開けない紙袋たち

先日、「名古屋カウンセラーズフェスタ」というイベントがあり、7名の名古屋のカウンセラーたちが、30分ずつの講演をさせていただいたのですが、そこに参加していた、紙谷まみカウンセラーが講演中に、こんなことを言っていて、なるほどと思いました。
「自分の好きをみつけるために、クローゼットの中を見てみた」
というものです。
私たちって、
「何が好きかわからない」とか
「何がしたいかわからない」って、
悩んでしまうことがあるものですが、よーく考えてみると、「わからない、わからない」と言いつつも、服を買って来て着ているし、お腹が空いたら、何かしら選んで食べているし、ヒマなら、その時間を何かで使っています。
そこには、私なりの何か「好き」が隠れているのではないか、ということでした。
そして、今、一番時間を使っているものについても、着目してみるお話もされていました。
自分の「好き」をみつける、とても丁寧で繊細で、素敵な視点ですよね。
私も、カウンセリングをさせていただいていて、その方が何に一番エネルギーを使っているのかを、いろんな視点で考えることがあります。
例えば、彼との関係がうまくいっていない時、彼のことばかり考えて1日過ごしていることもありますよね。
メールを何度も打ち直しては、保存して、また読み返して、直して・・やっと送ったら送ったで、返事が遅いとか、来ないとか、来たら来たで、そっけないとか、短いとか、関係ないこと送ってきたとか・・エンドレスにぐるぐると彼とのことばかり考えてしまっている。
とにかく、彼のことに、エネルギーを使ってヘトヘトになっていることもあります。
逆に、彼との関係が、めちゃくちゃうまくいっていて、頭の中は、彼のことでいっぱい。彼以外のことは、大変おろそかになりますけど、ごめんなさーい、みたいな状態になることもあるかもしれません。
仕事があまりにも忙しくて、家のことも、パートナーとのことも、友人との約束も、何もかも後回しになってしまっている、なんてこともあるでしょう。短いスパンでそうなることもあれば、逆に長すぎて「忙しい人」という場所に定着してしまい、いろんな人とのつながりや、楽しいことから疎遠になってしまうなんてこともあります。
心が喜ぶことに夢中になっている時間は、心の赴くまま気の済むまで、それをさせてあげられるのが、大人の贅沢ですよね。満たされた心が、また新しい喜びをみつけていくでしょう。
カウンセリングにいらっしゃる方は、切羽詰まった状態という場合も多いものです。
そんな時は、まさに、エネルギーをほとんど全部、今起こっている「問題」に使っています。
私たちのエネルギーは、喜びと共にあるときは、どんどん湧いてきます。
例えば、仕事は大変だけど、すごくうまくいっている時、私たちは非常にエネルギッシュで、やる気に満ちています。
考え方も前向きになりやすく、進むことに抵抗がありません。未来もうまくいくだろうと思えるのですね。
しかし、問題があり、そのことを考えざるを得ない時、日常に使うエネルギーまでも、問題に取られてしまうと、私たちは本当に、疲弊してしまいます。
何をしようとしても、言えば「電池切れ」なのですから、動けない、うまく考えられない、選択も判断もできない、なんてことになります。
ましてや、この問題やこの状況を打破する、良い方法も出てこないのですね。
でも、「カウンセラーに相談してみよう」とふと思いついて、お話しする機会があると、こっち側からだけ見えていた「問題」のかたちとは違う、別の側面について聞けたりします。
物事って、多面体なんですよね。光の当たるところもあれば、影になっているところもあるのです。
そして、もうひとつ、こんなこともあります。
私自身の話なのですが、まだ子どもがいなくて、仕事に趣味にと、忙しくしていた時代のことです。
私は、仕事が終わると、名古屋の地下街やデパートをぶらぶらして帰るのが好きでした。
可愛い小物やアクセサリー、洋服や食器、靴やバッグも見るのも好きでした。
ある時、ふと家にある、開けもしない紙袋に気がついたのです。
それは、私が仕事帰りに買ったものでした。
開けていない紙袋にいったいどんな服が入っているのか、思い出せませんでした。
小さな小袋に入っているアクセサリーが、ネックレスなのかピアスなのかも思い出せないのです。
私は、好きで気に入って買ったつもりでした。
たしかに手に入れるまでは、私の全エネルギーはその素敵な物たちに注がれ、夢中になっていました。
でも買ってしまったら、もう興味がなくなってしまったのでした。
そんな買い物ばかりしていた時代、私は自分のことを、単なる「買い物下手」だと思っていました。
でも、今、振り返るとわかります。
私は、まっすぐ家に帰るのが寂しくていやだったのです。
夫は、ハードワーカー真っ最中で、午前様ばかりでしたし、結婚して住むようになった家の周りには知り合いもいませんでした。
私は、「寂しい」という大問題を抱えていたにもかかわらず、「寂しい」と夫に言えずに、少し気に入ったものを手に入れることに、エネルギーを注いでは、気を逸らしていたのです。
私の買い物の目的は、好きな物を手に入れる、ということではなく、寂しさや夫とのつながりに直面しないということだったようです。
買ってしまうと、どうでもよくなったのは、つかの間ではあるけれど、大本命の問題から「気を逸らす」という目的が達成されてしまったからだったのですね。
今、エネルギーを何に注ぎ込んでいるかは、一番好きなものに夢中な時と、何かから気を逸らすための時があるようです。
でも、じゃあ、気を逸らしているから、ダメじゃないかと思う必要はありません。
なぜなら、今は、時期じゃないからかもしれないからです。
私がそうだったように、その時は、むずかしかったんです。
開けない紙袋を眺めながら、なんでだろう・・と思えたことだけでもよかった。そうあの頃の私に言ってあげられたらいいのだと思います。
そして、時期が来たら、少しずつ取り組めるものです。
プロセスというのは、私にぴったりな速度で進んでいるようですよ。
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この記事を書いたカウンセラー

About Author

池尾 千里

「自分らしく自分の人生を生きることに、もっとこだわってもいい。好きなことをもっとたくさんして、もっと幸せになっていい。」 そんな想いから恋愛・夫婦関係などのパートナーシッップを始め、職場、ママ友などの人間関係、子育てに関する問題など、経験に基づいたカウンセリングを提供している。