自立の心理学~自立によって引き起こされる問題~

自立していきましょうと私達は言われてきました。

でも自立することで引き起こされる問題もあるんです。その問題とは?

● 私は自立人間? ●

カウンセリングの現場では、当たり前のように出てくる程ポピュラーな、
心理学用語で“自立”という言葉があります。

ポピュラーという程ですから、自立されてる方の心理を扱うことが多いという
わけなんですが不思議と自立されている方程、自分が自立しているとうことを
自覚していなかったりするんですよね。

「えっ、私が自立しているんですか?私は依存的な人間だと思ってました。」

なんて言われることもしばしば。
ふ~んって人事のように読まれているあなたのことかもしれませんよ(笑)

でも、なんで自分が自立しているか気付けなかったりするんでしょうね?
その訳と自立について今回はご紹介していきたいと思います。

● 自立しすぎると・・・ ●

人が成長していくプロセス(プロセス)で自立というプロセスがあります。
多くの大人はこの自立のプロセスを学んでいきます。

以前講座でご紹介させていただいた“人の成長プロセス Part2 『自立』
にも書かさせていただきましたが、自立とは依存時代(子供の頃)傷ついた度
合いだけ「もう傷つかないぞ」と思い自分の甘さや、弱さを嫌って強くなろう
とするのが自立なんですね。

そして、自立の度合いが強くなればなるほど、人に頼りたいような自分を嫌う
し、人に迷惑をかけるのが大嫌いで自分ですべて解決しようとするし、まして
や人に弱音を吐くなんて自分の辞書にはないというようになっていくんですね。

こう書くと自立は悪いことのように見えるかもしれませんが、あくまで心理学
的な自立の背景を書くとこうなってしまうだけで、社会にでる上で自立してい
くというのは立派なことだったり、大切なことだったりすると思います。

自立しているからこそ社会の中で成功できたり、嫌なことでも頑張って立ち向
かえたり、少々のことではへこたれない強さをもっていたりします。

ただ、自立が問題になる時もあります。
それは自立のプロセスが進み過ぎて自立度合いが強くなり過ぎた時。

困った時にも人に頼れない、自分一人で解決しようとするので周囲との人間関
係が上手くいかなくなってしまう、弱音が吐けないんで自分の内に溜め込んで
しまう、というような問題が起きてしまうんですね。
これは多くの自立されている方が抱えられている問題でもあるようです。

中には「しんどいから会社を休みたい」という心の悲鳴を言葉に出せない為に
ストレス性の病気になってしまうということがあります。
病気になってようやく会社を休むということを自分に許せるし、周囲の人に
『これだけしんどかったんだよ』ということを表現できるんですよね。
でも、病気になる前に、「しんどい」って一言言えてたら自分の体を病気で痛
めつけなくてすんでたのかもしれません。

自立が強くなると、心の柔軟さが消えていきああしなければこうしなければと
いう規則や義務と役割に縛られていくという面も持っています。
そしていつか煮詰まって燃え尽きてしまうことも・・・・
だんだんとしなやかさが消えていきシャープペンシルの芯のようになってポッ
キリ折れやすくなってしまうようなものかもしれませんね。

また、仕事面なんかで自立しているバリバリの営業マンや、キャリアウーマン
なんかが、依存的な恋愛面で悩みを抱えていたりすることもあります。

振り子時計の振り子が右に大きく振った度合いだけ、同じ度合い左にも大きく
振るように、仕事面で自立という方向に振った度合いだけ、恋愛や家族関係や、
はたまた趣味などのなにかに依存するという方向に心の振り子は振ります。

心は振り子時計の振り子のように自立と依存のバランスをとろうとするんです
ね。仕事なんかで強く自立している度合いだけ、恋愛で強く依存してしまう訳
ですから依存的な恋愛になってしまい二人の仲が上手く行かないという問題が
発生してしまうわけです。

このような自立しすぎることで問題が起こるようになると、
今度は、自立を手放していくことが問題解決の鍵になっていきます。

● まずは気付くこと ●

自立を手放していくには、まずは自分が自立していることに気付く必要があり
ます。気付けないと手放せませんからね。

でも前述したように
「えっ、私が自立しているんですか?私は依存的な人間だと思ってました。」
というように自立された方は自分が自立していることに気付かないようです。

なぜかというと自立していくと自分の甘さや弱さを嫌って強くなっていこうと
しますから、自分の駄目なところや、甘えたい気持ちや、弱いところを見つけ
ていきます。そしてそこを叩いて強くなろうとするんでね。

当然、自分の駄目なところや、甘えたい気持ちや、弱いところばかり見つけて
いくわけですから自分のことを、
「駄目な人間だ」
「甘えた人間だ」
「弱い人間だ」
というように思ってしまいます。
そしてそんな自分は到底自立しているとは思えないようです。

でも、逆なんですよね。
自立しているからこそ自分の駄目なところや、甘えたい気持ちや、弱いところ
を見つけてしまうんですよね。
『ふ~ん』って人事のように読んでいるあなたのことかもしれませんよ(^^)

● 自立を手放す ●

自立を手放していくことは自立している人にとって、とっても嫌なことである
し難しいことでもあったりします。
それだけ大きな課題なんでしょうね。

自立とは自分の甘さや弱さを嫌って強くなっていこうとすることなんですが、
自立を手放していくということは、自分の甘さや弱さを認めていってあげると
いうことなんですね。

自分にも、こんな甘えたい気持ちがあったんだな、頼りたい気持ちがあったん
だな、さみしいという気持ちがあったんだなというように今まで嫌っていた自
分を受け入れていくことが始まりです。

僕はこれは本当の強さだと思うんですね。
自分の弱さの中に入っていけるくらいの本当の強さを持っていなければ、なか
なか今まで嫌っていた自分の弱さというのは認められませんから。

そして、自立での問題が困った時にも人に頼れない、自分一人で解決しようと
するので周囲との人間関係が上手くいかなくなってしまう、弱音が吐けないん
で自分の内に溜め込んでしまうというような問題であれば、
人に助けを求めること、一人ではなく誰かと問題解決を試みること、だれかに
弱音をはきたい自分を見せてみること等が自立を手放す上での課題になってく
ると思います。

そうすることで自立し過ぎることで起こる問題もなくなるでしょう。
もちろん依存的な恋愛問題もなくなるでしょうし、病気にならずに済むかもし
れません。

自立していくことは悪いことではありません、むしろ大切なことです。
でも、自立が強くなり過ぎることで問題が引き起こされるなら、調整する為に
今度は自立を手放していくことをお勧めします。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

若年層から熟年層まで、幅広い層に支持されている、人気カウンセラー。 家族関係、恋愛、結婚、離婚、職場関係の問題などの対人関係の分野に高い支持を得る。 東京・名古屋・大阪の各地でカウンセリングや心理学ワークショップを開催。また、カウンセラー育成のトレーナーもしている。