自由で楽な関係性を築く~相互依存という関係性~

対人関係において「依存」「自立」の位置にいることで苦しくなってしまい、関係性自体が悪くなってしまうことがあります。

問題があって滞っている関係性を良くしていくために役に立つ、依存でも自立でもない「相互依存」という自由で楽な関係性をご紹介します。

カウンセリングで対人関係を見ていく時に「依存」「自立」という面から見ていくことがあります。

依存/自立という状態そのものは悪いことでもダメなことでもないのですが、依存/自立の状態でいることで苦しくなったり、相手とのつながりを感じられなくなるのが問題となります。

依存/自立の状態が苦しいと感じると、その関係性そのものが苦しくなってしまったり嫌になってしまいます。
そのためにその関係性を壊してしまわないためには変化が必要になってきます。

それでは、まずは、依存/自立のそれぞれの位置での状態や、そこで起こる問題を見ていきましょう。

●依存の位置で起こる問題

依存の位置にいる時には、相手に対して「嫌われたらどうしよう」「見捨てられたらどうしよう」といった怖れを持って、相手の顔色を伺うようになります。そして、そのために我慢や犠牲をしたりしてしまいます。
そのために自分のニーズ(欲求)が満たされず、相手に不満を持ってしまいます。

しかし、先ほど説明をした怖れから、相手にニーズを満たして欲しいと求めたいけど求めることもできなくなってしまいます。
また、それが満たされるのも満たされないのも相手次第となってしまって、相手に振り回されしまいます。

こうして相手に振り回されてしまうと、「今のこの嫌な気分は、満たしてくれないあんたのせいよ!」となってしまって、それを自分でどうすることもできなくなってしまうのが依存の位置で起こる問題です。

●自立の位置で起こる問題

依存の位置にいる時傷ついて「誰かに頼るから傷つくんだ。もう誰にも頼らないで1人で生きていくぞ!」というのが自立の状態です。その過程で依存することを嫌ったり禁止したりします。

対人関係の中で自立の位置にいると、不思議なことに、依存の位置にいる人が集まってきます。
すると、自分自身が依存を嫌ったり禁止したりしている分だけ、その依存的な相手にも同じように感じるようになります。

依存の位置にいる人に足を引っ張られているように感じたり、邪魔をされているように感じたりすることもあります。

他の人に頼ったり甘えたりすることができないので、辛いことや苦しいことなどがあってもそれを1人で何とかしようとして1人で抱え込んでしまい、自分が辛くなるのと同時に、まわりにいる人に自分を助けさせないことで、まわりの人たちに罪悪感や無力感を感じさせてしまい、それで関係性が悪くなってしまうことがあります。

また、自立の位置にいる人は「自分のやり方」というのを大事にしますので、他の人とぶつかることが多くなります。

●依存でも自立でもない新しい楽な関係へ

依存/自立の状態が苦しいと感じると、その関係性そのものが苦しくなってしまったり嫌になってしまい、そのためにその関係性を壊してしまいたくなる、というお話をしましたが、その変化というのは、具体的には、依存/自立を超えた「相互依存」という位置を目指すという方向性の変化になります。

「相互依存」というのはどういう状態なのかといいますと、お互いがそれぞれに自立をしていて、その上でお互いに依存もできるという関係性の状態です。相互依存の状態は、お互いに対等な関係で、依存の位置にも自立の位置にも自由に行き来ができるという、フレキシブルで楽な関係です。
ポイントは、『お互いに』依存も自立もできるということです。

そこで必要になってくるのが、依存の位置にいる人には「自立」、自立の位置にいる人には「依存」を受け入れるというチャレンジです。

それでは、依存、自立のそれぞれの位置での必要なチャレンジというのはどういうものなのか?を見てみましょう。

●依存の位置からのチャレンジ

相互依存に向かうために、依存の位置にいる人に役に立つチャレンジは「与えること」です。

例えば、「彼に、もっとやさしい言葉をかけてもらいたいな」と思っている時には、自分の方から彼にやさしい言葉をかけてあげたりといったように、自分が「こうしてもらいたい」と思っていることを相手にしてあげるということにチャレンジしていきましょう。

実際にそれができると、それだけでも自分に自信が持てますし、与える喜びや、与えることの難しさなどの、新たな発見を手にすることができるでしょう。
ひょっとしたら、「やってあげたいことはあるんだけど、私にはできない(あげるものを持っていない、私にはそれだけの力がない)」といった悩みが出てくるかもしれません。

そんな時には、なぜそう思うのか?なぜそう感じるのか?という部分を見つめていくことが役に立つでしょう。

心理学独特の物の見方の一つに「『できない』は『やりたくない』と翻訳しましょう」というものがあったりします。

「なぜできないのか?」さらには「なぜやりたくないのか?」というところから、自分の心の中で起こっていることや感じていることを見つめていくのにカウンセリングというのは効果的な手段であると思います。

●自立の位置からのチャレンジ

相互依存に向かうために、自立の位置にいる人に役に立つチャレンジは「頼む」「当てにする」です。

例えば、「仕事で部下が依存的で自発的に動かない」「頼りにならなくて任せられない」ということがある時、それを1人で抱え込んでしまうと、自分がしんどいだけでなく、部下との信頼関係を築けなかったり感情的なわだかまりを持ってしまったりと、関係性が悪くなってしまうきっかけになることがあります。

ちょっと想像してみていただきたいのですが、「こいつは依存的で使えない」「全然頼りにならない」という目で部下を見ている時、どんな目をして部下を見てるでしょう?
その目で見られている部下の人って、どんな気分になるでしょう?

逆に、どんな目で部下の人を見てあげることができたら、「自信ないけど、失敗するかもしれないけど、それでもやってみよう!」と部下の人は自発的に動き出すでしょうか?

自立的で、厳しいけれど何でも自分でできる有能な上司から「○○君、がんばってるねー!いろいろ忙しいと思うんだけど、君の力を見越してお願いしたいことがあるんだ」などとお願いされることがあるとすると、悪い気はしないと思いませんか?

このように、思い切って部下に仕事を任せてみたり、「こんなふうに仕事を進めていってもらいたいんだけど、お願いできるかな?」と頼んでみたりすることにチャレンジしてみましょう。

これは、これまでの自分のやり方を手放して新しいやり方を受け取る、自分に依存を許して受け取る、チャレンジとも言えます。

ひょっとしたら、人を当てにしたりお願いをしたりする時に大きな抵抗が出てくるかもしれません。
これまでの自分を否定するような感じがしたり、屈辱感を感じることがあるかもしれません。

その心の痛みをカウンセリングでカウンセラーに吐き出していくことをしてみるといいかもしれません。
自立的な人にとっては、それ自体が大きなチャレンジになるかもしれませんが、現実の日常生活の中でいきなりチャレンジするよりも、カウンセリングの中で練習してみるところから始めてみてはいかがでしょうか?

●相互依存の関係性のいいところ

人の心の中には、「頼りたい」「甘えたい」「当てにしたい」といった依存の位置から求める気持ちと、「助けたい」「役に立ちたい」「力になりたい」という自立の位置から与えたい気持ちの両方があります。

依存/自立の位置や関係が固定されてしまうと、求める気持ちは満たされても与えたい気持ちは満たされなかったり、その逆だったりします。
しかし、相互依存の関係性では、依存も自立も自由に行き来できるので、そのどちらも、お互いに満たし合うことができるのです。

まずは、自分自身が自立も依存もできるオールラウンドプレーヤーになることで、今の相手をそのまま受け入れることができるようになり、その上で、相手の自立を促したり、相手の依存を引き受けたりできるようになり、より早く『お互いに』自立も依存もできる関係性を育んでいくことができます。

今の関係性が問題を持ったまま膠着してしまっている時、「依存と自立」という側面から関係性を見てみたり、「相互依存」という全く新しい関係性に向かって変化していくことで、今の関係性でできているバランスを、いい意味で壊すことができます。
「相互依存」という関係性があるんだということを知るだけでも、そのきっかけになるのかもしれませんね。

みなさんが、自由で楽な関係性の中で、相手の人との関わりやつながりを楽しめたり喜べたりするお役に立てば幸いです。

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