カウンセリングに学ぶコミュニケーション3~表現力をアップするために~

カウンセリングを通じて学ぶコミュニケーションの第3段です。

前2回は聴く側に立っての講座でしたが、今回は話す側のポイントを表現が難しい訳から、表現力を高めるエクササイズまで例を挙げてご紹介しています。

●表現力と心との繋がりの関係性

心に余裕が生まれ、人を受け入れられるようになっていくと自然と信頼に基づいた人間関係を築いていくことができます。
そこで自分自身の気持ちや考えをきちんと伝えることができれば、さらに気持ちのよい関係を築いていくことができるでしょう。

皆さんは「自分の気持ちがうまく言葉にならない」「自分が何が言いたいのかが分からない」そんな経験をされたことはありませんか?
私達はなかなか自分の気持ちを表現することが苦手で、我慢したり、キレてしまったり関係性に壁や距離を作ってしまうことが良くあります。

どうして自分の気持ちがうまく表現できないのでしょうか?
その一番の原因は「心とのつながり」にあると考えられます。
私達は自分を理解して欲しい、受け入れて欲しいという欲求をみんな持っています。
何を受け入れて欲しいのか?といえば、それは「私の気持ち」に他ならないわけですね。
でも、心とのつながりが切れてしまうと私達は自分の感情を感じることができなくなります。
つまり、自分の気持ちが分からなくなってしまうわけです。
そうして「気持ちを分かって欲しいんだけど、その気持ちが分からない」という状態が生まれるのです。

●心の繋がりが切れてしまった訳

どうして心とのつながりが切れてしまうか?といえば、それは私達が小さい頃からたくさん我慢してきたからかもしれません。
「欲しい」という気持ちを持つことが許されない環境に育つ方もいれば、強いハートブレイクから自信を失い心を見失ってしまっている方もいるでしょう。
また、自分はそこまで大きな痛みは背負ってないと感じたとしても、辛い気持ちを一度も感じたことが無い方はいらっしゃらないでしょう。

私達はしんどい感情は感じたくないですから、辛い気持ちを感じたときは出来るだけそれを感じないように麻痺させようとします。
ショックな出来事にあったときに「何も言えなくなる(感じない)」のは、心のブレーカが飛んだからなんです。
そんな風に心は辛い気持ちから自分を守ろうと感じないように回線を切るんですね。
そういう経験を重ねると、少々のことではびくともしない・・・というよりは、何も感じられなくなってしまうんです。

また、特に日本人は自分の感情を表現することをあまり由とされていませんでした。
「静かにしなさい!」「大人しくて偉いわね」そんな会話に象徴されるように、私達はよく言えば「謙遜」、悪く言えば「我慢・抑圧」の中で生きています。
そうすると、自分の気持ちを表現することはとても苦手なものになってしまうんですね。

カウンセリングの中でも「今どんな気持ちでしょう?」ってお聞きしても「えーっと、よく分からないんですよ・・・」と答えられる方は少なくありません。
それが悪いのではなく、それくらい自分の心とのつながりが切れてしまってるんだな、と気付いて頂ければOKです。
気付けば何とか変えていく道筋も見えようというものです。

実は僕自身も昔は自分が何を感じているのか全然分からなくて、さっぱりだったんですね。
心とのつながりがすっかり切れてしまっていました。
実は僕自身、小さい頃からずっと寂しかったんですけど、あまりに寂しかったので自分がそうだとは気付かなかったんですね。
だから、知らないうちに恋人や友人にも寂しい思いをさせてしまうことが少なくなかったんです。
でも、あるとき「寂しさって何だっけ?」と疑問に思い始めたら、少しずつそれを感じ始めることができるようになりました。
意識を向ける(フォーカスする)と、自然と心はその方向に向って行ってくれるものなんですね。
もちろん、感じ始めたら今までずーっと寂しかったんだ・・・ということに気づきまして、ちょっと大変な時期もありました(もちろん、それも通過点で、その後は人との繋がりを本当に大切にしたいと思えるようになり、人間関係も大きく変わりました)。

●表現力を高めるエクササイズ

お勧めのエクササイズは、思い出したときに自分にこう聞いてみることです。
「私、今、何をしたいんだろう?」
「今、自分はどんな気分なんだろう?」
「今、本当はなんて言いたいんだろう?」

自分に聞いてみるだけでいいんです。
もし、心から答えが返ってきたら、それを文字でも言葉でもいいですから、そのまま表現してみましょう。

もちろん、自分の気持ちにぴったりはまる言葉が見つからないときもあります。
それはそれで構いません。
なんだろうなあ・・・ってやはり自分の心に聞き続けてみてください。
「俺ってボキャブラリが少ないんだよね」
という方は、決して知ってる言葉が少ないわけではないと思うんですね。
「知ってるけど、使ったことのない言葉がたくさんある」
という意味のように僕には思えるんです。

そのために、少し自分を信頼して、心からぴったりその気分にフィットした言葉が上がってくるのを待ってみましょう。

そして浮かんだ言葉を誰かに言ったり、聞いてもらったりすると後からチェックすることができます。
私達が感じていることはとてもシンプルで、
「嬉しい」「寂しい」「難しい」「怒ってる」「腑に落ちた」
といった簡潔な表現でできます。
でも、頭で考えてしまうと
「なんだかよく分からない」「楽しい・・・と言われれば楽しい」
など結構長くなるものです。
心との繋がりが深められるほど、表現はシンプルなものになっていくでしょう。

このエクササイズはすぐに結果がでるものではありません。
気長に取り組んでみてくださいね。

●価値を見るコミュニケーション

「人間関係をよくするコツって何でしょうか?」
って質問はとてもよく頂くものです。

もし、それを一つだけ挙げるとしたら、僕は
「相手の価値、魅力を見て、伝えてあげてください」
と言うでしょう。
簡単に言えば「褒めてあげる」ということです。

これはカウンセリングでも僕が常に大切にしていることでもあって、人を見る時は常に価値や才能のラインから見つめるようにしています。

うちの子もそうですが、自分でご飯を食べられただけで「すご~い」って褒められるんですね。
でも、私達は大人になればなるほど人から褒められる機会は少なくなります。
信頼できる人から褒められると嬉しくなって心が温まり、安心感が広がります。
価値を見たあなたの気分もまた良いはずです。

もちろん「いいところだけを見なさい」というわけではありません。
でも、私達は知らないうちに重箱の隅を突つくように悪いところばかり見ていませんでしょうか?

だから、まずは相手の良いところ、価値、魅力を見てあげましょう。
(悪いところは放っておいても目に付くわけですから!)
特に長年連れ添った夫婦、家族、友人、同僚、上司・部下に対して。
「なにをいまさら・・・」と恥ずかしくなりますが、それがとても重要なことなんですよね。
この恥ずかしさは私達にとって自分を表現するための大きな壁になります。

そして、それを伝えてみることが大切です。
心の中で思ってみるだけでも価値のあることですが、伝えられる機会があるのならば、むしろ積極的に伝えてみましょう。
直接伝えるのが難しければ、ちょっとしたメール、手紙、メモなどでもOKです。

この価値や魅力を伝えるコミュニケーションは、心の架け橋として相手とのつながりを改めて強化してくれます。
それはあなたにとってより大きな安心感と居場所と喜びを与えてくれるものでもありますから、ちょっと勇気を振り絞ってチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

●感謝を伝えるコミュニケーション

これもよく耳にする、目にすることなのですが、すごく大切なので何度でもお伝えしたい事です。
何かに対してあなたが感謝し、それを表現することは、自分自身を癒し、心を解放するとても効果的な方法の一つです。
それはまるで「浄化」のような力があって、心の中に溜まっている罪悪感や自己嫌悪を洗い流してくれる効果もあるくらいです。

何かに対して「ありがとう」などの感謝の気持ちを表現することにより、人に対するハートが自然と開かれるようになります。
そして、滞っていた関係性に光を点してくれることも少なくないのです。

●表現力をつけると人との繋がりが深くなる

こうして自分の心との繋がりを取り戻し、相手の価値や魅力を見続けると、やがて人と繋がりもより深く感じられるようになるんですね。

そうした繋がりがあるところでは、自然と信頼関係が築かれていきますので、傷つくことが少なくなるんです。
(仮にひどい言葉を投げかけられても、信頼関係があれば「あいつも今いっぱいいっぱいなんだな」という風に受け止めてあげることもできます)

そうするとあなたにとってはその人が味方になるので、何を言っても大丈夫、という安心感が芽生えます。
もちろん、最低限の礼儀は必要かもしれませんが、この安心感のあるところではお互いをフォローし合える環境にありますから、とても楽に表現することができます。

そして、この一つの繋がりをベースに糸を紡ぐように、網を張るように、人とのネットワークを築いていくと、そこがあなたにとってもとても安全な場になるのです。

表現力をつけることと、人との繋がりを深めることは実は同義なのかもしれません。
感謝や価値など、普段使いのコミュニケーションにぜひ取り入れてみてください。

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