~赤・白・黒が織りなした物語~

色には、それぞれが持つイメージがありますね。
今の季節なら、クリスマスカラーとして、赤・緑・金という色を使うだけで何だか心がウキウキしてきます。
そして、情熱の赤、清楚な白、シックな黒。
この取り合わせは、とてもモダンに感じます。
私は昔、ある洋菓子メーカーに勤めていたことがありました。
お菓子会社というと、お菓子を作ったり、販売したりという仕事を思いつかれるかもしれませんが、製造販売の部門ではなくて、本社で事務系の仕事をしていた時のことです。
その洋菓子メーカーは、主に贈答用の商品を扱っていました。
洋菓子に限らず、どんな商品にも言えることですが、お客様に商品をアピールするのにパッケージデザインというのは、とても重要です。
企画を担当している部門では、新製品を出す時やパッケージをリニューアルする時には、イメージを大切にして準備を進めているようでした。
ある時、人気商品のパッケージがリニューアルされたのです。
外箱は深紅に金色をあしらっていて、高級感があります。
フタを開けると、白と黒に個別包装をされた焼き菓子が詰められていて、実にモダンでおしゃれに見えました。
「あらっ、ステキねぇ。これなら誰かにプレゼントしたくなるわね。」
そう思わせるものがありましたので、売れ行きは順調のようでした。
その会社には≪お客様相談室≫という係りがありました。
主にお客様のクレーム処理をするようなところです。
私はその係りと同系列の部署にいたので、そこでの情報を時折垣間見ることがありました。
ある時、お客様から1通のお手紙が届いたのです。
今ならメールで届くことが多いでしょうが、その頃は手紙が主流でした。
達筆なその手紙には、お菓子が人の暮らしの中に溶け込んで、どのような影響を及ぼしているかが書かれていました。
今も明確に覚えているその内容を、要約してお伝えしたいと思います。
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御社のお菓子が好きで、手土産やお茶うけとして愛用しています。
先日、兄が病気で入院して手術を受けることになりました。
私たち身内の者は手術の間、待合室で待つことになっていましたので、その時のお茶菓子として〇〇という焼き菓子のセットを買って持っていきました。
長い手術になるようでしたので、美味しいお菓子を出して、皆に一息ついてもらうつもりでした。
手術が始まってしばらく経った頃を見計らって、お茶を入れました。
赤い箱を開けて、お皿にお菓子を盛った時、思わず『あっ!』と心の中で叫んでしまいました。
お皿には、白と黒で包装されたお菓子が並んでいたのです。
白と黒・・・、こんな時に縁起でもない!
箱詰めされている時には、まったく気が付きませんでした。
赤い箱に詰められたモノトーンの白と黒は、とても粋に見えていましたから・・・。
結局、黒い包装のものは取り除き、白いものだけをお皿に乗せて出しました。
おかげさまで、兄の手術は無事に終わり順調に回復しています。
けれど、この出来事から、ぜひお願いしたいと思うことがあります。
御社のお菓子は、贈答に使われることが多いです。
「お礼」や「お祝い」、あるいは「お見舞い」に使われることもあるでしょう。
赤に金をあしらった外箱も含めてのデザインであるとは思いますが、中身を取りだした時に白と黒が並ぶのはいかがなものでしょうか?
少なくとも、喜びの席には似つかわしくないと思うのです。
デザインの変更についてご一考いただければと、願っています。
*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜
お客様相談室は、社長に直結しています。
この手紙を見られた当時の社長は、即決でデザイン変更を担当部署に伝えました。
“美味しいお菓子は、人の喜びを2倍にし、悲しみを半減させる”
それをモットーにしていましたから、自社製品が不吉な連想をさせることなど、考えも及ばないことだったのでしょう。
この手紙は、読む人の心を揺り動かすものでした。
色に罪はありません。
どの色も美しく、使い方によって、それぞれ人の心に響くものがあります。
結局、色にどのような意味づけをするかは、その人次第なんですよね。
私たちの日々の暮らしの中でも、”そんなつもりではなかった”と思うような出来事があります。
思いもよらなかった受けとめ方をされたり、してしまったり。
そんな時は『ああ、そういう考え方もあるのか。』と気付き、素直にその考え方をとらえて、誠実に対応していくことが大切なんでしょうね。
華やかなイベントの多いこの季節に、ふっと思い出した、赤・白・黒の三色が織りなしたお話でした。
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この記事を書いたカウンセラー

About Author

1957年生まれのシニア世代。 自身の豊富な人生経験を生かした、自分らしく生きていくためのサポートが好評を得る。 得意ジャンルは、対人関係・自己啓発・恋愛。 “何かを始めるのに遅すぎることはない”の言葉通り、いくつになっても新しい人生を切り開いていけることを、身をもって実践している。