しくじり先生に学ぶ『聴く』ということ

「しくじり先生 俺みたいになるな!!」(テレビ朝日系)がおもしろいです。
前回のコラムでは「クレイジージャーニー」(TBS系)を題材にお届けしましたが、
今回もまたテレビ番組のお話なのです。
そう書くと、私がテレビ大好き人間じゃないかと思われるかもしれませんが、ふだんはほとんど見ないんですよね。
好きな番組を録画しておいて、あとでまとめて見ています。
もう何年もそのスタイルになっていますね。
さてこの番組、毎回人生を盛大にしくじった有名人が登場して先生役になり、大成功していた過去から、何らかの理由でしくじりをおかして栄光から転がり落ちた時期、さらにその苦難の時期を乗り越えた現在にいたるまでを番組で作った教科書と再現VTRをまじえながら、こと細かに紹介していきます。
そして、そんなしくじった時期に学んだことを教訓として、生徒役のタレントたちと番組を見る私たちに「俺みたいになるな」と伝えてくれるのです。
私がこれまで見たなかで一番印象に残っているのは、映画監督の紀里谷和明さんの回でした。
「思ったことを言い過ぎて日本映画界から嫌われちゃった先生」として登場し、本人いわく「嫌われキリヤ」ができるまでを自虐やダジャレを入れつつ、かなり深刻なエピソードをユーモアも交えてさらけ出していました。
日本映画界への不満や、自分の思いを留めておけずにストレートにしゃべってしまったことで、映画界から嫌われていったことが「しくじった」ポイントだったそうです。
そのおかげで10年間も撮りたい映画を撮ることができずに、ひとりぼっちでいたと話していました。
紀里谷さんは学生時代にアメリカへ渡ってニューヨークで写真家になり、一本のフィルム代にも事欠くような生活をしながら
雑誌の1ページのノーギャラの仕事を膨大なライバルたちと奪いあう、壮絶な競争を乗り越えて写真家として成功したのだそうです。
そんな過酷な世界を生き抜いてきたことから、当時の日本の写真界は紀里谷さんにとっては厳しさや緊張感のない、ぬるい世界にしか感じられなかったと話していました。
PV監督としても成功し、映画界に入ってからも同じようなことを感じていて、やはり不満や思ったことをそのまましゃべったり、映画のしきたりやセオリーに反することをたくさんしていたところ、周りから総スカンをくらってしまったとのことでした。
一人きりになって強烈な孤独感に襲われた時、ようやく「周りの協力があるから、自分の仕事が成立するんだということが分かった」と語っていました。
かつて成功したことでセレブ的なふるまいをしていたことも、今となっては「調子に乗って勘違いしていた」と振り返っていましたが・・・
でも、私の心に残ったのはそういった部分ではなかったんですね。
じつはこの回の放送は2年近く前のことなのですが、今でも印象に残っているエピソードがあるんです。
それは番組の終盤で、紀里谷さんがようやくハリウッド映画を撮れることになったものの、ひとつ問題をクリアしたらまた次の問題が立ちはだかるという困難の連続を迎えていた話の時でした。
製作に5年もの時間を費やしながら、完成の見えないなかで、もう映画そのものを諦めようかと悩んでいた時に、映画に出演していた名優モーガン・フリーマンにこう尋ねたのです。
「もっと良い映画監督になるには、どうしたらいいですか?」
すると、モーガン・フリーマンは一言で答えたそうです。
「Listen(聴きなさい)」
紀里谷さんは「俳優のセリフやスタッフの声をもっと聴きなさい」ということでもあり、「頭でっかちにならずに、もっと全体を感じなさい」ということだろうと解釈していました。
そして「自分が一番できていなかったことだったと気づいた。この言葉で前に進めた。」とも。
私にも、この答えは一つのヒントを示唆したものでもあり、本質を言い表しているものでもあると思えました。
私たちは人生の問題を目の前にしたとき、不安や恐れを感じたとき「何かいい方法はないか?この状況を抜け出すにはどうしたらいいか?」と、ついつい自分の頭の中だけで考え込んでしまうことが多いように思います。
そんな時って、たいてい考えても考えても答えは出なくて、それがまた不安を呼んで、余計に焦ってしまうし、また何とかするために考え込む・・・
という悪循環になりやすいんですよね。
じつはそうなっている時は、不安から逃避するために一人だけで考えようとしているんです。
思考している間は感情を感じなくて済みますし、恐れに向き合わずに逃避するのが目的だから、考えても答えが無いのは当然なのです。
こんな場合、大切なのが「聴く」ことなんですね。
具体的な周りの意見やフィードバックを聴くことでもあるし、自分の心の奥にある本当に願っていること、求めているものは何なのか?本当はどう生きたいのか?その為に心の声を「聴く」ことでもあります。
外側の声を聴く時にも、内側の声を聴くときにも、鍵になるのはみなさんの感情です。
自分という人は、どんなことで幸せを感じて、何をしていると満たされて、誰といると喜びでいっぱいになるのか?
そんな気持ちにフォーカスすることが出来ると、意外なところに答えが見つかることってあるなあと、カウンセリングをしていると感じることは多いですね。
この番組のあとで紀里谷さんのインタビューを読んだのですが、こんなことが語られていました。
「『この人のことが好きだな』とか『みんなと仕事ができて嬉しいな』とか、形のないものが重要だと気づきました。
それは、外よりも内側を豊かにしていくということなんでしょうね。」
この言葉も大切なヒントをくれていると思いました。
しくじりを完璧に避けることは難しいですが、そこから学べること気づけることのできる人でありたいと、毎回この番組を見ながら感じています。
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この記事を書いたカウンセラー

About Author

近藤 あきとし

超自立男性との恋愛・コミュニケーションに関わるお悩み・慢性的な生きづらさの解消などを得意とする。 理論的な“心理分析”と、感覚を使った“心理セラピー”を活用する多面的なサポートが好評。 問題の裏に隠れた「真実の物語」を読み解き「自分の本質を生きる」ことを目指すカウンセリングを提供している。

1件のコメント

  1. たまたまつけたテレビでみて非常に印象に残った回が、まさにこの紀里谷さんの回でした。
    モーガンさんの「聞きなさい」はいまだに心に残っています。
    自分の心の声を聞くのはなんだか難しいのですが、聞こうとするだけでもいくらか違うような気がしています。
    ずいぶん前の自分がみて印象的だったテレビ番組がこんなところで取り上げられていたのがうれしくてコメントさせていただきました。