夫をアイドルにする

夫をアイドルに、というのは、40代も半ばを過ぎたわが夫をシニアアイドルとして今さら売り出そうと目論んでいる妻の話、
・・ではございません。
わが家の中で、夫をアイドルに、という非常にささやかなお話です。
うちは、夫、妻である私、大学生と高校生の子供ふたりの4人家族です。
結婚して22年、夫と出会ったのが大学生の頃ですから、もう相当長い付き合いになります。
思うのですが、家の中でお父さんは、家族のために一生懸命働いているかも知れないのに、お母さんと子供とのがっちりしたつながりに比べて、うっかりすると仲間はずれ的な、蚊帳(かや)の外的な存在になりがちだと思いませんか?
私は学生の頃から曾野綾子さんのエッセイが好きでよく読んでいます。
18歳の頃に読んだエッセイに、次のような文章があります。
「愚痴っぽくない夫でも、外側(社会)から受けた傷はかなり不愉快なものであろう。多くの家庭の夫は毎日満身創痍で帰ってくるのだ。彼らを働かせてはいけないというのではない。
(中略)妻は夫の傷つき方をよく自覚していて、疲れている夫に対して看護婦の役目こそするべきなのである。正直なところ、仕事というものは家庭にだけいる妻が想像できないほど厳しいものだということを私は良く知っている」
『誰のために愛するか』曾野綾子著
18そこそこの心には、この文章は衝撃的というか、しかし何故か素直に理解できるところがありました。
(このエッセイは昭和50年代に書かれたものなので、いまの時代から見ると多少古い部分もあるかと思います。
いまは女性も働いている人が多いですし、男性だけの話ではないでしょう。そして現代は家族の形態も様々ですから、このコラムはあくまで“ある主婦のひとりごと”として読んでくださると有り難いです。

若い頃に読んだ本の影響というものは根強いのか、いまでも私は「その通りである」とどこかで思っています。
それは私が実際にOLとして会社で働いていた時に感じたことでもあるのです。
私は結婚前に3年半、結婚してからも少しの間OLとして会社勤めをしていました。
結婚前は正社員としてある企業に勤めており、結婚退職した後は派遣社員として、いくつかの会社で働きました。
会社によって雰囲気もそれぞれ違うのですが、最初に正社員で勤めた会社では、男性社員が苦労する様子を様々な場面で見てきたように感じます。
例えば、飲み会でも上司にすごく気を遣っている男性、とか、上司に別室に呼び出されて怒鳴られている男性、とか。
もしかすると、そんなことは些細なことかもしれないですね、もっともっと本質的な部分で男性社会の厳しさを感じていたのかもしれません。女性だって大変と言えば大変でしたが、当時は、女性は結婚退職が多い時代だったので「いざとなったら女の人は家庭に入ったり仕事を変えるなど方向転換しやすいけれど、男性はそうそう簡単にできないもの。男の人ってやはり大変なんだ」と思いました。
心理学に則って考えると「仕事は大変な苦労を伴うもの」とか「社会は厳しい」と信じてしまうことは決して良いことではないのですが、当時そう感じたことは事実です。
そのような経緯もあって、私は、結婚したら温かくてくつろげる家庭をつくろうと心に誓っていました。
では、実際に結婚してどうだったかというと、他人だったふたりが一緒に生活していくわけですから、残念ながら初めのうちは理想とはかけ離れた生活だったように思います。
結婚当初は「こんな人だったの!?」と思ったこともありました。
きっと夫も思ったことでしょう。それでも、どうにかこうにかお互いに歩み寄り、振り返ってみれば22年もの月日が経ち、今に至るわけです。
この22年の中にはたくさんの出来事が詰まっています。
1人目の子供が生まれるまで、私はパワフルな行動派でした。
子供がお腹にいる間はマタニティスイミングに通い、そこで知り合ったお母さんたちとは子供が生まれてからもお付き合いしたり、他にも良い仲間をたくさん作ることにとても積極的でした。
そして子供がお腹にいる期間は、ゆったりと時間が流れる、いま思い出してもとても幸せな時でした。
子供が生まれてきてくれて、可愛くて可愛くて、可愛いあまり、私はたぶん子供のために完璧なお母さんを目指したのでしょう。
まさかの産後うつになりました。
しばらく私の体調が悪く、夫は多忙な仕事に育児の手伝いまで加わり、さぞかし大変だったと思います。
だいぶ回復した後、2人目の子供を授かり、産まれてからは、もう毎日がドタバタと過ぎて行きました。
もともとそれほど手際がよくないので、2人の子供の育児は、可愛くて幸せだなと思う瞬間もありましたが、子供の世話と家事にてんてこまい、子供を通じての人間関係にも神経を遣いすぎて、くたくたに疲れていました。
ですから、仕事から帰ってきた夫に対して、とても不機嫌に接したりしていました。
「私は昼間すごく大変だったのよ、わかってよ」という気持ちが、素直じゃない形で表現されていたのだと思います。
下の子供が小学校に上がってだいぶ楽になり、おかげさまで、中学生になった頃には本当に自由な時間が増えました。
やっとその頃から、私は夫との関係を大事にしたいと感じ始めてきました。
カウンセリングの勉強を始めたのもこの頃で、そこでパートナーシップの大切さをとことん学びました。
カウンセラーになるためには、自らクライアントとなりカウンセリングを受けるのですが、「だんなさんを男性として意識してみましょう」という宿題を出されたこともありました。
初めは正直なところ「え~!いまさら・・・」という感じでした。
どんな夫婦も、いま別れずに一緒にいるということは、心の奥底で、お互いをかけがえのない存在として愛おしく思っているからだと思います。
私から夫へのふつふつとした愛情に気付いていくと、家族のために雨の日も風の日も真面目に働いてくれた夫に感謝の気持ちが湧いてくると同時に、私から夫にこれから出来ることは何かな…と改めて考え始めました。
その時に思いついたことが、家の中をすごくあったかくしよう、みんながお父さんのこと大好きな雰囲気を作っていこう!ということです。
家族に絶対的な影響力のあるお母さん(わたしデス)が、「夫のことを大好き」だったら、子供たちもお父さんのことが大好きになるはず。そういう家庭は夫にとっても居心地が良いのではないかと思ったのです。
その想いが功を奏して、気がつくと子供と私との間で「夫の話題」がものすごく多くなっていきました。
といっても、ほめてほめて褒めまくっているわけではありません。大体生意気ざかりの子供たちにそれを求めるのは酷というものです。
私は、家族の中で言われる他愛のない悪口ほど「犬も食わない」ものはないと思うのですが・・・まさに好意の裏返し、親密感の表れ、そう思いませんか?
ですから、夫をアイドルにといっても、子供が本人のモノマネをしたり、要はイジッている状態、かまってる状態、一言で言うと「いない間も忘れないよ」という感覚です。
根底には愛情があるからこその、すべて本人につつぬけの悪口です。
もちろん、誰かが悪く言うと、必ず誰かがフォローするという抜群のコンビネーションもできてきたこの頃です。
先日嬉しいことがありました。
夜遅く、娘と私の会話です。
娘「お母さん、お父さんはもう寝たの?」
私「もう寝たよ」
娘「さっきネ、
  お父さんがテーブルでチョコレートのお菓子を食べてる姿を見たら、
  なんか可愛かった。
  だからお母さん、お父さんのこと大事にしてあげてね」
私「うん、大丈夫だよ。大事にしてるから^^」
普段は、照れもあって優しい言葉を夫にかけることなどしない娘から、この言葉・・・!
その日は夫の寝顔を見ながら、ちょっとした幸福感で眠りにつきました。
夫の仕事のことは、私には事細かにはわかりません。
それでも、仕事の中では批判されることや認められないこともあるでしょうしそういう素振りは見せなくても、悲しい気持ちで帰ってくる日だってあるのではと思います。
だから、私はいつでも味方、パパかっこいいよ!と応援できる最高の友でありたいです。
長い年月を共に過ごして得ることのできた、かけがえのない親友です。
そんな夫をいたわりつつ、感謝しつつ、これからも夫アイドル大作戦で行こうと思う妻なのでした。
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2件のコメント

  1. うえのさん、先ほどはありがとうございました。
    うえのさんのコラムも、とても興味深く読ませていただきました。
    曾野綾子さんの本に出てくるお話は、他で聴いたことがありますが、若い頃はよくわかりませんでしたが、この年代になる、よく理解できますね。

  2. とってもステキなご家族ですね!
    理想だなぁってほっこりしました♪