友達が許せない

相談者名
かおりん
 私は今、同じ学科にどうしても好きになれない子がいます。
大学1年の頃の話です。彼女とは入学してからすぐ仲良くなり、大学内ではいつも一緒にいました。最初はすごくいい子だと思っていたのですが、段々と人を見下した言動が目立ってくるようになりました。
彼女の通っていた高校は県内でも屈指の進学校で、生徒のほとんどが国立大などの有名なところに進学しているそうです。しかし、私たちが通っている大学は有名ではありません。そのことを彼女は「こんな頭の悪い大学に入りたくなかった。違う大学に行きたい。」「こんな頭の悪い人たちと同じ勉強をしてると思うと悲しくなる。」と言っていました。また、授業中に先生から問題をあてられた子が、すぐに答えないとイライラするそうです。私が「じゃぁ何でこの大学に来たの?そこまで違う大学に行きたい気持ちがあるなら、今から挑戦しても遅くないと思うよ。」と言うと黙りこむのです。黙り込むなら最初から言わないでほしいのに、いつもこのような愚痴を聞いていてすごく疲れました。何より彼女の発言に私自身すごく否定されている気分になり、毎日が憂鬱でした。気持ちも落ち込むことが多くなり、学校に行く前に体調が悪くなったり、学校について教室に入ろうとすると吐き気がしてトイレに駆け込んだりしていました。ストレスも溜まり、過食を繰り返すようになってしまい、気付けば15キロも増えていました。そのときも「どうやったらそこまで太れるの?普通、太りたくてもここまで太れないよね~」と他の友達の前で言われました。それから、もう彼女とこれ以上一緒にいられないと思い、私は彼女から離れました。その後、彼女とはほとんど話していません。
それから2年が経ちますが、未だに私は彼女を許すことができません。彼女の姿を見たり、声を聞いたりすると嫌悪感を抱いてしまいます。授業もなるべく彼女と違う科目をとるようにしています。今は彼女との関わりは少ないし、もう2年も経っている過去の出来事を引きずっている自分が情けないです。どうしたらいいでしょうか?
カウンセラー
池尾昌紀
かおりんさん、こんにちは。
池尾昌紀と申します。
ご相談ありがとうございます。

お友達が許せない、そしてその思いは2年も続いているとのご相
談、内容と長さを考えたら、それはとても辛い事です。

最初に、少し考えていただきたいことがあるのです。
それは、かおりんさんが、このお友達のことを本当に嫌っているの
だろうか、ということです。
その答えは、最後にもう一度考えてみたいと思います。

さて、仕事に行くのが嫌だ、と思っている人がいたとしましょう。
その理由はいろいろありますが、整理してみると、仕事自体が嫌だ
と思っているのではなく、仕事に行くと感じる「嫌な気持ち」が嫌
だったのだ、と気づくことがあります。

同じような事が、嫌いな人の時にもいえることがあるのです。
苦手な人、どうしても合わないと感じてしまう人、嫌いな人、許せ
ない人。もちろん、そう感じるには、その人が起こした行動や発言
が原因なのですが、実のところ、その人が起こした言動や、その人
そのものが嫌い、許せないというわけではなく、それをきっかけに
心の深いところにある「何か嫌な気持ち」を感じるということが原
因である、ということがあります。

もしそうだとしたら、何か嫌な気持ちの元は何なのでしょう。
いろいろな事が考えられますが、2つの視点で整理したいと思います。

一つ目は、深層心理で「その人を見ていると別の人を思い出してし
まう」ということです。
例えば、お父さんがとても厳しい人で、父親の前ではいつも萎縮し
てしまっていた、という幼少期を過ごした人がいたとしましょう。
こうした場合、成人してから年配の男性で厳しいタイプの人が苦
手、ということがあります。
それは、その人そのものが苦手なのではなく、その人を通してお父
さんを思い出してしまうからなのです。

二つ目は、「その人を見ていると自分の嫌なところを感じてしま
う」ということです。
その人のこういうところが嫌い、とか、振る舞いが好きになれな
い、許せないというのは、実のところ、その人そのものが嫌いでは
なく、それを通して自分が感じる自分の嫌いな部分を見せられてい
る感じがして嫌な気持ちになる。

どちらの場合も、ポイントは、許せないと思っているその人は、心
の奥底にある隠れた気持ちを引き出すきっかけになっているにすぎ
ない、ということです。
こう考えることができると、絶対許せない!と思っていた相手に対
して、「私はこの人のことが嫌いじゃないのかもしれない」という
思いを生むきっかけをつくり、段々と許せるようになっていく道を
歩いていくことができます。
また、もっと大きなメリットは、今後同じようなタイプの人に出
会った時にも対処ができるようになる、ということです。

先に例えとして出した、上司を怖いと感じる話のように、誰にでも
嫌いな苦手なタイプの人というものがあります。
それは多くの場合、深層心理にある隠された気持ちからきていると
考えることができたら、人間関係で悩んできたことを解消すること
ができます。

許せない相手が登場することは、とても辛いことですが、それは自
分自身が心の中に閉まってきた未完了の傷や思い出を整理し癒す
チャンスであるともいえるのです。
そんな相手がいなければ、この思いは心の奥底で眠ったままです。
もしかしたら、もっと大変な状況で感情が爆発してしまったかもし
れないのです。

まずは、ご紹介した二つの視点で、相手を見るのではなく、自分の
心に質問してみてください。
「その人を見ていると別の人を思い出してしまう」のではないか。
「その人を見ていると自分の嫌なところを感じてしまう」のではないか。

そして、当てはまる人や感情が出てきたら、それを具体的に感じま
しょう。
「それは誰なのか。その人に何を感じるのか。どうしてそう思うのか。」
「どんなところが嫌なのか。いつから感じていることなのか。どう
してそう感じるようになったのか。」

心が癒される時の最初のステップは、「気がつく」ということです。
こうして整理して、自分の心の中に眠っていること、あるいは自覚
していたけどあらためて気づくことを具体的にしていくことで、あ
なたの中にさらなる大きな発見があるでしょう。
そこで気がついたことから、あなたは新しい一歩を踏み出していく
でしょう。
たったこれだけの事で、人生が変わる事もあるのです。
勇気を持って見つめてみましょう。

さて、一番最初に、かおりんさんが、このお友達のことを本当に
嫌っているのだろうか、という質問をさせていただきました。
その答えはいかがでしたか?
私がかおりんさんのご相談を読ませていただいて一番感じたのは、
このお友達のことを本当は嫌いではないのではないか、ということ
でした。
けっして良い思いではないにせよ、言い方を変えたら、これほどま
でに長く彼女のことを思い続けている、ということです。
一人の人をこれほど思い続けるというのは、恨みつらみだけではな
く、かおりんさんの中の何かに響く人だからなのではないでしょうか。
そして、それはきっと彼女も同じ気持ちだったと思うのです。
先ほどまでに、いろいろな視点を書かせていただきましたが、単に
彼女のことが好きだ、という思いだけで、かおりんさんの人生は大
きく変わるかもしれません。

人が持つ性質は、恨みつらみを抱くことではありません。
人は誰かを愛したいといつも強く願う存在なのです。

かおりんさん。あなたも愛したいと願い、そして実際に愛そうとい
つも真剣に取り組んでおられる方なのです。
それを強く感じたご相談でした。

ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

名古屋を軸に東京・大阪・福岡でカウンセリング・講座講師を担当。男女関係の修復を中心に、仕事、自己価値UP等幅広いジャンルを扱う。 「親しみやすさ・安心感」と「心理分析の鋭さ・問題解決の提案力」を兼ね備えると評され、年間300件以上、10年以上で5千件超のカウンセリング実績持つ実践派。