不満の心理学~満たされない心を満たす取り組み方~

不満はごくごく日常で感じやすいものでありながら、その対処方法に苦労される方は多いと思います。

不満の意味や意義、そして、解決していく方法をご紹介します。

私達は子供時代、何かと「依存」の立場にいました。
赤ちゃん時代は自分ひとりではご飯もトイレも済ませられないわけでして、大人になって社会的に自立しても、経済的に親に依存している方も少なくありません。

「依存」の立場は何かをしてもらう側ですから「~してくれない」という不満を感じやすくなります。

もちろん、幼い子供とその親のように一方通行的な依存と自立の関係性もありますが、大人になれば、ある場面では依存し、別の場面では自立し、と言う風に相手やTPOによって自立と依存を両方持つことが少なくありません。

例えば、恋愛では本来対等なはずなのですが、お互いに
「あいつは俺の気持ちを分かってくれない」
「彼は私のことなんてちっとも大切にしてくれない」
と同時に思ってることもざらにありますね。

お互い自立した大人同士なのに、依存心がある分だけこうした不満を抱えやすくなります。

●不満を抱えるのは悪いこと!?

不満というのは「満たされない気持ち」という意味です。
私達の心には必ず依存心があり、何かに対して不満を抱えているのが普通と言ってもいいと思います。
それくらい不満は当たり前の感情なんですね。

超自立的に生きている社長さんですら「うちの部下はろくな契約を取って来ない!」という不満を持ったりしますよね?
これは“リーダーの依存”とか“自立の中の依存”などとも言われるもので、リーダーだからこそ持つ不満(依存心)でもあります。

また、夫婦間でも「うちの旦那は本当に稼ぎが少ないんだから」とか「うちの嫁は仕事のことを理解してくれん」と同じテーマ(この場合は“仕事”)で別々の不満を持つこともあります。

私達の生活の中にはこの不満が渦巻いているわけですから
「この気持ちとどう付き合うのか?」
というのが毎日の生活を大きく左右することになると思いませんか?

不満と上手に付き合うことができれば、きっと楽しみも増えていくでしょうし、余計なことで悩まなくても済むかも知れません。
逆に、押しつぶされるくらい重たい不満を抱えてしまえば、毎日がしんどく、辛いものになってしまいます。

ですから、不満を抱えないように、あるいは不満を我慢して生活するよりも、不満に対する態度、心構え、考え方を変えた方が良いのかもしれません。
雨が降らないのを祈るよりも、雨が降っても大丈夫なように対策する方がいいですよね?

●不満を感じる目的があるとしたら?

そして、不満にはもう一つの側面があります。
それは「問題発見」という意味です。

ネガティブな感情にも全てその意味があり、目的があるのですが、不満というのは、今ある自分自身やその関係性に対する問題を教えてくれるサインなんですね。

例えば、あなたが「彼は私の気持ちを分かってくれない!」と不満を感じたとしたら“二人の理解”に関する問題があるということです。
(当たり前といえば、当たり前の話なんですけど、コレ重要です)

だとすれば、こういう見方が可能なんですね。
「もし仮に、私が彼の気持ちを分かってあげてないところがあるとすると・・・それはどこだろう???」

●不満を伝えるだけでは問題解決には至らない

でも、その不満は始めの方でお話しましたが、自分の中の「依存心」から生まれてくるものです。
だから、「問題」に気付くと、あなたの中にある依存心がこう囁いてくるんですね。
「あたしにはその問題は解決できない。だから、彼に解決してもらおう」と。

そうすると彼に「あなたは私の気持ちなんて全然分かってくれないんだから。もう最低!」って問題を彼に投げつけて、後は彼にお任せ・・・とばかり「彼が何とかすべきよ」ってことをしてしまいがちなんですね。

実は問題を見つけながらも、解決を相手に投げてしまうと、実はその不満はずーっと解消されないばかりか、うず高く不満が積み重なることになってしまうんです。

それは次のように説明することができます。

あなたが彼に問題を投げつけて、それでも彼が頑張ってあなたの気持ちを理解してくれようとしたとしますね。
でも、それは彼が依存、私が自立の関係の時だけなので、彼が理解を示せば示すほど、自立側に立つあなたは、その彼の態度を素直に受け取れなくなってしまいます。

(自立側は与えるのは得意ですが、受け取るのは苦手なので、こうした彼の態度にかえって「重たく」感じてしまいがちです。)

そして、今度は「あたしが言う前にちゃんと気付きなさいよ!」という別の問題を突きつけてしまいますから、問題は解決しません。

一方、あなたが依存で彼が自立側だったときに、その不満をぶちまけると「うざいねん。重たいねん」と相手にされず、あっさり切られてしまうことも少なくありません。
やはり問題は解決しないんですね。

つまり、不満を感じて相手にその解決を期待したとしても、それは裏切られることが多いんです。
だから、不満を感じたとき、すなわち、その関係性に問題を発見したとき、「私が主体的に解決する」という意欲が非常に大切になってきます。

それが「与える心を持つ」ということなのです。

●不満の影に隠れている“怒り”

「彼が私の気持ちを理解してくれない」
と不満を感じたとき(問題を見つけたとき)、きっとあなたも彼の気持ちを理解してあげられないところがどこかにあるはずです。

時にはそのことであなたが酷く自己嫌悪して、自信を失っている場合もあるでしょうし、すぐには全く心当たりがない場合もあります。

でも、不満を感じているのは“私”。ここが大事なポイントなんですね。
つまり、解決できるのも“私”にかかってくるんです。
もちろん、彼や周りの人、カウンセラーなどにサポートを受けることは可能ですし、大切なことです。
一人で頑張れ!というわけではありません。

でも、私が主体的になることがとても大切なんですね。

ところが「私の気持ちを理解してもらえない」という不満を感じたとき、周りから「じゃあ、あなたが彼を理解してあげたら?」なんて言われたら、めっちゃむかつくものです(それが普通ですよ)。

なぜかというと、不満という気持ちは必ず「怒り」を伴うからです。
(だから「あんたがなんとかしなさいよ!」という気持ちになりやすいんです)
そこを「そう言う自分がなんとかしなさい」と言われたら、その怒りも噴出してしまいます。

でも、実はそれがとても大切な心のサインでもあるんです。

怒りを持つということはとてもエネルギーがいることですよね。
できることならば怒ることは避けたいものです。
でも、そんな中でも怒りを感じるということは、それくらい相手が「どうでも良くない相手」、つまり、自分にとって意味のある、大切な存在である証拠なんですね。
だから、不満を感じる相手というのは、あなたにとってとても価値ある存在なんです。
そのことを改めて見つめてみましょう。
その分だけ、あなたの心に少しだけ謙虚さがやってくるかもしれません。

そして、もう一つは、その怒りを問題解決のための“やる気”に変えることができるんです。
それは関係性をより良くしようという目標が必要ですし、自分自身の器を広げ、成長したい、という意識が必要です。

子ども時代は“不満の時代”と言っても過言ではありません。
親に対して「~してくれない」と感じることは100や200ではきかないでしょう。
だからこそ、子どもは早く大人になって自分でしたいことができるように頑張るんですね。
不満を感じたまま親に何とかしてもらおうと思っていたら、今頃あなたはどうなっていたでしょうか?

もう少し視野を広げれば、社会の進歩も不満から生まれてくるものが多いんですね。
不満を解決するために発明されたり、改良を加えられる製品ばかりと言ってもいいかもしれません。

そんな風に“不満”という気持ちは新しい一歩を踏み出させてくれる大切な気持ちでもあります。
それは夫婦や恋人、友人、家族、職場の人間関係といった単位でも同じです。
二人の関係性をより良くするために、その不満や怒りをやる気に変えていきましょう。

●与える心とは?

不満を感じたら、それを相手に与えられる自分を目指してみましょう。
「自分の気持ちを理解してもらえない」と感じたら、まずは「自分が相手の気持ちを理解してあげよう」と思ってみてください。

「少しも協力的じゃない」と感じたら、自分が相手に協力できることはないか?を探してみましょう。

そうして、欲しいもの、不満に感じることを相手に与えてみるんです。

最初は怒りも感じますし、なかなか動きづらいものです。
それは無理ないことですし、与えようと思っても「無理!」「いやっ!」「わかんない!」といった心の抵抗がたくさん出てきます。
だから周りのサポートもすごく大事ですね。

でも、そうして相手に与えていくと、今度は相手が自然とその欲しかったものをあなたに与えてくれるようになります。

逆の立場だったらどうでしょう?
例えば、あなたが彼からたくさん心温まる言葉をかけてもらってすごく嬉しかったとします。
そしたら、あなたは自然と彼に感謝や愛情の言葉をかけてあげたくなりませんか?

与えるというのは相手を喜ばせてあげることです。
元は不満でも、それをやる気のエネルギーに変え、関係性や自分を発展させるために相手に与えていくと、それが自分に返ってくるようになるんですね。

より良い関係性を築くために「不満」は欠かせないサインですし、それを生かしていく心積もりを持ってみましょう。

※ ※ ※
ただし、不満を押さえ込み過ぎて本当に余裕がないときには怒りでも何でも解放してあげることが最優先です。
そこで「いい子」になって与えようとしても、それは与えることではなく「犠牲」になってしまいます。
まずは、いっぱいいっぱいだと感じたら、友達でもカウンセラーでもいいので、心を解放し、少しでも余裕を作ってあげましょう。
そうすると「与える」こともできるようになっていきます。

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