ラマダンに誘われた話 ~異文化交流で得られた絆~

実は私、意外と人に驚かれる経歴を持っていたりするのです。

その一つが、北海道にある畜産大学出身だということ。

畜産大学というのは、大学内に動物の飼育舎がたくさんあるんですね。

乳牛、肉牛、ヒツジ、ヤギ、馬、ダチョウ、犬、猫… と、構内にとにかく色んな動物が飼育されています。

北海道ですから、構内の敷地がとにかく広く、野生動物が出没することも珍しくありません。
朝はキタキツネ、昼はエゾリス、夜はモモンガなんかを目撃することは何度もありました。

そんな環境で、私は4年間大学生活を送りました。

もともと野生動物の勉強がしたくて入学したのですが、勉強するにつれ、野生動物の研究は、動物の死と向き合うことが多いことに気づきました。野生動物の生態の研究や、保護の観点からも、死と向き合うのは当然のことだと思います。

ですが、私はただ単に動物が好きだっただけで、傷を負った動物や亡くなった動物と向き合えるほど心は強くありませんでした。自分の考えが甘ったのです。ですから私は路線を変え、乳牛と牧草に関する研究をすることにしました。

私が所属していた研究室には、JICA(国際協力機構)の海外留学生も何人かいました。ガーナ、韓国、ウイグル自治区、中国と国際色豊かだったこともあり、英語をはじめ、色んな国の言語が飛び交う研究室でもありました。

そんな研究室ですので、卒論の研究も大学生と大学院生の留学生と共同で取り組むのです。

私とペアを組んだのは、ガーナ人のラザクさんという男性でした。彼は、母国の酪農技術を進化させたい!という志の高い、陽気でとっても優しい人でした。私はそんなラザクさんが大好きで、兄のように慕っていました。

ある日、いつものように2人で実験しながら話をしていた時に、イスラム教の話題になりました。ラザクさんはイスラム教徒だったのです。私のイスラム教の知識といえば、ラマダンぐらいしかなく、ラマダンの時期の断食ってどんな感じなのかを質問したところ… キラキラした笑顔で、ラザクさんは私にこう言いました。

『 ニシムラサン、 イッショニ ラマダン シマショー? 』

ものすごく軽いノリで、ラマダンに誘われたのです。ラマダンって、そんな軽く誘っていいんだろうか…と若干心配になりましたが(笑)、おそらく、ちょうどラマダンの時期だったこともあって誘いやすかったのでしょう。

私自身も、ノリは軽く、見切り発車で行動するタイプではあるので(笑)、とりあえず数日、ラマダンの断食を体験をしてみることにしました。

ラマダンの期間は、日の出から日没まで飲食禁止なんですね。ですから、お腹が空きすぎて辛いんじゃないかと心配していたのですが、これが意外と苦痛ではなかったのです。そして、意外と心身ともにスッキリした感覚を味わったのです。今考えると、流行りの「プチ断食」のような体験だったのだと思います。

ラマダン体験を終えて、すごく良かったとラザクさんに伝えたところ、彼はすごく喜んでくれました。私もなんだかラマダンを通じて、ラザクさんのことをより深く知れた気がしました。

何より一番良かったのは、私のラマダン体験を機に、お互いの関係性がさらに良くなったことでした。そのおかげで、卒論の研究も大成功に終わりました。

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私たちは日本人同士であっても、「え!そんなことするの!?」とお互いの文化や習慣の違いに驚くことは多々あると思います。特にパートナーシップでは、お互いの違いを日常的に感じてばかりと言っても過言ではないですよね。

トイレの使い方、ご飯の食べ方、部屋の片付け方… など、生活習慣、金銭感覚など、色々違うところはあると思います。

その違いを、自分の習慣や価値観をベースに相手を見ると、相手が間違ってる!というふうに感じることもあるでしょう。でも、「自分と違う国の文化の人」として相手を見ると、違いを受け入れ、お互いの文化を尊重しやすくなるのではないでしょうか。

例えば、私がラザクさんに心を込めて豚の生姜焼きを作ってあげたとします。でも頑なに、生姜焼きを食べようとしないラザクさん。

これを、彼はガーナ人ではあるけど、私と同じ無宗教の人だと“私が勝手に”思い込んでいた場合、「私が一生懸命作った生姜焼きをそんなに拒否するなんてひどい!サイテー!!(怒)」という気持ちになると思います。

ですが、彼がイスラム教徒だと知っていた場合、「そりゃ、しょうがないよね」という気持ちになりますし、そもそも彼が食べれるものを作ってあげようと思いますよね。

お互いの違いを受け入れるというのは、そういうことだと思うのです。

相手の文化に対して、「なんでそうするんだろう?」と興味を持ってコミュニケーションできたり、相手の文化を試してみることで、いろんな発見と共にあなたの視野も広がるのではないでしょうか。そしてその結果、相手のことをより深く知ることができ、お互いの絆が深まるのではないでしょうか。

すべての人間関係は異文化交流だと思います。

どうか色んな人との交流を通して、あなたの人生が色鮮やかなものになりますように。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

にしむら みく

コミュニケーションの問題の改善、クライアントが本来持っている才能を引き出すことを得意とする。心理分析や解説など、説明のわかりやすさには定評がある。明るく親しみやすい雰囲気と、論理的な思考をあわせ持つため、幅広い世代(10代〜70代)に支持され、LGBTの方からの相談も多い。