きょうだいの心理学(1)~きょうだいがもたらす心理的影響~

今まであまり扱ってこなかった「きょうだい」についてスポットを当てたいと思います。
心理学では親子関係に注目しがちなのですが、きょうだいも私たちの人間関係に及ぼす影響は小さくないようです。

しかし、意外に盲点になりやすく、それ故に今の問題を解決するキーパーソンになることも多いのです。
例えば、パートナーシップでは、パートナーとの距離ときょうだいの心理的距離が近くなることもあり、見えないところで嫉妬や競争などを生み出していることもあります。

また、横のつながりに大きな影響を及ぼしているので、仲間や同僚から近所付き合いとの関係性にヒントを与えてくれる存在でもあるんですね。

今回はそんなきょうだいに注目し、まずは、人間関係全般に与える影響を紹介し、その後、一人っ子、二人きょうだい、三人きょうだい、そして、それ以上の場合に分けて、それぞれの特徴を紹介していきます。
皆さんの人間関係に、きょうだいが与える影響を少しでも理解していただければ幸いです。

 

今回は今まで扱ってこなかったテーマ、「きょうだい」にスポットを当てたいと思います。

すなわち、兄弟姉妹。一般的には「兄弟」と書かれますが、姉妹も含める、という意味で、この講座中は「きょうだい」と表記させていただきたいと思います。

さて、カウンセリングをしていて、恋愛や仕事、人間関係の問題にも、実はきょうだいとの関係が影響していることも少なくないことが分かってきました。

というのも、きょうだいというのは「横のつながり」のシンボルで(親子の場合は「縦の関係」)、同級生、同期、近い世代、近所づきあい、友人関係、仲間、ライバル(競争)、年の近い恋人、先輩後輩等の関係に少なくない影響を与えているからです。

そこで今回は4回シリーズにわたって、きょうだいについてカウンセリングの現場から学んだことをお届けしたいと思います。

もちろん、例えば、二人きょうだいといっても、兄弟、姉妹、姉弟、兄妹の4パターンの他に、双子の場合、お父さんやお母さんが違う場合などもあり、それぞれが異なる傾向を示しているのですが、今回は大きな傾向を捉えていただくために、性別の違い等については一部を除いては触れておりません。

どうぞ、ご了承下さい。

きょうだいの心理的な位置

心理学的には「親子関係」というのを非常に重視しています。
事実、私たちがもっとも影響を受けるのが親からで、きょうだいからの影響はその次くらいに位置します。

ただ、きょうだいというのは「親について同じ目線で話ができる相手」ですよね。
兄と弟ではその視点や受ける影響は異なりますが、同じ親を持つもの同士の共通点もありますし、また、いわゆる“共同戦線を張るもの同士”の心理的な連携も生まれます。

だから、親ほどには近くはないが、他人よりもずっと近い存在、ということで、扱う問題によってはキーパーソンになってくることも少なくないんです。

例えば、「母親との問題を癒していくうちに、長年絶縁状態にあった妹と、親友みたいに仲直りした」とか「ずっと自分が守っていこうと思っていた障害者の弟に、逆に助けを求めることで、人生が一気にものすごく楽になった」とか「恋愛がうまく行かなくて心を掘り下げていったら、兄との関係が問題だと気付き、適切な距離を取ることで、恋愛がうまくいくようになった」とか、そんな事例もたくさんあります。

特に「夫婦」や「長年付き合っている恋人」との関係性を見ていく場合、パートナーときょうだいの位置がかぶってきている場合もあるんですね。
だから、「妻と妹がライバル的な心理状態にある」とか「夫が兄に嫉妬している」といった問題が出てきたりするんですね。

ところが、案外、すぐ横にいるものだからきょうだいの存在は盲点になりやすいのが特徴です。心理学やカウンセリングでも、親子問題にまず光を当てるので、なおさら影になりやすいのでしょう。
だから、「まさか、夫婦問題の不仲に、兄との関係が絡んでるなんて・・・」との驚きをもって迎え入れられることもあるくらいです。

そのため、親子だけでは説明しきれない場合、きょうだいとの関係を見つめてみると、ヒントが得られることも少なくないようです。

盲点になりやすいきょうだいの関係性。

例えば、とても仲の良い姉と弟がいたとしましょう。
二人はとても仲良しで、大人になった今も時折一緒に買い物や食事にに出かけたりします。
姉は仕事や趣味について弟に遠慮なく話せるし、一方の弟もなんだかんだ姉を頼っていて、一番の相談相手だと思ってるとします。

でも、それが姉ではなく母だとしたら?弟ではなく父だとしたら?
ちょっとあれ?と思ったりしませんか?

え?この人、実はマザコン?みたいな。

母と息子が仲良くすることが変だ、と言いたいわけではありません。
しかし、姉と弟の関係は、親子関係に比べて盲点になりやすかったりするんです。

それはきょうだいというのは心理的に見ると、親に比べてちょっと距離のある関係だからでしょう。

距離感だけ見れば、きょうだいの距離というのは、親よりも遠く、友人よりも近い、という感じです。

だとすると、「恋人」と距離感が競ることも少なくないんですね。
(仲違いしたきょうだい、全然連絡を取っていないきょうだい、については、その限りではありません)

恋人の立場からすれば、きょうだいの絆にはちょっと入り難いし、彼に「姉貴と仲がよくて何が悪いわけ?」と突っぱねられたら、入る隙間もありません。

そうすると、この弟君と付き合う彼女は、みんな、理不尽なくらいに彼のお姉さんに嫉妬し、そして、自滅してしまうことも少なくないのかもしれません。

そして、彼はこういう相談をカウンセラーに問いかけるんです。
「実は僕、恋愛が全然長続きしなくて・・・。どうしたらいいんでしょうか?」と。

こうしたシスコン、男女が逆になったブラコンと呼ばれるケースでは、自分ではほとんど自覚していないところで、「彼氏よりも兄貴」「彼女よりも姉貴」を選択してしまうところにあります。

「マザコン」というのは“忌むべきもの”みたいな風潮がありますよね。
だから、本人も自制が利きます。
しかし、きょうだいというのは、そういう意味では盲点になってしまうことがあるんですね。

だから、ファザコンよりもブラコン、マザコンよりもシスコンの方が問題の影に隠れてしまってることもあるかもしれません。

きょうだいの仲の良い悪いがもたらす影響

悪いよりはいいほうがもちろん、人間関係は良好になります。
先ほど紹介したように、兄弟と言うのは「親」に対して共同戦線を張る同志のような位置付けにありますから、同志の中に諍いがあるとすれば、チームワークが乱れます。

だから、きょうだいの中で孤立してた人は、社会の中でも一匹狼になりやすいですし、きょうだいがケンカばかりしていた人は、仲間に対しても好戦的な性格になりやすいようです。

逆に先ほどの例でも触れてますが、仲が良すぎると、付き合いが長い分だけ、“親友以上”の関係になってしまい、「友だちよりも分かり合える」メリットがある一方で、他人が入る隙間がないため結婚が遠のいたり、「妹以外に友だちと言える人がいない」という孤立感を強めたりもします。

特にきょうだいの中に許せない相手がいると、ほかの人間関係でもトラブルを抱えやすいように思います。
これは親子関係でも同じですが、家族という、とても距離の近い中で起こる問題は、周りに投影されやすいんですね。
しかし、親子と違ってきょうだいの場合、年が近い分だけ、「こじれた友だちとはそれっきりの関係」になってしまうことも少なくありません。
つまり、関係改善へのモチベーションが親子よりも上がり難いように思えるんですね。

とはいえ、順調に行けば、一緒に親を見送る関係でもあります。
できれば、雪解けを迎えてほしい、そんな思いでカウンセリングをしているのです。

>>>『きょうだいの心理学(2)~一人っ子~』につづく

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