状況が変わらなくても、問題は解決するかもしれない

私たちは、なにか問題に直面した時に、その問題を解決しようとすることが多いですね。例えば、病気にかかってしまったらその病気を治したいと思いますし、パートナーが欲しいけれど今はいないとしたら、パートナーを見つけたいと思います。
また、就職活動をしているけれど、なかなか就職先が見つからないという場合は、就職することが問題解決になるのかもしれませんし、ご主人が浮気しているという奥様がいたとしたら、ご主人を取り戻すことが問題解決になるのかもしれません。
もちろん、これらのように、ある明確な希望が実現して問題が解決するということもありますし、それはとても素晴らしいことだと思います。
でも、私は、状況が何も変わらなくても、問題が解決することがあるのではないかと思っています。
それを、私自身の体験を踏まえてお伝えしたいと思います。
私は、23歳のときに、とても重いインフルエンザにかかってしまいました。
一週間以上40度近い熱を出し続け、熱が下がった後も、ふらつき感がずっと残っていました。
動いている電車の中で、例えば車両を移動しようと思って歩くと、普通に歩くのと違って、どうしてもフラフラしてしまいますよね。私は、極端に言うと、動いている電車に乗りながら生活しているような感覚を、いつも感じてしまうようになったのです。
もちろん、私は、この症状を治したい、完治させたいと思って病院に行きました。
めまいかと思って調べましたが、めまいではありませんでした。
そして、医師から、「そういう病気はありません」と言われてしまいました。
病院を変えて何度も調べましたが、結果は同じでした。
私は、医師に、「全身のあらゆるところが心臓の鼓動に合わせてピクピクって動くんです。
それが原因で、結果的に歩くとふらつき感があるんです。
」と訴えました。
そう訴えたら、ある病院で、心療内科を紹介されたこともありました。
そのときは、本当に悔しかったのと共に、もうダメだ、というような絶望感すら感じました。
私は今43歳ですが、実は、状況は何も変わっていないんです。
つまり、20年間も状況は変わらないのです。
しかし、私は、20年間苦しみ続けたわけではありません。20年間この症状と共に歩んできたというような感覚です。
この症状は長年のお友達というような感じです。
症状はなくならなくても、発症して数年たった頃には、この症状のことがほとんど気にならなくなっていました。
私が学んだカウンセリングスクールでは、数多くの受講生の前で、自分が解決したい問題を先生に相談する場合があります。
あるとき、私がみんなの前で話すことになったとき、私は、思い切って、この症状について先生に相談しました。
私自身は症状についてほとんど気にしていないわけですが、さすがに、こんな問題をみんなに聞いてもらったら、私のことを変な目で見る人もいるかもしれないと思いました。
しかし、私が感じる限りにおいて、私の症状の話しを聞いて、私に対する態度を変えた人は全くいませんでした。
もともと仲のいい友達に、「あんな話しをしてしまって、やっぱりイメージよくないよね」と話したら、「なに言ってんの、そんなこと思ってるの本人だけだよ!」と、むしろ怒られてしまいました。
私がこの症状の話しをしたときに、私にはパートナーがいなかったんですが、その2か月後に、縁あって、ある女性をお付き合いをはじめました。
たまたまなんですが、その女性は、私が症状の話しをした時に、ワークショップに受講生として参加していました。
つまり、その場で私の症状の話しを聞いていたのです。
お付き合いを始める時に、私の症状の話しは全く出ませんでした。
相手も気にしていないか、忘れていたのだと思います。
いずれにしても、私の症状について問題視していなかったということだと思います。
また、症状をみんなに話した後には、こんな出来事もありました。
カウンセリングスクールのワークショップでは、講座中に音楽を流すことがあって、あるとき私は、アシスタントとして、その音楽を流すためのメカの担当をしていました。
そのときに、大勢の受講生の前で、ワークショップの先生がこんなことを言ったんです。
「彼は、自律神経失調症で手が震えるんです。
でも、意外とメカの操作できるんですよ」
これを聞いた瞬間は、少し恥ずかしいなと思いました。
でも、すぐにこう思いました。
「ああ、この問題は、既に解決しているんだな」と。
もし私が症状を問題ととらえていて、そんな症状がある自分を責めているとしたら、先生のセリフに対して、「そんなこと言わなくてもいいじゃないですか」と怒っていたかもしれません。しかし、私には、先生に対しての怒りは微塵も浮かびませんでした。
これは、私自身が、症状がある自分をダメだとは思っていないということの証拠なのだと私は思っています。
その後、なぜか先生は、この私の症状の話しを、たまにワークショップ中に大勢の人の前で言うんです。
そして、そのたびに私は、この問題が解決していることを確認できるんですね。なので、先生が症状の話しをするたびに、「先生、本当にありがとうございます。
」と心の中で感謝しています。
私がお伝えしたいポイントは、「症状自体が問題なのではなく、その症状を自分自身がどうとらえているか」ということが重要なのかもしれないということです。
症状があることが問題なのではなくて、それをダメなものとしてしまって、自己攻撃していることが問題なのかもしれませんね。
私は、症状が改善しなくても、問題を解決することが出来ました。
この私の経験が、みなさんの参考になったとしたら、こんなにうれしいことはないですね。それこそ、「症状さん、ずっとお友達でいてくれて、ありがとう」という感じですね。
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この記事を書いたカウンセラー