人との距離

相談者名
ゆうこ
はじめまして。
40代の女性、仕事をしております。

小さい頃から、人との間に壁を作ってきたように思います。
そのせいで、人との距離の取り方がよく分からない気がして、いつも、対人関係で疲れてしまいます。
親の期待に応えようとしているうちに、次第に自分自身が何をしたいのかが後回しになり、気がついたときには、自分が何をやりたいのか全く分からなくなってしまった気がします。

職場の同僚や友人、家族とも、表面上は波風立てずにやっていますが、過剰に気を遣いすぎるせいか、一人になるとぐったりしてしまいます。
もっと、自然体に振る舞いたいと思うのですが、相手のちょっとした仕草やひと言が気になってしまって、行動もぎこちなくなりがちです。

もっと、明るく楽しく人と接したいと思っています。
ちょうどいい人との距離の取り方について、
アドバイスをよろしくお願いいたします。

カウンセラー
大谷常緑
ゆうこさん、こんにちは。
御相談を担当させていただく大谷です。
よろしくお願いします。

御相談を拝見して、ゆうこさんは随分と自分と向き合ってこられたんだなぁ、と
思いました。そして、凄く人間が好きで、優しい人なんだなぁ、一生懸命頑張っ
てこられた人なんだなぁと思いました。

さて、「ちょうどいい人との距離の取り方アドバイスをよろしくお願いいたしま
す。」との事ですが、それができるようになるためには、少しだけ勇気を持って、
ゆうこさんが変わってみよう・・・と思われる事が必要だと思います。

ゆうこさんは、「親の期待に応えようとしているうちに」と書かれていましたが、
どうして、いつ頃から親の期待に応えようと思われたのでしょうか?
おそらく、小さい頃からそうだったのではないかと思います。

一般的に子供は親が大好きで、親から愛されたいと思っています。
しかし、例えば、躾が始まったり、妹や弟が生まれたり、親の気分が優れなかっ
たりすると、厳しくされたり、妹や弟にばかり親が愛情を注いでいるように感じ
たり、あるいは怒られたりして傷つきます。もう、自分は愛されないのではない
か、と思ってしまったりします。
大人になった今であれば、躾は人間として生活出来るようにするために、弟や妹
に愛情を注いでいるように見えるのは、弟や妹の方に手がかかるからであり、親
も人間なので気分が悪い時には怒られたりする事もよくわかるのですが、子供の
時代には、そんな事は余り思わなくて、何か自分が悪いから愛されないのではな
いか、と勘違いしてしまったりします。
そう感じると、子供は親に愛されるように、親に注目してもらえるようにと、親
の顔色を伺って行動したり、がまんしたりします。
いただいた御相談だけでは判断はできませんが、おそらく、ゆうこさんもこんな
感じ方をされたのではないでしょうか?

そうすると、いつも「親の目」を意識しながら行動するようになります。
自分は今どう思われているのだろうか、自分は出来ていないんじゃないか、と思
ってしまうわけですね。いつも他人の目を気にして、自信がないという自分のパ
ターンができてしまいます。
そして、「次第に自分自身が何をしたいのかが後回しになり、気がついたときに
は、自分が何をやりたいのか全く分からなくなってしまった気がします。」とな
ってしまいます。
愛される事がそもそも目的でしたから、親の期待に応える事で愛されようとする
のですが、それは自分のやりたい事をがまんしながらになりますので、疲れてし
まいますね。

ここで得られたものは、自信が無く、人からどう見られているのかいつも気にな
るゆうこさんです。
勿論、ある時期までは親からの愛が手に入れられて目的を達成できたかも知れま
せんが、今はもう、そのパターンを変える時期だと思います。

さて、ではどうすればいいのでしょうか?
もともと、「愛されない私」を感じ、「できていない私」を感じ、「いつも人の
目を気にする私」となっていったのですから、先ずは「愛されない私」「できて
いない私」の勘違いを見直す事ですね。先ほども書きましたが、今となってはわ
かる事も、子供時代にはわからず、自分のせいにする勘違いをしてしまっている
のです。その心のパターンがずっと残っているんです。自分の価値を低く見てい
るんですね。

そこで、具体的な方法ですが、先ず、ゆうこさんの良いところ、自分で感じる良
いところを紙に20個ほど書き出してみてください。
例えば「人当たりがいい」とか「人の事をよく考える」とか「話を聞くのが上手」
とか、
「頑張り屋」とか、「若く見られる」などなど、どんな事でも思いつくままに書
いていただいて結構です。
もし、ゆうこさんが気軽に話ができる人がいれば、その人に「私の良いところっ
てどこ?」と尋ねてみてもいいかも知れませんね。
そして、その紙に書いた「私の価値」をもう一度ゆっくりと眺めてみてください。
そこにはどんな私が描かれているでしょうか?
そして、もし、そんな「私」のコピーのような人がゆうこさんのそばにいたとし
たら、ゆうこさんはその人をどう感じますか?

そうすると、人がゆうこさんの事をどう見ているか、がある程度客観的に見えて
くると思います。

一般論になりますが、人間は、自分の事を厳しく見てしまう傾向があります。
できていないところに着目して、そこを責めてしまいます。まるで、できていな
いと感じている部分を虫眼鏡で拡大して見てしまうので、良い部分が横に押しや
られてしまい見えなくなってしまうんですね。本当はとてもとても一杯良いとこ
ろがあるんですが・・・。
これが自信のなさにつながります。

さて、自信ができると、人間はどうなるのでしょうか?
心理学には、「投影の法則」という基本的な法則があります。
自分の心の内側にあるものが、外の世界に映し出されるという法則です。
例えば、映写機と映画のフィルムと、スクリーンがあったと思ってください。フ
ィルムが自分の心の内側、スクリーンが自分の外の世界(例えば別の人)としま
す。
フィルムに傷があると、スクリーンにも傷が映りますね。あたかもスクリーン自
体に傷があるように映りますね。
これを「投影」と呼びます。

ゆうこさんの心の中に「出来ていない自分=自信がない自分」があるとすると、
「自分はできていない」と自分を責める気持ちがあります。そうすると、あたか
も自分以外の人からも責められるような感覚になります。そうすると、責められ
ないように自分を外の世界から守らなければ・・・と人に気を遣ってしまいます
よね。自分が自分を責めているだけなのに・・・です。

ゆうこさんが、少しご自分に自信を持たれる、すなわち、出来ていないところを
拡大して責めるのではなく、等身大で自分の良いところを認められると、自分を
責めていない分だけ、誰かから責められるという感覚が無くなります。そうする
と、その分人に対しての守りが無くなって、過剰な気遣いをする事もなく、楽に
人と接する事ができるようになります。

先ずは、自分の良いところ=自己価値を認めてあげる事で、人との適切な距離感
が持てるようになります。
また、頭で考えすぎる癖をお持ちなので、それも止められるといいと思います。
感情や人間関係、あるいは自分の状況は、考えてもいい結果は殆ど出てきません。
寧ろ混乱します。考える事は、防衛の一種です。これもゆうこさんのパターンな
んですね。

回答がお役に立てれば幸いです。
ありがとうございました。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。