫌がらせの意味で、最初ははじまったと思うのですが、今は理由が分からなくなってきてしまいました。
これから社会復帰をしていく上でどうしても直したいのです。
何か良いアドバイスを御願いします。
カウンセラー
大谷常緑
joyさんこんにちは。
初めまして。ご相談を担当させて頂く大谷です。よろしくお願いします。

さて、必要でも無いのに何かを盗んでしまう、しかも止めたいと努力されているにもかかわらずそうやってしまうと、自分を責める気持ちが強くなったり、また、一生この癖が治らないのではないかと不安になってとても辛いですね。
でも、止めたいと思われている気持ち、そして努力されている今のjoyさんはとても立派だし、強い心をお持ちだなぁと思います。

ご相談の中に“親に対する嫌悪感や嫌がらせの意味で、最初ははじまったと思うのですが”と書いて頂いていましたので、この点に着目してお話しを進めさせて頂きたいと思います。
joyさんは、親に対する嫌悪感をお持ちだったということですから、親に対してこうあって欲しいという強い思いがあったのではないかと思います。人間誰しもそうなのですが、こうあって欲しい人がそうでない時には、わかって欲しいという気持ちがあり、それがやがて怒りに変わり、その結果、その気持ちを感じるのが辛くて感情を完全に切り離してしまう人もいれば、joyさんのように何らかの形で攻撃のような行動をとる人もいます。どこかで「あなたが悪い」というのをわからせたい行動になるのですね。joyさんはこの感情から必要でも無いのに何かを盗む行動をとられていたわけですね。

ところで、人間の感情は、ミルフィーユの様に何層にもなっています。そして、表面近くにある層は顕在意識(頭で理解できる意識)にあって認識する事ができますが、無意識は認識する事が出来ません。もっとも、無意識の中でも顕在意識に近い場所にある潜在意識にある感情は、元々顕在意識で感じるのが辛くて感じないように顕在意識の下に潜り込ませてしまったものですから、感じる事ができる様にはなります。
人間が、頭で(顕在意識で)こうしたい、と思っても出来ない場合があるのは、この潜在意識や無意識が顕在意識の考えている事に反対しているからなのですね。実は、顕在意識は意識全体の4%~12%程度しかなく、残りの88%~96%は無意識や潜在意識が占めていると言われています。圧倒的に潜在意識や無意識が強いわけです。
joyさんが頭で盗む事を止めたいと思われてもなかなか止められない、というのは、この潜在意識や無意識の部分がまだまだ盗む事を止める事に抵抗しているからなのです。
ではなぜ、無意識や潜在意識はまだ盗む事に抵抗しているのでしょうか?
先ほど、人間の感情は何層にもなっていると書きました。joyさんの比較的表面にある層に存在する親に対する嫌がらせや復讐は、joyさんが盗む事を止めようと思った時点である程度処理されているのではないかと思います。joyさんは、今、そこから抜け出して、次の層の感情、これは頭ではまだ認識できない潜在意識にあると思いますが、それと取り組む時期が来ているように感じます。
さて、joyさんの次の感情の層を探る一つの方法ですが、頭ではわかっているのだけれども必要でもない物を盗む事が止められない理由が仮にあるとしたら、それは何でしょうか?最初感じておられた「親への嫌がらせ」以外の理由で、直感で感じてみてください。そのような事をして、joyさんは果たして何が得られているのでしょうか?

僕が感じるのは、joyさんが、「自分は本当に悪い人間だ、だから罰せられるべきだ」という気持ちです。ご自身で自分に罰を与え、自分の悪さを感じようとしているように感じます。

一般に、「誰かが悪い」という思いの裏側には、「私は悪くない」という思いがあります。単純な例になりますが、通路に椅子が放置されていたとしましょう。そこを歩いていてよそ見をしているか何かで椅子に気が付かなくて、椅子の足にでもぶつかったとします。そんな時、気分に余裕がないときには「誰だ、こんな所に椅子を置いたのは!」と椅子を蹴飛ばしたりします。これは、不注意に椅子にぶつかった私が悪いと感じたくないために、そこに椅子を置いた誰かが悪いと理由を付け、椅子に八つ当たりするのですね。これと同じように、自分が悪いと感じたくない度合いだけ、誰かが悪い、joyさんの場合は、「親が悪い」と感じたのではないかと思います。誤解がないように断っておきますが、こう感じる事が悪いと言っているわけではありません。ただ、そうなんだなぁと理解して頂ければいいだけです。
一般に「私は悪くない」と感じる心の下側の層には、必ず「私は悪い」という反対の感覚があります。だから、「いい」とか「悪い」に固執してしまうのですね。

さて、joyさんは、おそらく、心のどこかでこの「私は悪い」という気持ちをお持ちでしょうから、そんな悪い私は罰を受けなければならないと、ご自分に対して何の得にもならない、いえ、辛い感情を引き起こす行為を止められないのですね。
以上が、心の面での解説です。

さて、では具体的にどうすればいいかというと、先ずは「私は悪い」「誰かが悪い」という判断を手放すことです。そして、「誰も悪くない」と考えることです。
人間は、誰しも誰かを傷つけたくはありません。それは、人を傷つけるのが誰しも本当は不快だからです。今、不快さを味わっておられるjoyさんには、それが十分にわかると思います。それぞれの事情があり、そうしかできなかったと理解することです。特に親子関係では、「こうあって欲しい」と、あたかも親を神様のように見てしまうことがよくあります。しかし、例え親であっても、joyさんと同じ人間なのです。神様ではありません。そうしかできないかった事もあるのです。この点を理解していただくと、親も、ご自分も「悪くない」という考え方を理解していただけるのではないかと思います。
そして次に、「私は、もう盗むことはしません」と鏡に向かって、自分自身の目を見ながら宣言してください。そして、それをご自分が「明確に選択したこと」をかみしめてください。もし、かみしめられない何らかの感情が出てきたら、日数をかけても結構ですのでその感情が消えるまで根気よく何度もそれを繰り返してください。これが、joyさんの心の奥に潜むネガティブな感情と向き合い、戦うことです。ここで肝心な点は、自分の目を見ながら言葉にして言うこと、選択を自分がする自覚を持つこと、かみしめることです。
きっと、盗むことが無くなると思います。
以上、長くなりましたが、お役に立てれば幸甚です。
ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。