いい人の心理~いい子ちゃん、いい人ってしんどいの?~

どうして“いい人”になってしまうのでしょう?本当に「いい人は損」なのでしょうか?

「いい人は損をする」とか「いい子ちゃんはしんどい」なんて言葉をよく耳にしますね。
カウンセリングでもよく扱うテーマなのに不思議と今まで扱ってない題材です。

いい人はいつも遠慮してしまうので得よりも損が多いように見えたり、あるいは人にうまく利用されてしまったりすることもあるでしょう。
言いたいことが言えなかったりして辛い気持ちも我慢してしまうので、いつも心にはストレスを抱え込んでしまうこともあります。
それが病気を作ることもありますから「いい人」は卒業したいですね。

ところで「いい人」を卒業するとどうなると思います?
「悪い人」になる・・・と思った方、ざんね~ん!

不正解です(笑)

いい人を手放すと、たいていは“普通に”いい人になります。
無理のない優しさや謙虚さを持ち、人の気持ちがよく分かる人になります。
だから、周りの人に慕われ、愛されるようになるんです。

信じられないかもしれませんが・・・。

つまり「いい人は損をする」という「いい人」というのは、過剰に自分を押さえ込んでしまっている人のことを指しているのかもしれませんね。

いい人チェック!

それではまずはあなたのいい人チェックをしてみましょう!

・自分の意見をいえない、わからない
・自分の気持ちがわからない
・自分よりも誰かを優先させてしまう、自分を粗末にしてしまう
・頑張りすぎてしまう
・自分を認めて上げられない
・自己評価が低い
・「うん。いいよ」が口癖
・自分に自信がない
・我慢していることが多い
・思春期に反抗期がなかった

当てはまる人はほとんど全部当てはまり、
当てはまらない方はほとんど当てはまらない、
そんな傾向になるのかもしれません。

いい子ちゃんの成長プロセス

いい人の多くは幼い頃はいい子ちゃんをしていました。
長男・長女の方に多いパターンでもありますね。

というのも両親から一番影響を受けやすいのが長男・長女だからです。
弟や妹達は、そんなお兄ちゃん、お姉ちゃんを見ながら育っていくので、むしろ「要領がいい」育ち方をします。

でも、長男だからいい子ちゃんで、次女だからそうじゃない・・・とは言えないのが現実です。
それは上のいい人チェックを試されてみると分かると思いますが、実はこれ、ほとんどの人が持つ悩みでもあるんです。

日本では長らく「謙虚さの美徳」というのがありました。
「武士は食わねど高楊枝」なんて言葉もありました。

つまりは控え目であること、我慢強いことが、大人の必須科目のように捉えられてきたのですから。

また、子育ての中では親が過剰に子どもに接しすぎる(母子癒着など)ことも、いい子ちゃんを作る要因になりますね。
自主性よりも「お母ちゃんの言うことを聞いていればいいの!」という部分が重んじられることになりますものね。

自分の意志が持てない

つまりは、自分の意志よりも親の意志が優先されてしまうようになると、子どもは自分の気持ちを表現することが苦手になってしまいます。

例えば、AとBの二つの道があると思ってみて下さい。
(イメージしにくければAとBを「りんご」と「プリン」に置き換えてみて下さい)

自分は本当はBに行きたいと思ったとします。
でも、おかあちゃんが「Aにしなさい」と言ったとしたら、子どもは嫌々ながらAを選ぶことになります。
「Bがいいの~!」って叫んでも「ダメっ!お母さんの言うことききなさい!」なんて風になってしまうこともありますね。

もちろん、躾や教育の上では、その態度も大切ですが、例えばその理由の説明もなくAを押し付けてしまったとしたら、子どもとしてはBが欲しい気持ちの行き場がなくなってしまうわけです。

そうすると次の機会に「Bが欲しい」と思っても、お母さんの意向によって決められてしまうわけですから、「Bが欲しい」と思うこと自体が子どもにとっては苦痛になってしまいます。
そうすると、自分が何が欲しいか?よりも、お母さんがどっちにすると喜ぶのか?とか、お母さんはどっちにするんだろう?とか、お母さんの顔色ばかりを伺ってしまうようになるんですよね。

そして、自分の意志を持つことができなくなってしまうんです。

そうして、自分の気持ちを我慢することや、人の顔色伺うことを学んでいきます。
一方で、人の気持ちを考えることは出来るようになっていくのですが、その一方で常に遠慮をしているようになりますし、自分の意志を通せない分だけ自分に自信がもてなくなってしまうんですね。

それが無価値感となり、自分が何なのか?自分には何もできないんじゃないか?という不安にいつも苛まれます。
そして、自分を認めてもらうために過剰に頑張って犠牲をしてしまうことも多いんじゃないでしょうか。

そうして思春期がやってくるんです。

思春期から大人へ

その思春期ごろに反抗できた場合はそれまで溜め込んできたものを一気に放出するようになるので、少々荒れることはあれど、長い目で見たときにはOKなことも少なくありません。
ただ、抑圧がきつすぎると大きな事件を起こしたりもするんですけどね。

でも、今まで長年培ってきた抑圧パターンがそのまま残ると、反抗期そのものがなくなってしまうんですね。
自立を始めて反抗したい気持ちは出てきますから、多少口を利かなかったり、ちょっと反抗的な態度を取ってみたりすることはあっても、ゲリラ的な態度になってしまってなかなか感情は解放されません。

それよりも中学、高校と社会性が広がるに連れて、気を使う相手ばかりが増えていくわけですから、一層ストレスを溜め込んでしまうようになるんです。

そうすると、大人になるに連れて自由を手に入れれば入れるほど「人生まるごと反抗期」のような反逆児になってしまうんですね。

そこでも自由を感じられないとしたら、もう世間から引きこもってしまうしか手はなくなるのかもしれません。

良い人と悪い人~バランスの法則~

そんな良い人に恋人が出来てパートナーシップを学ぶようになると、今度はそのレベルでも新たな問題が出てきます。
それは「lec.110 バランスの法則」で紹介したように一方が「良い人」役を取ってしまうと、もう一方は「悪い子ちゃん」になってしまうんですね。
献身的な妻をやっているのに、旦那は浮気ばっかり・・・なんて風にね。

また、それは家族の中のバランスとしても出てきます。
家族のことを大切にするいい夫をしているのに、息子は金属バットを振り回してる・・・なんて風にね。

そんな風に関係性の中で出てくるだけでなく、自分自身の内面的にも良い人の部分と、悪い子ちゃんの部分が同居する場合も出てきますね。

優しくていい人なのに、裏ではけっこう遊びまわってる人。
仕事もきちんとして優良社員なのに、カードローンの残高が7桁を越える人。
皆のことを気遣うお父さんなのに、アルコールに依存してしまう、等々。

いい人の才能とは?

じゃあ、「いい人」をやっててもロクなことがないじゃないか!って多くの方は思われるかもしれません。
でも「それならば、もうこんな生き方辞めて暴れまくってやる!」なんて思わなくてもいいんです。
それができれば苦労しないって面もあるかもしれませんが。

実はいい人がいい人の仮面を取ると、普通にいい人になるんです。

「は!?」と思われるかもしれません。

つまりはいい人が苦しいのは、100%で十分なのに、150%、200%やってしまおうとするところにあります。
100の優しさを持っている人が、150の優しさを表現しようとしたらしんどいでしょう?
そのプラス50、100の部分がストレスになり、抑圧になるんです。

だから、いい人150%の人が、50%手放せたら100%いい人になるだけなんです。
でも、その50を手放すのが難しく感じてしまうんですよね。
無価値感が影響しているのですが、150やってようやく認めてもらっていると思っていたら、50も手放したら皆から認められなくなってしまうんじゃないか?って怖れを強く持ってしまうからなんです。

これは親から期待されることが多かったり、あるいは、犠牲をしてしまうパターンをもっていると、より確実にこの罠にはまってしまいます。

でも、実際は元々優しいからこそ、150や200の優しさを出そうとするわけですから、そんなあなたは本当に優しい人なんです。

そして、そんな頑張り屋さんなわけですから、人からの信頼を得ることは実はそう難しいことではないはずです。
普通にしていれば、自然と人から慕われ、信頼されるようになるんです。

また、人の気持ちがよく分かりますから、友達を家に呼んでホームパーティを開いたり、はたまた何かイベントを企画したりすると、とても上手にホスト役/ホステス役が勤められたりします。
(もっともそこで過剰に頑張りすぎると、もう二度とそんなことはしたくなくなるんですけどね)

その一方で、人の気持ちが分かりすぎて苦しくなることだってあると思うんですが、それとて過剰に関わろうとしてしまうところなのかもしれません。

いい子ちゃんを手放す

そんなあなたがそのいい子ちゃんの部分を手放そうとすると、とってもたくさんのエゴの声を聞くことができます。
「そんなことしたら、もう二度と皆に相手にされなくなってしまう」
「自分がますます怠け者になってしまう」
「もっと頑張らなきゃ皆に認めてもらえないよ」
「いい子ちゃんを手放したら、絶対私は悪い子になっちゃうよ」などなど。

だから、なかなかこの部分を手放すのは難しく感じてしまうんですよね。

カウンセリングの中ではご両親との関係を中心に見ていくことが多いのですが、普段の意識付けのために、そういう方にはこんな宿題・提案をよくします。

「思い切って悪い子ちゃんになってみましょう」

「え?」と思われるかもしれませんが、いい人にとっては悪い子ちゃんになるくらいがちょうど良い加減なんです。

実際、ちょっと悪いことしてみようかな~と思い巡らせて見て下さい。
どんな気持ちになりますか?
どんなアイデアが浮かびますか?

人にもよりますが、実践してみると、案外、スッキリ&楽しい気分になることが多いようです。
勇気は要りますが、ぜひチャレンジされてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いたカウンセラー

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