夢を叶えることの影響力

夏の前の、爽やかな風が吹き抜ける今の季節に、毎年必ず会うお友達がいます。
「Sさん」とさせていただきますね。
もう30年以上お付き合いのある人で、年齢は私の母と同じくらいです。
いつの間にか、私もその人と出会った頃の年になってしまいました。
昔々、私はフランス語を習っていたことがあります。
なんでフランス語を?と思いますよね。
それは、当時のパートナーが「僕たち、何か一緒に勉強できるものがあれば良いね。」と言って、フランス語の教室を探してきたからなんです。
私は“英語でさえまともにしゃべれないのに、とんでもない!”と思いましたが、「どうせ勉強するなら、全く知らないものを始めた方が良いじゃないか。」と説得されてしまいました。
まぁ、確かにそうですね。
何ごとも、やってみないことにはどうなるか分かりません。
しぶしぶ週に1回、教室に通うことになりました。
その教室は、先生が個人で場所を借りてやっているので、実にこじんまりしていました。
5~6人で初級コースが始まったのですが、私のパートナーは仕事が忙しく(口実だったかも?)毎週は来れなくて、「君が習ったことを教えてくれたら良いんだよ。」などと言いながら、半年も経つと教室には行かなくなってしまいました。
皆さん、それぞれに事情があったとは思いますが、結局最終的に残ったのは私を含めて2~3人になりました。
そうなると2時間の授業の後、あまりの出来の悪さに打ちひしがれて帰る道で、「良かったら、お茶でも飲んで一息つきませんか?」なんて誘い合うようになりました。
そんな仲間だったSさんは、ご主人が定年退職をされた記念旅行で念願のパリに行かれたそうです。
あちこち動き回る慌ただしい旅行ではなくて、パリだけに10日間ほど滞在して日常に触れているうちに、是非ともフランス語が話せるようになりたいと思われたそうです。
とても優雅な雰囲気の方ですが、実は20年ほどお姑さんの介護に明け暮れ、ようやく去年見送られて、「これからは自分のやりたいことをやる。」と決めたと言われていました。
しばらくすると、そのSさんがフランス語の勉強をするために、40日間の夏期留学をすることにした、という話を聞きました。
「思い切って申し込んでみたの。長年の夢だったのよ。主人も息子も嫁も後押ししてくれたわ!」
本当にすごいと思いました。
家族には理解してもらっていたけれど、親戚や知人の中には批判的な人もたくさんいたようです。
「ご主人の働いたお金で、よくそんなことが出来るわねぇ。」
「そんな良いトシをして、一人で行って何かあったらどうするの。」
さまざまな意見があったようですが、私には目を輝かせて言ってくださいました。
「私はね、誰に何と言われても良いの。先送りにしたら、もっとトシをとってしまうわ。行くなら今だと決めたのよ。」
私がSさんのこの話に拍手喝采し、応援したことは言うまでもありません。
“なんて素晴らしんだろう!”“いくつであっても、やろうと思えばなんだって出来るんだ!”
Sさんは私のビジョンになりました。
その後、私はパートナーとのことで大きな挫折をしました。
でも、ドン底から立ち直るキッカケになったのは、このSさんを思いだしたからでした。
『この暗いトンネルから抜け出した時には、今まで自分に出来るとは思っていなかったことにチャレンジしてみよう。』
Sさんがやれたことなら、私にも出来るかもしれない。
出来るか出来ないかは、やってみない限りわからない。
そして計画したのが、【ヨーロッパ3か月間一人旅】
フランス語はちっとも上達しなかったけど、実際に使ってみる機会だって今までなかったのです。
今度はSさんが私を応援してくれる立場になり、いろいろアドバイスも貰いました。
おかげさまでかなりの珍道中でしたが、私はこの旅を経験することが出来、そのことは自分にとって大きな自信になりました。
自分が何とかなると思えば、本当に何とかなるもんなんだなぁ。
「夢を描きましょう、叶えてみましょう。」とは、よく言われる言葉です。
確かにそれは素晴らしいのですが、さらに素晴らしいのは、夢を描いて達成することで周りに与える影響力だと思うのです。
私はSさんが描いた夢を叶えたのを見て、“自分にも出来るかもしれない。”と思いました。
この人に出会うことがなければ、【ヨーロッパ3か月間一人旅】は企画することすら思いつかなかったことでしょう。
今年もSさんにお会いしてきました。
世代の違う人の話を、長年友人として聞く機会が持てたことに感謝の気持ちを伝えたら、「あら、私の方こそ若い友達がいるのが、ずっと自慢なのよ。」と言われました。
どんなことでも人は影響し合って生きています。
それならば自分の夢を語り、叶えていくことは周りの人にも、希望や勇気を与えることになるに違いない。
私は、そう信じています。
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この記事を書いたカウンセラー

About Author

1957年生まれのシニア世代。 自身の豊富な人生経験を生かした、自分らしく生きていくためのサポートが好評を得る。 得意ジャンルは、対人関係・自己啓発・恋愛。 “何かを始めるのに遅すぎることはない”の言葉通り、いくつになっても新しい人生を切り開いていけることを、身をもって実践している。