古き良き時代〜豊かさを求めて〜

先日、うちの家でも鏡開きをしました。
鏡開きと言っても、鏡餅の形をした容器の下の紙をはがし、
中に入っている小餅を取り出すだけです(寂)
今年、どこのお家に伺っても本物の鏡餅は見ませんでした。
本当のお餅を飾っておくと、カビてくるし、硬いお餅を割るのも大変だし、
飾り物の方がだんぜん便利ですよね。


僕の子供の頃は、まだ本物のお餅が飾ってありました。
年末に祖父が作ってくれる鏡餅です。
その頃は、商売をしている祖父の家で、毎年餅つきが行われました。
親戚中の餅を作るわけですから、その量は半端なものじゃありません。
朝から晩までただひたすら、米を蒸して、ついて、丸めて・・・
一日がかりの大行事です。親戚中の人が祖父の家に集まって来ます。
僕を含めた孫達は、前の晩からおじいちゃんの家に泊まりに行きます(喜)
朝目が覚めると、家の中は炊き立てのもち米の香りが漂っています。
おばあちゃんが前の晩から米を水に付けて、早朝から蒸しています。
台所の奥くから「蒸せたよ〜」というおばあちゃんの声に、
居間でテレビを見ていた、叔父と祖父が立ちあがります。
第一発目の餅つきです。
石臼に蒸したての米を入れて、まず杵で米を押し潰していきます。
この押し潰す作業が、結構体力がいるのです(笑)
叔父は、杵に全体重を乗せて、米を石臼にこすりつけて潰します。
ある程度米が潰れたら、いよいよつき始めます。
杵で餅をつく叔父と、杵を振り上げてる間に、
石臼の中の餅をひっくり返すおばあちゃん。
声を掛け合って、絶妙のタイミイグです!!
子供の僕は、おばあちゃんの手が杵で叩かれないかと、
ヒヤヒヤして見ていたのを覚えています(笑)
石臼の中のお米は、見る見るうちに艶やかなお餅と変わっていきます。
つき上がると、おじいちゃんが親戚中の鏡餅を作っていきます。
子供の顔ぐらいのお餅を、何度も何度も裏返し、
綺麗な丸い鏡餅を作っていきます。
そしてそのしわくちゃの大きな手で、
優しく優しく撫でて形を整えます。
少し冷めて硬くなるまで撫でていないと、すぐに形が崩れてしまいます。
おじいちゃんは、精魂を込めてゆっくり優しく餅を撫で続けます。
子供たちもはその横で、小さなしわくちゃのお餅を丸めます(笑)
上手く丸められない子供達は、そのうち色んな創作をはじめます。
手のひらでこすりつけて、細長くのばしては・・・「へび!」(笑)
おじいちゃんの小餅に、小さな首をつけて・・・「亀!」(笑)
小餅の上に小さいお餅をのっけて・・・「おっぱい!!」(笑)(笑)(笑)
子供達は大騒ぎで、餅を丸めて遊んでいます。
一日中、カピカピになった手で走り回っています。
一日そんな事を繰り返し、たぶん30臼ぐらいはついていたでしょう。
鏡餅、小餅、あん餅、よもぎ餅、乾かしてオカキを作るための餅と、
ありとあらゆる餅を作るんです(喜)
叔父、伯母、父、母、そしておじいちゃんとおばあちゃん。
皆んなが集まって、わいわいがやがや餅をつく一日。
子供にとって楽しくないわけが無いですよね。
その日のことを思い出すと、今でも楽しさが蘇ります。
僕の心の中に、平和で豊かな一面を思い出させてくれるのです。
子供を持つようになった僕は、
祖母や祖父は一日大変だっただろうなって、今更ながら考えますが、
あの頃の大人たちが、僕たちの心の中に残してくれた「豊かさ」です。
そして今、大人になった僕達は、
次の世代の心に、どんな豊かさを残していけるのだろう?
30年以上経った今も、僕の心を暖めてくれるそんな一日。
大人も子供もひとつのものを一緒になって楽しむ日。
そんな時間の中に、僕達の求めているものがあるのではないでしょうか。
※吉原 直人は2007/6月でカウンセリングサービスを退会しました。

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