議論で戦いをする夫

相談者名
VOLKS
私は仕事を持つ40歳、夫は50歳。結婚9ヶ月です。夫は、徹底的に議論する人です。彼は在日韓国人で、戦って生きてきたせいか、彼の「議論」とは戦いであり、勝ち負けを決し、負けた方が勝った方に従う事だと考えています。彼は、「お互いに意見を出し合い、より良い(正しい)方の意見を2人の意見として決めていこう」と言います。しかし現実の議論は相手を理解するためではなく屈服させるための戦いです。口調は非常に強く、最初はその言い方に傷ついて泣いてしまった程で、今はだいぶ慣れて冷静に話し合えるようになったもののその高圧的な言い方にとても消耗します。そのせいか心から信頼しあう友人はほとんどおらず、少ない友人を「あいつは本当に馬鹿だ」「幼稚だ」と形容します。私は場の空気を重視し、「そんな考えもあるのね」と受け入れ、理解しようと努めるタイプで友人も多いです。職場での討論・議論ではとても理性的に話し合えるし、そこにストレスはありません。彼とは意見を受け入れた段階で私が「負けた」扱いになるのですが、ちょっとした事で彼の考えと異なる行動・態度が出てしまうと「お前は2人で決めたことを裏切るのか?」と激怒します。相手を心から納得させたければ言い方を工夫した逃げ道を用意することで相手も譲歩納得しやすくなるのだから、言い負かすという方法で、相手の考えを変えられないのだ、と説明しても、理解してもらえません。「言い返せなくなった段階で、論破されたのだ。だから間違いを認めて考えを改めるべき」と言います。そして彼の口調のきつさや強引な論理展開、理不尽な攻撃につい私が感情的になるとますます激昂され傷つけあうような喧嘩に発展します。最後は非常に拒否的になり、「君のような幼稚な人間とはやっていけない、離婚だ」と突きつけます。彼とやっていくために、「2人の意見が平行線で、結論が出ない場合は、彼の意見を採用する」という提案を受け入れました。しかしその約束を破った(行動だけじゃなく、言葉や態度のような微妙なものでも)場合、離婚だけでなく、ペナルティを提示するべきだ、と言ってきました(ペナルティは自分で考えろと言われました)。私は彼と結婚生活を維持していきたいと願っていますが、このようなメンタリティの彼との議論に消耗してしまいます。どう接するのが最もうまくいき、ぶつからずに仲良くできるのか、是非アドバイスをいただきたいと思います。
カウンセラー
三島桃子
VOLKSさん、はじめまして。今回担当させていただく三島桃子と申します。どうぞよ
ろしくお願いいたします。

VOLKSさんとご主人は結婚されて9ヶ月なんですね。まだまだ新婚と言える時期だと
思うのですが、ご主人は議論になるとずいぶん強い言い方をされるようで、VOLKSさ
んにとってはちょっと大変なご様子ですね。消耗してしまうのも無理はないと思いま
す。

一般的に男性は夫婦の話し合いの場などで議論的になることが女性よりも多いようで
す。女性のように感覚的に判断することが苦手なので、その分理詰めで自分の考えの
正しさを証明しようとするわけです。

また、男性はいろいろなことを「勝ち負け」で考えたり、「とにかく勝った方が正し
いんだ」と考える傾向も女性より強いところがあります。これは伝統的に男性が置か
れてきた社会的な立場の中で、「男は強くなくてはいけない、そして勝ち抜かなけれ
ばならない」というような価値観を自然に身につけているからだと言えるでしょう。

特に、VOLKSさんのご主人は戦って生きてきたというところがあるようですから、こ
の傾向がとても強くなっているのかも知れません。

でもそれは裏返せば、「負けることをとても怖がっている」、ということでもありま
す。ご主人の高圧的な態度の下には、実は、「ものすごく大きな怖れ」が隠れている
のではないかと思います。

ちょっと「えっ?」という感じもするかもしれません。あの激しい議論をする人が
「大きな怖れ」を抱えているなんて?と。
でもこういう男性は意外と多いんです。

口調がきつい、態度が大きい、気に入らないことがあると激怒する、といった行動
は、多くの場合、自分の弱さを隠そうとする防衛心から起こります。
自分の弱さがばれてしまったら負ける、負けたら何もかもおしまいだ!やばい、怖
い、絶対に負けるわけにはいかない!
そんな感じです。

現実には、人間は誰でも弱さを持っていますし、人生の中で「負けた」と感じること
は時々起こります。それでも「それで人生何もかもおしまい」ということはまずあり
ません。それなりにそこを乗り越えて生きていくことができるわけです。ただし、乗
り越えていくためには自分の弱さを認め、受け入れていくことが大切になります。

けれども自分の弱さを受け入れることができない場合、
「弱さがばれたらおしまいだ」

「ぜったいにばれないようにしなければならない」

「そのためには絶対に負けてはいけない」

「負けたらおしまいだ!」

という発想になりますから、絶対に負けないように、態度、行動が攻撃的になるわけ
です。そして時には「負けた」と本音では感じていても、表面上は決して負けを認め
ません。

さて、こういう人の周りに人は集まってくるでしょうか。通常は、いっしょにいると
ちょっとしんどいので、人は離れていきます。そうして孤立無援の状態になってくる
と、さらに「怖れ」は強くなってしまいます。いざというときに助けてくれる人がい
ない状況なのが自分でもわかりますから。
そして、「絶対に負けてはならない!」という気持ちがさらに強くなり、どんどん追
い込まれてしまいます。悪循環ですね。

VOLKSさんのご主人の心理にも、こういうところがあるように感じます。
おそらくご主人は子どもの頃から実際につらい経験もされてこられたのでしょう。同
時に、何事にもくじけずにがんばる、という個性・才能を持っている人なのではない
でしょうか。

今の状態はご主人が生きてきた環境と、ご主人の個性・才能などが重なっての結果で
あって、ご主人がよくない人だということではないのですが、奥様であるVOLKSさん
にとってはちょっとしんどい面がありますよね。

こういう場合、どうしていけばいいのでしょうか。

○競争をやめる(闘うことをやめる、負けるが勝ち)
ご相談の文面の様子ですと、基本的にご主人がVOLKSさんとの議論に「負けてくれ
る」ことは、ほとんどないのではないでしょうか?だとしたら、議論して消耗するだ
けもったいない感じがします。議論してもしなくてもご主人が自分の意見を通すのだ
としたら、はじめから議論をしない方がVOLKSさんがラクだと思うのです。

何かを決めないといけないときは、一応自分の意見を言って、ご主人が「それはああ
でこうで、オレの考えが正しい」と言ってきたら、「そうね、それでいいと思うわ」
と、どんどん譲ってあげてはどうでしょうか。VOLKSさん自身がラクするために、消
耗しないために、です。「負けるが勝ち」ぐらいの気持ちで。

自分のエネルギーを温存するだけでも、気持ちに余裕ができると思いますよ。

○コントロールを手放す
「コントロール」とは、相手を操作して自分の都合のいいようにする、ということで
す。「怖れ」が強いと、コントロールも強くなってしまいます。思い通りにならない
ことにものすごく恐怖を感じるわけです。

ご主人の態度はコントロールが強いように思います。議論でもってVOLKSさんを思い
通りにしたい、という感じを受けますし、

>ちょっとした事で彼の考えと異なる行動・態度が出てしまうと「お前は2人で決め
たことを裏切るのか?」と激怒します。

というご主人のやり方には、コントロールの度合いのきつさを感じます。

けれども、

>相手を心から納得させたければ言い方を工夫した逃げ道を用意することで相手も譲
歩納得しやすくなるのだから、言い負かすという方法で、相手の考えを変えられない
のだ、と説明しても、理解してもらえません。

という部分からは、VOLKSさんも実はコントロールを持っている感じがするんです
ね。VOLKSさんの言っていることは正論ですし、間違ってはいないのですが、「あな
たはこう変わるべき」というのは、内容が正しいか正しくないかに関わらず、コント
ロールになります。

もちろん、VOLKSさんの持っているコントロールは人間なら誰でも持っている程度の
ものなのかなとも思うのですが、VOLKSさんがそれを手放すことで、ご主人のきつい
コントロールが少し弱くなる可能性はあります。

パートナーシップのポイントして、「正しいか正しくないか、いいか悪いかというこ
とは横において、そのままのパートナーを認める」ということがあります。
一人の人間のあり方にはそれなりの理由や事情があります。
「あなたにとってはそうしたくなる、そう言いたくなる事情があるのね」と受け止め
てあげて、コントロールはやめる、ということができると、よりよいパートナーシッ
プが築けることが多いんですね。

ただ少々気になるのですが・・・

>彼の口調のきつさや強引な論理展開、理不尽な攻撃につい私が感情的になるとます
ます激昂され傷つけあうような喧嘩に発展します。最後は非常に拒否的になり、「君
のような幼稚な人間とはやっていけない、離婚だ」と突きつけます。彼とやっていく
ために、「2人の意見が平行線で、結論が出ない場合は、彼の意見を採用する」とい
う提案を受け入れました。しかしその約束を破った(行動だけじゃなく、言葉や態度
のような微妙なものでも)場合、離婚だけでなく、ペナルティを提示するべきだ、と
言ってきました(ペナルティは自分で考えろと言われました)。

とVOLKSさんは書いておられますが、ご主人のこのようなやり方は、ちょっと度を越
えているようにも思います。激昂して勢いで言っただけならいいのですが、どうなの
でしょうか。

度を超えている、というのは、ご主人の「怖れ」がそれだけ大きいということでもあ
ります。怖れがあまりにも大きい場合、VOLKSさんが私が提案したことを実践してく
ださったとしても、かえってご主人の扱いにくさはエスカレートするかもしれませ
ん。

怖れが大きすぎる場合、「自分が変わる」ことそのものにものすごく恐怖を感じます
から(今まで何とか生き抜いてきた自分のやり方を変えるのは怖いものです)、その
恐怖心から態度がさらに攻撃的になることもあるのです。

その場合、別の選択肢を考えていく必要もあるように思います。お一人で考えていく
のは荷が重い部分もあるかと思いますので、よろしければいつでも電話カウンセリン
グなどをご利用くださいね。

VOLKSさんのことを応援しています。
ご相談ありがとうございました。

三島桃子

 

この記事を書いたカウンセラー

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