●姑

「どれほど怖いものなんだろう?嫁と姑の関係って・・・」
結婚する前は、そう思ってました。
このコラムを書いている、つい昨日のことです。
だんなの実家から電話がかかってきました。
「節分のまめと、おでん取りにおいで、今からすぐやで」
あらら、呼び出されてしまったわ、と思いながらも、おでんにそそられて実家に向かいました。
なぜかだんなの母親は、よくこうして私を家に呼びます。
そして、定年して閑を持て余している父親と、せっせと忙しそうによく出かける母親と、
ほんの少しの時間を過ごすんです。
大阪は河内、「ブラボー!!」といってしまいたくなるほどの、”河内のおばはん”。
要は、母親はよくしゃべるんです。
もうそれはそれは、マシンガンのように・・・
それにもれなくついてくるのが、無口な親父、なはずなんですが、
この夫婦はちょっと違います。
父親が反撃に出るんです。
この日も、ちょっと腰を落ち着けたかと思うと、始まりました。
「あたしゃ、聖徳太子か・・・」と思うことが、よくあります。
二人同時にしゃべりかけてくるんです。
そのことをわきまえているので、私はあえて父親に話を振ります。
父親の方がしゃべるのが遅くて、時間がかかるからです。
豆を数えて、半紙に包んでと言われ、おしゃべりしながら、数えながら、数えながら・・・・
やっぱり二人同時にしゃべられると、はかどりません。
そうこうしているうちに、母親が父親に怒り出しました。
しょう油漬に大根を勝手に入れたからです。
まるで自分の聖域を侵されたように、攻撃しはじめます。
こんなとき、”河内のおばはん”ほど恐いものはありません。
が、これも慣れなのか、まるで漫才のようにおもしろいんです。
でも、ふたりはあくまで真剣です。
息をつく間もなく、文句を言い続ける母親に、しびれを切らせて父親が反撃開始です。
母親が中途半端じゃないので、父親も中途半端ではありません。
このやりとりを始めて見たときは、とても不思議でした。
「夫婦ケンカは犬も食わない」のは知っていましたが、このふたりには、
その場に私がいても関係ないようです。
”最後の子供”だと言って、嫁としての私を迎えてくれましたが、本当にそのようです。
でも、もっと不思議なのはトバッチリが飛んでこないことです。
父「オマエは、俺がせっかくつくった大根があるのに、この間安いからいうて買うてきたやろ!」
母「そんなん関係ないねん!!こないに大根ようさん入れたら水出て、カビはえるやろ!!」
父「俺が食うねんから、ええやないか!」
母「せっかくつくったおいしい出汁が台無しや!!これを銭失いいうねん!!」
私「なあ、大根とはちみつ一晩漬けたら、おいしい風邪薬できるの知ってる?」
母「いや、知らんわ。なにそれ、どうやってすんのん?」
父「・・・・・・・」
もう70代も目前にした夫婦が、気持ちいいくらい言い合います。
でも、私にはイヤミのひとつも言った事がないんです。
ま、年の功もあるのかもしれませんが・・・
こうやって両親を見ていると、子供っていうのは、ふたりがブレンドされているんだな〜、
ということが、とってもよくわかります。
そして、ふたりが息子を本当に愛していることも、よく見えるんです。
これだけは、嫁の私の特権かもしれません。
だんなは未だに「B型の女はきらいや」(ちなみに母親も私もB型です・・・)と言いますが、
両親をよく見れば見るほど、そう言ってはいても、やっぱり慕っているのね、ということがわかります。
だって、自分を愛してくれる人を私たちは嫌いにはなれないからです。
「母親の愛情には勝てないわ・・・」
と思ったこともありましたが、勝つ必要なんかどこにもありませんでした。
姑とうまくやっていくコツ、それはその愛情を見つけること、そしてその愛情をしっかりもらうことかもしれません。
そして母が教えてくれたことは、”とことんケンカしなさい”ということなのかな、とふとそんな気がしました。
だんなのお家のおでんは、おいしいんです。
源河 はるみ

この記事を書いたカウンセラー

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