堕胎した母が許せない

相談者名
みくろ
36歳、今年、初めての子を流産しました。
落ち込む私に母が「私も昔下ろしてる」と言いました。
母は3人目の子を産んだあたりから心臓が悪く、4人目を堕胎したようです。
しかし、それを悪いことをしたと言う感じでもなく、理由も病気だったからか、3人もすでにいたからかあいまいな感じでした。
実際、理由は病気だったからだと思いますが、産めないとわかっていたなら避妊するべきだと思います。
「ちいさいものだったから」と言っていましたが、小さくても命は命。
私は同じくらいの大きさの子を失っているので、軽視する神経がわかりません。
私が流産してそんなに間がないのに「元気を出さないと次の子ができない」などと言えるのは生まれてこなかった命を軽視しているからだと思います。

・私は産みたくても産めなかったのに、自分から下ろした母と同じように言われたこと。
・堕胎した子に悪いと思うようなそぶりが見られなかったこと。
・堕胎したことを子供に言うということ。(順番が違っていたら私が殺されてた?)
・私の流産を軽視していること。

これらのことが主に許せなくて、以前は仲のいい母子だったのに、心を開くことができなくなりました。
夫や友達にも相談するような内容じゃないし、一人もんもんとしています。
許すことが自分の心も和らげることだと思いますが、どうしても以前のような気持ちにはなれません。
どうしたら、自分の気持ちに折り合いをつけ、許すことができるでしょうか?

カウンセラー
三島桃子
みくろさん、はじめまして。今回担当させていただく三島桃子と申します。どうぞよ
ろしくお願いいたします。

流産をした時というのは、本当につらい気持ちになると思います。

私も10年ほど前に、最初の妊娠で初期流産した経験があります。流産という今まで
何の知識もなかったことに直面してショックを受けましたし、今後子どもができるん
だろうか?という不安を強く感じ、何で私だけが(私だけでないのはわかっていて
も)と思ったものです。

みくろさんはつらい気持ちでいっぱいのところに、お母さんから、かつて子どもを下
ろしたことがあるという話をきいて、よけいにつらくなってしまったご様子ですね。
お母さんはどうしてその話をしたのでしょうか?

お母さんは表面上はみくろさんを励まそうとした感じです。「私にも似たようなつら
いことがあったのよ、でも元気出してやってるでしょ、あなたもそうしたらいいの
よ」と。

でも、お母さんの深層意識ではまた違う思いがありそうです。おそらく、お母さんは
4人目の子どもを下ろしたことで、本当は悲しい思いや罪悪感を抱えているのだと思
います。でも、下ろした当時から今まで、誰にも本当の気持ちを見せずにやってきた
のではないでしょうか。周りに心配をかけないように、そして、自分自身もつらい気
持ちを感じるのは苦しいから。お子さんがすでに3人いたことで、自分の深い部分の
気持ちを考える時間的な余裕もなかったのかもしれません。

お母さん自身、自分にそんな気持ちがあることには気付いていないと思います。とこ
ろが気持ちというのは不思議なもので、自分で気付いてなくても「あるものはある」
のです。むしろ、そういう気持ちがあることに気付き、認め、誰かに話すことができ
ると、すっと消化されてしまうのですが、抑圧したままだとその感情はいつまでもな
くなりません。

そして、娘であるみくろさんが流産したことで、お母さんの抑圧していた感情が刺激
を受け、思わず「子どもを下ろしたことがある」と言ってしまったのではないかと思
います。

今までお母さんが子どもを下ろしたことを口にしなかったのは、我が子を傷つけない
ように、という配慮もあったでしょうし、お母さん自身が傷ついていて、話すとつら
いから話せなかったのではないでしょうか。

もしお母さん自身が本当に「たいしたことではない」と思っていたら、我が子が成人
した頃には「人生いろいろあるわよね」ぐらいの気持ちでさらりと話していたかもし
れません。

娘であるみくろさんが流産で感じた大きな悲しみを見た時、お母さんの抑圧されてい
た悲しみが少し心の底から浮かび上がり、「私もつらかった、今、それに近い悲しみ
をこの子も感じている、同じ気持ちを私も知ってるのよ」というような感覚が出てき
て、子どもを下ろした経験を話してしまったのだと思います。

ただ、もともと長いこと抑圧してきた感情なので、ちゃんと表面意識までは浮き上が
らず、表面的には今までどおり「たいしたことじゃない」と自分に言い聞かせている
ような状態が変わらず、みくろさんにかける言葉もそのようなものになってしまうの
でしょうね。

みくろさんが「私の流産を軽視している」という感じがするのは、お母さん自身が自
分の経験を「たいしたことじゃない」と自分に言い聞かせてきたこと、つまりはあえ
て軽視してきたこととつながっているように思います。そうすることで強くあろうと
してきた、というのが実情ではないかと感じます。

お母さんの、お母さん自身も気付いていない本心は、「どんな形であれ、子どもを失
うのは本当につらいわね」と、みくろさんと一緒に泣いてくれているのかもしれませ
んよ。

また、流産という自分ではどうしようもない事態であっても、「産んであげられな
かった」という罪悪感を母親は感じるものです。みくろさんもそういう感覚があるの
ではないでしょうか。お母さんは自ら決断して下ろしたわけですから、みくろさん以
上に強い罪悪感を持っている可能性もあります。

みくろさんが今抱えているもやもやとした苦しい気持ちは、表面的にはお母さんへの
腹立ちかもしれませんが、その奥の方には、みくろさん自身の流産に伴うつらさと、
実はお母さんが持っている同じような感情を一緒くたに感じているような状態かも知
れません。

相手の感情と自分の感情がいっしょくたになってしまうことを「癒着」といいます。
「癒着」は表面的にはわからないことも多いのですが、意外とよく起きる現象です。

断定はできませんが、みくろさんはもともとお母さんとの間に「癒着」があったのか
もしれません。流産のことでその課題が表面化した、ということも考えられます。

ベビーちゃんはママが大好きです。たとえ流産してしまっても、あるいは下ろされて
しまっても、その気持ちは変わりません。赤ちゃんや幼児といった幼い子どもはとて
もけなげで、お母さんを恨んだりはしないようなんです。お母さんの幸せをとても
願っているので、「産んであげられなかった」とお母さんが自分を責めることを望み
ません。むしろ、「短い間だったけどママといられて嬉しかったよ」と思っていて、
そのことを知ってほしいと思うものです。

ですから、「あなたと一緒にいられて私も嬉しかったよ、私のところに来てくれてあ
りがとう」と言ってあげることが、ベビーの一番喜ぶことだと思います。

いくつかのポイントについて書かせていただきましたが、今とても傷ついているみく
ろさんにとっては「突然そんなことを言われても」というような内容もあったかもし
れません。疑問に思うことなどありましたら、いつでも初回無料の電話カウンセリン
グなどご利用してみてください。

ゆっくり休んでくださいね。
ご相談ありがとうございました。

三島桃子

この記事を書いたカウンセラー

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