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2010年11月30日

苦くて幸せな記憶。

■12月。街がクリスマスイルミネーションで彩られるこの季節になると、僕にとっていつも思い出すことがあるんです。


今から12年前・・・。

とある駅近く。カフェの一角。そこにはただ一点を見つめて呆然とする僕がいました。

耳元で流れるラウンジと呼ばれる音楽。

その当時の彼女が好きだったひどくお洒落な音楽を聴きながら、ただ目の前を流れる街を眺めている僕。

街はクリスマスムード一色。楽しそうな恋人たちが溢れる街の片隅で、僕は言葉に出来ない空しさを感じていたんです。

その当時の僕はまだ学生で、ただ毎日を快楽的に過ごしては、後ろから襲ってくる漠然とした空しさから逃げ延びる毎日。彼女と呼べる人はいたけれど・・・でもそれは昨日までの話。

「サヨナラ。」

その言葉にただ呆然とするだけでした。

その言葉の意味は徐々に痛みとなって効きはじめ。いつの間にかどこか自分の未来までも蝕み、これからどう生きていこうか?という壮大な学生の苦悩を刺激したものです。

その時見上げた透明な夜空は、とても冷たく見えたことを今でもよく覚えています。

■そして、今から3年前・・・。

とある駅近く。カフェの一角。ただ一点を見つめてまどろむ僕。耳元で流れるのはクラブジャズ。

この10年でどこか変わってしまった街並みを眺めながら、手元のコーヒーカップを引き寄せてみる。


・・・それまでの僕は何故か遠距離恋愛ばかりしていました。そして何度もダメになる恋愛を目の前にして、訳のわからない不安に襲われ、いつしか自信を失っていたんですね。

自分なりに頑張ってるつもり。けど上手く行かないことの連続でどうしたらいいか、途方にくれていたんです。

女性には優しく!だから、とことん彼女に優しくしたこともありました。

男は強さだ!だから、目いっぱい背伸びをしていたこともありましたっけ。

でも、上手く行かない・・・。

今となってはその理由が分かるけれど、かつての僕はそんな経験をするたびに自信を失っていきました。

励ましてくれる友人の声も、僕には届かず。いつも一人で悩んでは、忘れるための努力だけは惜しまぬ毎日。そんなにカッコいいもんじゃありません。ただ痛くて辛くて必死だっただけなんです。

だからもう遠距離恋愛はコリゴリ。そう誓ったはずなのに、それでもまた同じことを続ける自分がいて、ホント「懲りないヤツ」と自分自身思っていましたっけ。


しかし、今回ばかりは違ったんですよね。

その彼女とは遠距離恋愛でしたが何故か長く続いた。それはいろんな人の応援があったということも大きいけれど、何よりの違いは・・・2人が同じ距離だけ詰めていたこと。

「またダメになるかも・・・」

そんな心の声が聞こえても、2人が諦めずに会おうとしていたこと。不安よりも信頼が大きくなった、そんな感覚がずっとあったんですよね。

■カフェの中から雑踏の中に彼女を見つけ、目で追う僕。

10年前の自分には想像できなかった未来。あの時の僕に今を見せたとしたらどんな顔をするだろうか?

そんな独りよがりな空想を抱きながら、コーヒーを少し口にしてみる。熱ちっ・。軽く火傷する。

大きく息をついてみる。微妙にムセる・・・。

ん~。とにかく落ち着かない・・・。

いつも通り、待ち合わせの場所に来る彼女。

「待った?」彼女の決まり台詞。

「いや、待ってないよ。」僕の決まり台詞。

そんな予定調和から、他愛もない雑談が始まり・・・一気にコーヒーを飲み干す僕。

いつもと違う僕に気付いているのか?それとも分からないのか?平然とアールグレイを飲む彼女。

・・・ぐっと拳を握り締め、緊張で空気が読めなくなった僕は、いきなりこう切り出します。


「ねぇ・・・そろそろ、一緒に住まない?」


不器用極まりない僕の言葉に、彼女は驚いた顔一つ見せず

「いいよ」

笑顔でこう答えてくれました。

■12月になるといつも思い出すこと。

それはとても苦い記憶と同じ場所にある、とても不器用で幸せな記憶。

その数ヵ月後、僕たちは夫婦になるんです。

そして今、僕の横ですやすやと寝息を立てている妻。

彼女があの時、どんな想いで僕の言葉を聞いていたのか?は分からないけれど。

僕が今、見上げる透明な夜空は、とても温かく見えるのでした。

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投稿者 cseditor : 2010年11月30日 00:00

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