たったひとつのアイスクリームが教えてくれたこと

みなさま、こんにちは
岡田郁美(おかだいくみ)です。
私は、カウンセラーであり、看護師でもあります。
まだカウンセラーになっておらず、病棟勤務をしていた頃のお話です。
ある日、スタッフの一人が、ターミナル(末期がん)の患者さんが、
お食事を全然召し上がらないと、相談してくれました。
私は、NST委員(NSTとは栄養サポートチームのことです)でしたので、
このような相談を、たまに受けることがありました。
その患者さまは、嗜好食といって、栄養士が患者さまのところに聞き取りにいき、
患者さまの食べたいものを提供するという食事形態を、すでにとられていました。
それなのに、お食事を召し上がられないので、担当スタッフは困って相談してきたのです。
私たち人間にとって、食事はとても大切なものです。
そして、楽しみのひとつでもあります。
自分で、「これなら食べられそうかな!?」と選んだものでさえ、喉をとおらない。
運ばれてくる食事を前にして、顔を曇らせてしまわれます。
どんなにお辛かったでしょうか・・・
しんどさで、身体のやり場のなさを感じる日々。
毎日、根気よく介護を続けるご家族さま。
心が折れそうなことも、何度もあったと思います。
担当スタッフから相談され、その方の病室に伺い、
「何か食べたいものはありませんか?なんでもいいのでおっしゃってくださいね」
とお尋ねしました。
すると、「アイスクリームが食べたい」と、おっしゃられました。
栄養科に、アイスクリームを提供してもらうよう依頼しました。
そして、その日のおやつの時間に、その患者さまにバニラアイスが届きました。
その後すぐ、担当スタッフから、
患者さまがとても喜ばれ、「おいしい、おいしい」と言って、
アイスクリームをすべて召し上がられたと、報告がありました。
私も、とても嬉しくて、患者さまの病室に伺いました。
すると、笑顔で「おいしかったよ!ありがとう」とおっしゃってくださいました。
ご家族さまも、少しほっとしたような表情をされていました。
その時、「この笑顔のために、この仕事をしているのだ」と感じました。
もちろん、それは、患者さまに関わる人たち、すべての人が想っていることです。
その日、栄養士さんにお礼の電話をした時に、
栄養士さんが、その患者さまのために、
アイスクリームを買いに走ってくれたという話を聞き、心からそう感じました。
このアイスクリームの話は、ナースステーションでも話題になりました。
数日たったある日、
別のターミナルの患者さまが、お母さまが面会に来られている時に、
「シュークリームが食べたい」とおっしゃられたそうです。
その時の担当スタッフが、この件を思い出し、
患者さまに、
「シュークリームが食べたいのですね。提供してもらえるか確認します」
とお伝えしたところ、
面会に来られていたお母さまが、「私が買ってきます!」
とおっしゃられ、買いに行かれたそうです。
そして、その患者さまは、
お母さまが買ってこられたシュークリームを、おいしく召し上がられたそうです。
もちろん、それを買ってきたお母さまも、
とても嬉しそうだったことは言うまでもありません。
人はみな、大切な人の笑顔のために。
今、辛かったとしても、
せめて、ひと時の安らぎや、喜びを感じてもらうために。
その人の「ありがとう!」の一言が聞きたくて、毎日頑張っているのかもしれません。
その笑顔のために、
いろんな人たちが陰で支えてくれていることも、知ることができました。
ひとりでは、難しいことも、
みんなの協力があってこそ、できることが広がると感じました。
私たちカウンセラーは、
あなたが笑顔になるために、
あなたをサポートするひとりになれたら、とても嬉しいです。
また、
あなたが、誰かを笑顔にしたいと思った時に、
それをサポートできたら、とても嬉しいです。
そして、そんな経験をさせていただけることに、感謝しています。
ありがとうございます。
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